希絶の天使は未来を臨む
ぴえん
「ルシファルナ、ミカエラ―――行くぞッ!」
「はいっ!」「ええっ!」
俺の合図で、三人は同時に飛び出す。
ルシファルナの手には“合神器伝承弓”が、ミカエラの手には光の魔力で生み出した剣がそれぞれ構えられていた。
『だから何度も言っているだろうッ!? いくら雑魚が群がろうと俺らには敵わないんだとなァッ!!』
「それはどうかしらねッ!!」
イヴが拳を突き出すと、それを同じく拳で受け流していくミカエラ。そう、ミカエラはイヴと格闘勝負で互角に渡り合っていたのだ。
『クッ……こんな天使風情に俺の攻撃が見切られるとは……ッ!』
「こっちだって伊達に神様に鍛えられた訳じゃないんだからね……ッ!!」
『フンッ! インドラの奴も馬鹿なことしやがる。だが―――これならどうだッ!! “破壊拳”ッ!』
「―――ッ!!! きゃああああああっ!!!」
しかし、流石にイヴの方がタイマンでは上だったようで。
一瞬で加速したイヴが、ミカエラの腹に魔力を込めた拳を打ち込み吹き飛ばしたのだ。
俺はすぐにミカエラのもとへ駆け寄ると、スキル『幻影天魔』を使ってミカエラを治療する。
「大丈夫かミカエラっ!」
「え、ええ……何とかね」
辛そうな表情で笑ってそう言うミカエラ。
俺はそんな彼女を見て、スキルの力を更に高めて治療を加速させる。
『ハンッ! どれだけ強くても、俺の前ではいづれも雑魚と化すんだッ! 残念だがお前らじゃ勝ち目なんて無いなッ! フハハハハハハハ!!』
『良かった。これでもし貴方が負けるような事があれば“あの力”を貴方が消える前に使わなければならない所でしたよ』
『煩え。あの力なんて使わなくても勝てるだろうが。早いうちから全員潰しておけば、仮に援軍が来たとしても問題はねェだろ?』
『なら、口ではなく手を動かしてください? ほら―――“逆鱗滝風”!』
会話の最中に、アダムは部下に司令を出すかのような手の動きで風魔法を放った。
すると滝のような威力・火力の風が、双神へ迫っていた一本の矢を撃ち落としたのだ。
『あぁ……? 何だこれ』
『ほら。あそこの彼ですよ』
そう言うアダムの指の先に居たのは。
「クッ……まさか気づかれるとは……っ!」
『あぁ。あの雑魚の事か―――分かった。殺す』
刹那、イヴは視界から消えた。
嫌な予感がした俺はミカエラの治療をやめて飛び出し、ルシファルナのもとへと向かう。
「ルシファルナッ! 一度後退を―――」
『遅ェッ!! “悪即壊”ッ!』
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
がしかし、俺が辿り着くよりも早くイヴはルシファルナを攻撃し、先程のミカエラと同様にかなり後方へと吹き飛ばされていた。
「くそ……ルシファルナッ!」
「だ……大丈夫です……っ! それよりも前をッ!」
「前―――って、“螺旋”ッ!!!」
俺は目線をルシファルナの方から振り返ってみると、イヴはすぐそこまで迫ってきていた。
だから俺は咄嗟に剣を振るいながら回転して、イヴからの攻撃を防ごうとしたのだが。
『そんなんじゃ俺の攻撃は防げねェよォッ!!! “破壊逆鱗渦”ッ!!』
「な……ッ!! 嘘だろ―――うああああっ!!!」
それを見切っていたかのように、イヴは俺の回転とは逆方向に回転しながら殴りかかってきたのだ。
イヴの拳は俺の刃の渦を超えて俺の身体へと直撃した。
「魔王ルミナス! こっちはもう準備できたよッ!」
「私も行けます!」
俺が後方へ吹き飛ばされる中、アダムの隙を見て俺へと力を譲渡していたルシファーとミカエルがそう告げてきた。
見ると、もう二人はほとんど肉体の原型が無く、残像みたいな感じになっていた。
「―――クッ……! た、頼む! いつでも来ていいぞッ!」
恐らくある程度の痛みを肉体は感じるはずだ。
《十二神将》たち神々とは違って罪や徳を冠しているのだからな。だから二人は待っててくれていたのだろうが。
『―――後は。後は君に任せたよ』
『別に死ぬ訳ではないですが、貴方に力を託す以上は我々が表立って戦うことは出来ません。なので、貴方には全てを託しますよ』
『うん。次に会えるときは、世界が平和になってて、そして―――』
『『皆が笑って手を取り合っている未来を、見せてください』』
『勝手なお願いだけど―――どうか、お願いします』
俺はそんな二人に指示を出すと、そう言い残してから一気にその残像を消してしまった。
消えたあとに残った光の粒子は、全て勢いよく俺のもとへと入り込んでくる。
「うっ……ァァ……ああああ……」
苦しい。
喉が、焼けるように熱い。
これは、今までとは比にならないくらいの苦しさだ。
何だこれは。
「ヴッ……グ……アアアアアアアア……」
『……イヴ。早急に魔王を無力化しなさい。決して殺さないように』
『―――命令されなくてもしてやるよッ!』
イヴはアダムからの命令を受けて―――いや、自発的に飛び出した。狙いは言葉通り俺だ。
だがそんな俺は、依然として痛みが引かない。
『砕けろッ!!』
「させません! “矢弾”!!!」
『んな……ッ!! クソッ! 邪魔しやがって―――』
そこへ今度はルシファルナが矢の弾丸をイヴに浴びせて足止めを試みてくれた。
その足止めは奇跡的にも成功し、イヴは一度後退する。
「ぅ……あああ……はぁ……はぁっ……!」
そして奇跡はさらに重なり、俺を襲っていた痛みは偶然にもタイミングよく引いていったのだ。
これは……成功したのか……。
▶スキル―――『明 宵 の 明 星』
▶スキル―――『絶対守護』
▶二つのスキルを獲得したみたいだぞ。これをうまく使いこなせるかどうかはお前次第だ―――魔王!
(―――明暗操作と、絶対防御の力か……分かった)
俺は二人の力の譲渡が完了したことを、ハヌマーンからのスキル獲得報告にて理解する。
『チッ……成功しちまったのかよ』
『……どうやらそのようですが、まだ脅威とは程遠いですから。今の内に摘み取っておきましょう―――“幻想創造”』
俺が力を完全に受け継いだのを見ると、アダムは何か魔法陣を展開していた。
『―――時間を稼げばいいんだな?』
『流石ですね。ええ、その通りですよ』
(時間稼ぎだと―――?)
二人のそんな会話が聞こえてきた俺は、ルシファルナとミカエルを近くへ来るように指示を出した。
「はい。なんですか……?」
「どうかしたの?」
「二人にお願いしたい作戦がある」
「「作戦……?」」
向こうが時間を稼ぐなら、こちらにも考えがある。―――時間稼ぎの、時間稼ぎをしてやろうじゃないか。
「二人とも。暗いところは平気か?」
「ええ、天使だから目に光の魔力を宿せば全然見えるわよ?」
「私も、悪魔ですから。夜でもハッキリと見えますよ」
「良かった。なら、これから伝える作戦は―――」
俺は二人のその返事を聞いて、すぐに考えついた作戦を話した。
「……上手く行くかしら」
「さあな。でも、やってみる価値はある―――だろ?」
「ですね。行動しないよりはマシでしょう」
「そういう事だ。後は二人のタイミングに任せる。―――奴らの時間を稼いで、こちらの作戦の時間稼ぎも同時に頼むぞ」
「「了解……!」」
俺がそう指示を出すと、二人は不敵に笑いながら頷いた。
さあ、ここから勝負は始まるんだ。
(やろうぜ―――双神様よッ!!!)
◆
「―――りょーかい。二人で行けばいいのね?」
「フム。こちらにも連絡が来たぞ」
「なら。行きましょうか」
「だな、我が美しき子孫よ」
「……ですね。私たちが必要とされているなら―――」
「早く、行かねばな」
『我ら“嫉妬”の名を冠する者が、救世主となろう―――』
「フッ、分かってるじゃないか我が美しき子孫よ」
「当然です。さ、行きましょうか―――」
直後、二人の悪魔はこの軍勢を引き連れている勇者にお願いして、自分たちだけ先に向かうように指示があったことを伝えた後、このパーティを離脱して彼の地へと向かって加速を始めたのだった。
嫉妬の力を有する、悪魔と妖精が。
ブックマーク、高評価ぜひお願いします。
最弱姫プは一応月曜日に更新予定。
こちらの方は、来週の土曜日の更新はお休み予定。
ストックが尽きかけてきて、更新ペースが崩れてますが、何とか頑張りたいと思ってます。応援、よろしくお願いいたします。




