sins.2 【嫉妬】の大罪―Invidia sins―『Leviathan』
少しずつボルテージ上げてきます。
応援よろしくお願いします。
向こうは、こちらの時間を稼ぐと言っていた。
となれば、アダムが先程展開したあの魔法陣が何かしらその時間稼ぎと関係しているのだろう。それは、容易に想像がついた。
そして、魔法陣からはまだ何も現れない。
恐らく時間がかかる“何か”なのだろうが、まだ現れないのならこちらにも考えがある。
それが、『時間稼ぎの時間稼ぎ』だ。
さらにはそれと同時に、“もう一つの”時間稼ぎも思いついた。
俺はさっき、こっちへ呼びたい奴に通信魔法で連絡をしてみた。
すると、その相手―――二人から、白夜を始めとしてこの対双神戦にまだ参戦していなかった魔王軍メンバーがこちらへと急いで向かっているという事を聞いた。
俺は彼女たちにはこちらへ来るように伝えた後、続けて白夜へと連絡を取る。
「―――という事で、お前たちは奴らに気づかれないようにルインたちと合流してくれ」
『―――助けに向かわなくて大丈夫なんですか?』
「―――ああ。こっちに考えがある。だから今は俺の指示通りに動いてくれ」
『―――了解です』
そこで俺と白夜の通信は切れる。
続けて俺はそのままルインへと通信をかける。
ルインは現在、俺たちと一緒に転移されて昏睡していた仲間たちの治療をしている最中だ。徐々に皆が目を覚ましていると言うが、まだ全員では無さそうだからな。
「―――ルイン、聞こえるか?」
『―――あ、主様っ! はい、大丈夫です! 聞こえます!』
「―――良かった。そっちの様子はどんな感じだ?」
『―――こっちはもうほとんど皆さん回復されました。指示があればすぐにでも動けますが』
「―――了解。ありがとな、ルイン」
『いえ! それが私にできる事ですので!』
「―――それで、今からそっちに白夜たちが勢揃いで来るだろうから、そこで全員で待機しておいてくれ」
『全員で……? と、とにかく了解です!』
「ごめんな、ルイン。一旦通信を切るぞ―――また何かあったら連絡をくれ」
『―――分かりました! それではまた後で!』
と、ルインとの通信も急ぎ終了させる。
何故なら、ルシファルナとミカエラがイヴによって押され気味だったからだ。
『オラオラオラッ! どうしたッ! その程度かよォッ!!』
「クッ……! 手数が明らかに足りない……っ!」
「ですね……! あの人は何をやっているんでしょうか……!」
既に二人には作戦を伝えてある。
だから、今ルシファルナは“あの人”と言ったのだが。
恐らく距離的にはそろそろ着く頃だろう。
―――彼女たちが。
「二人ともっ! まずは第一段階だ! 備えてくれ!」
「「……! 了解!」」
俺の指示を受けてルシファルナとミカエラは、自身の瞳に魔力を宿していく。
そして俺は、それを確認したあとにとあるスキルを発動した。
『第一段階だァ……? ―――おいアダム。まだそいつの“召喚”は間に合わないのか?』
『ええ。強力な者を生み出すにはそれなりの時間を有するのです。本来はこの世界に居ない者を構築しているのですから』
二人は何かを話していたが、俺はそんな事には構わずスキルを発動する。
(さあ、行くぞ―――ルシファー!)
『―――うん。行こうか、魔王ルミナス』
(お前の力、存分に使わせてもらうぞッ!!)
「スキル発動―――っ!」
『―――天照らす太陽も、闇夜を晴らす月光も、全ては我に支配される為に存在している』
「―――其は円環の理の内に。自然の摂理としてこの力は存在している」
『昼間を獣轟く闇夜の大地へと』
「闇夜を天照らす燐光の大地へと」
『「明暗分けるは我が力―――『明 宵 の 明 星』ッ!!!」』
詠唱によって、魔法は強化される。
それはスキルとて同じこと。
詠唱をする事で、スキルの効果や効力が大幅に上昇するのだ。
と言ってもこういうタイミングでしか詠唱なんてしないのだが。
『な……ッ! 前が見えねェッ!?』
直後、俺とルシファーの力によって周囲は一寸先も見えないほどの闇に包まれる。
狙い通りイヴたちの目くらましは一瞬でも出来たようだが、肝心の俺たちは目がくらむどころか、先程までと同じように行動できていた。
「“紫電一閃”ッ!!!」
「“心眼閃矢”ッ!!」
ミカエラとルシファルナはこの隙にイヴへと全力で攻撃を仕掛け始めた。
二人ともさっきの俺の合図で、自身の瞳にそれぞれ光の魔力を流している為、どれだけ周りが闇に包まれようと関係がないのだ。
しかしそれは向こうだって出来る話で。
『グゥッ……!!! なぜ、何故見えている……ッ!?』
『イヴ! 冷静に考えれば分かる話でしょうッ!? 瞳に魔力を宿すのです!』
『瞳に―――なるほどッ! そういう事かよォッ!!』
バカなイヴにそう指示を出したアダムのせいで、イヴにもこの状況が掴まれてしまったのだ。
『視界が戻ればこっちのモンだッ! ぶっ壊れろ雑魚共がァッ!!』
「させるかッ! “偽円環破壊槍”!!!」
『効くかゴミがァッ!! それは俺がポセイドンの野郎に教えた技の、しかも偽物じゃねぇかッ!』
そう言いながら、俺が咄嗟に放った槍は一瞬にして砕かれてしまう。
「やはり攻撃は効かないか……ッ! なら―――二人とも、次の段階に行くぞっ!」
「「了解!」」
俺が二人にそう呼びかけると、二人はイヴとの距離を離しつつ俺のへと向かってくる。
(行くぞルシファー!)
『ああ!』
「『明暗反転!!』」
俺とルシファーは同時に叫んだ。
刹那、周囲からは闇が晴れて光が灯り、一瞬にしてそれは広がっていった。
『な―――あァァァァっっ!!!』
何が起きたか。
さっきまでは前も見えないほどの闇に包まれていて、それを見えるようにするために光の魔力等で視界を明るくして対処していたが、それが一気に明るくなって光が視界に入り込んできたとなればどうだろうか。
先程とは打って変わって、痛いくらいの光が……だ。
結果は目が焼かれるような感覚になる―――だ。
だからイヴは、目を押さえて苦しがっているのだ。
「そろそろ畳み掛けましょう!」
「ええッ!」
『させるか……よォォッ!!!』
闇の魔力で視界を慣れさせておいたミカエラたちは、二人で頷くとイヴの方へと向かって飛び出していく。
だが、イヴも苦しみながらも攻撃を仕掛けてくる。
『“限界破壊衝撃波”ッ!!』
拳を地面に打ち付けて、その衝撃波による攻撃だ。
範囲攻撃―――これは全員守るのは厳しいだろう。
だがこの時、俺は背後から近づいてきていた二つの気配に気づいていたからこそ、ミカエラたちの方へと向かって飛び出していたのだ。
「―――頼むッ! 俺に攻撃を集中させてくれ!」
「なっ……! 魔王様、な、何をッ!!」
『ついにとち狂ったか魔王ッ!! いいぜェッ! お望み通り攻撃を集中させてやるよォッ!!!』
俺が煽るような言葉を吐いたせいで、イヴはその挑発に乗って攻撃を仕掛ける態勢に入ってしまった。
だが、イヴが攻撃を放つより早くにそれはやって来た。
「―――どうなっても知らんぞ魔王ッ! “攻撃集中”!!!」
そんな言葉が聞こえてきて、俺の体には紫色の光が宿る。
すると目の前まで迫ってきていたイヴの攻撃―――衝撃波はどういう訳か俺という一点に集中して向かってきたのだ。
(さあ、次はお前の番だ―――ミカエルッ!)
『任せてください!』
「『―――『絶対守護』ッ!!!』」
そんな衝撃波攻撃を、俺はミカエルの力で全て受け止める。
『絶対守護』の力によって、俺が受けるダメージは全て無効化され、まさに痛くも痒くもなかった。
そして、こうなるように仕向けてくれた、俺の呼んだ新たな援軍―――俺は振り返って、そいつらの名前を呼んだ。
「―――よお、レヴィアタン、レヴィーナ。遅かったじゃないか」
「はぁ? 無茶言わないでよ。これでもだいぶ早い方だと思うけど?」
「まったくもってその通りだ。これでもだいぶ加速していたのだぞ?」
「そうかよ。まあ何はともあれ、まずは来てくれてありがとう」
俺は二人にそうお礼を告げる。
すると、ちょうどそのタイミングでまたもや乱入者が現れたのだ。
「――――ちょっと待ちなさいっ!!」
「今度は誰だよ……! えっと……確かこの声は―――」
きっと天使組の誰かだろう。そこまでは予想できるが、誰なのかまでは声だけではよく分からん。
そう思っていると、その声の主はすぐに現れた。
「ほう、我が因縁たるお前がここに現れるとはな―――ラグエル」
「……私も同じ気持ちよ。だけど、そんな事言っている場合ではないでしょう? ―――レヴィアタン?」
そう。その天使とはラグエルの事だった。
『また援軍かよ……ッ! しかもまた天使と悪魔―――こりゃあ早めに潰さないとヤバいかもなァッ……!』
『その通りですよイヴ。早く魔王を無力化しなさい。でないと我々は“アレ”を使うことになってしまう』
『チッ……! わーってるよ!』
だがそんな乱入者が現れたところでイヴたち双神の攻撃は止まることなく。
『雑魚が何人群れようが所詮は雑魚だッ! いいからとっとと去ねやァッ!!』
「させないわッ! “妖魔矢雨”!」
『チッ……テメェも遠距離武器かよッ……!!』
しかしこちらへ迫るイヴを牽制したのはレヴィーナだった。
レヴィーナは既に『妖神化』を果たしており、臨戦態勢になっていた。
「さあ魔王。とっとと始めましょう?」
「ああ。我らのリーダーはもうお前の中にいるのだろう? ―――まあアイツはリーダーじゃないが」
「あ、ああ。でも、始めるって……お前たち、まさか―――」
それって、二人も俺の中に。
そういう事なのだろうか。
「覚悟は出来てるわ」
「我もだ。元よりそのつもりでここまで来た訳だしな」
「二人とも……いいのか?」
俺は不安になって二人に確認するように聞くが、二人はむしろ笑ってこう答えたのだ。
「―――最初っからそういう話じゃなかったの? 私たちの力を全部集めるって豪語してたじゃない」
「らしいな。なら遠慮なく我らの力を使うがいいさ」
「私たちは、貴方がこの戦いに勝てることを願っているわ」
「ああ。戦いが終わったら、またゆっくりと女でも紹介してくれるか?」
「お前たち……」
『我らの願い、魔王ルミナスに託そう―――頑張って、戦い抜いて』
そう言い残すと。
二人は光の粒子となって俺の中へと消えていくのだった。
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最弱姫プの方も久々に今日は更新しますので、そちらも良かったらぜひ!




