case.23 序章『絶望』
先に告知です。
諸々の事情が重なって、今週の土日の更新は全作品ストップしたいと思います。
ゆっくり休んだ後、月曜日からまた更新再開です。
『魔王。―――魔王ルミナス。貴方とは話したい事が沢山あります』
「ああ。それは俺も同じだ。お前とは……お前たちとは話したい事が山ほどあるんだよッ!」
まだ姿は見えないその神に、俺は怒った声をぶつける。
積もり積もった、心にある怒りを。
『お互い様、という訳ですか。まあ、理解は出来ます』
「こっちはずっと理解できなかったんだよ……ッ!」
『……話は、戦いの中でおいおいとしましょう。それよりも今は―――今は、この戦いを終わらせるべきでしょう。それが、お互い良いはずです』
「何、勝手なこと言ってるんだよ。ふざけた事を言うのももういい加減にしろよッ!」
「主様……」
諸悪の根源を目の前にした俺は、とにかく収まることの知らない怒りをただただぶつける事しか出来なかった。
それに、この神の生意気な態度。ふざけているにも程があるだろう。何がこの戦いを終わらせるだ。何が戦いの中で話そうだ。
何故、この神は自分主導で話を進めようとしているんだ。
『あーごちゃごちゃと煩え魔王だなァッ! いいからとっとと戦えばいいだろうがッ!』
『イヴ。彼の考えも最もなのです。理不尽極まりない環境を、彼はここまで乗り越えてきたのですから』
「……ッ」
お前らが、全部悪いんだろうが。
神とか……ほざいてろよ。ふざけやがって。
恐らくアダムの言ったと思われる言葉に、俺はさらなる怒りを感じていた。
『チッ。まあ、仕方ねぇか』
『はい。―――ですが、今は。今は勝負を……決着をつける方が先ではないですか? 我々はもとより、貴方と決着をつけるためにこうして強制転移をしたのですから』
「やっぱりお前らが俺たちを……」
だが、この神の言う事は最もだ。
俺も、ずっとコイツらと戦う為に今まで頑張ってきていたんだから。それに、コイツらに勝つことが出来れば聞きたいことなんていくらでも聞くことができるだろう。
それなら。
(冷静になれ、俺。ようやく、ようやくここまで来たんだから……!)
「主様」
その時。ピトッ……と俺の手に彼女の手が重なった。
「ルイン……」
「大丈夫です。主様は、一人じゃありませんから」
「……ああ。そうだな。―――ありがとう、ルイン」
「いいえ。私は常に、主様の幸せだけを願っていますから。だから、今はやりたい事をなさってください」
何処か、俺のことを遠く見つめるような視線。
ルインは、何だか儚げな顔をしていた。
まるで、何か俺じゃないモノを見ているかのような、そんな気がした。
『話は、纏まりましたか?』
「ああ。納得なんて一生出来る訳ないが。今はお前たちとの決着をつける事が優先、って言うのは同意だ」
『では。始めましょうか』
『ようやくか。ようやく、この穢れた世界をまたブッ壊せるんだなッ!』
(また……?)
イヴの言葉に首を傾げていると、目の前がまばゆく光り始めた。
「あ、主様……!」
「だ、大丈夫だ……! 俺が守るからな……ルインッ!」
俺は咄嗟にルインを庇うような態勢になって、それと同時に武器を構えた。
“神剣・神滅”。神と戦った時は毎回使ってきた、相棒のような剣だ。
『我々の存在がこの世界に定着するまで、近場で手に入れた新たなる下僕と戦って頂きましょうか』
光が少しずつ収まっていくと、アダムはそう言って俺たちの目の前に一人の男を呼び出していた。
「は……? お前、は―――」
それは、ずっと居なくなっていたあの男。
行動の全てが、初めて出会った時から意味不明な、あの転生者だった。
『さあ、まずは小手調べといきましょうか。―――やりなさい。“フェイク・ゼウス”!』
「了解。スキル、発動―――」
―――レオン。
奴は、俺たちの目の前に立ちはだかり。そして、いつぞやの神の姿にその身を変貌させると。
「ク……フハハ! さあ、始めようか。神々に抗う愚かなる反逆者共よッ!」
そう、目に見えるくらいの殺意を俺たちにぶつけて来たのだった。
◆
「―――なあ、お前たち魔王軍には他に仲間は居ないのか?」
突然、ゼウスはそんな事を聞いてきた。
その問いに、俺は思いつく限りのこの場に居ない仲間の名前を上げることにした。
「ああ、結構いるぞ?」
「……例えば?」
「海王ムルさんとか、《森ノ大国》の“五老”の人たちとか。あとは―――」
サタールさんやベルゼリオさんと言った、今現在この飛空艇に居ないメンツを次々と挙げていく俺。
こうして挙げてみると、結構居るもんだな。
「あ、あと魔王城の地下牢にあの人たちも居ますよね。―――父さんとか」
「あ、ですね」
隣で話を聞いていたリガーテさんの言葉に頷く俺。
そう言えばアイツらも一応生きてはいるのか。と言っても、ほとんど生き残りなんて居ないはずだけど。
「なるほど……。奴らが降りた地に魔王が居ることは確定と仮定した場合、それ以外の場所に居る仲間は今の内に集めておきたいところだな」
「となると……ムルさんと五老の人たちとかか。あとは多分、予想でしかないけどアニキの所にいると思うからさ」
確証なんてないけど、そんな気がしていた。
俺たちがこうして集まれんだ。それなら今ここにいないメンツは皆集まっているんじゃないだろうか。
「それなら行こうではないか。近いのはどこだ? 妖精族の女よ」
「はぁ!? ―――森ノ大国だけど」
「ならそこへ行け。急がないと大変な事になるかもしれないぞ?」
「うっさいわね! 勝手に仕切ってんじゃないわよ!! 行くけど!!」
だいぶ空中まで来たところで、レヴィーナさんはゼウスにキレながらも飛空艇の方向転換をしていた。
少し進めば眼下には森が広がっているはずだ。
ただ、行ったところであの人たちが協力してくれるかどうかは怪しいところだけど。
「勇者よ。お前が一人で話に行ってこい。なるべく、この船の防衛は多いほうがいいからな」
「俺が一人で? ま、別にいいけど……」
「それと、話はなるべく早く終わらせて来ることだ。大切な人を失いたくなければな」
「……分かってるさ」
ゼウスの言葉には、とてつもないプレッシャーが感じられた。
多分、本当に時間が無いからなのだろう。それだけ、俺たちの最後の敵は強大な存在だという事が分かる。
俺は、自然と拳を固く握っていた。
「もうすぐで真上に来るわ! 早く行くってんなら行ってきなさい、白夜!」
「了解です……っ!」
船から見下ろすと、眼下にはあっという間に森が広がっていた。流石飛空艇、もう着いたのか。
俺はレヴィーナさんの言葉に頷くと、スキル『飛翔』を使いながら森の中へと突っ込んでいった。
「気分はまるでジェットコースターだな……っ!」
ギュン!!という効果音がつくくらいのスピードで急降下していく俺は、木々の中で一際目立つ大木のところへ向かっていく。
するとそこには、5人の老人がこちらを見ながら立っていたのだ。
「っと……!」
俺は彼らの前にゆっくりと着陸すると、俺が話しかけるよりも早く彼らは俺に言ってきた。
「お待ちしておりました」
「皆さん、何でここに……?」
「―――実はいつ来られてもいいように、ずっと待機していたのですよ」
「ずっと!? ってことはだいぶ待ったんじゃないですか?!」
「いえいえ。待つのは我々の得意分野ですから」
「そうじゃそうじゃ」と頷く5人の老人男性。
彼ら―――五老の方々は、俺が来るまでずっとこうして待っていたのだと言う。続けて彼らは俺に言ってきた。
「それで、とりあえず要件を伺っても?」
「あ、ああ! それなら―――」
聞かれた質問に俺は急いで答える。
するとその答えを聞いた五老の方々は、
「ええ。もちろんですとも」
「本当ですか!?」
「……ですが、我々はもうばりばり戦闘をするぞ! と言った身体ではありません。ですから、決戦の地に強固な結界を張ることで様々な面からサポート致しましょう」
「結界、ですか……?」
「神々が相手だと、我らの結界など紙ペラ同然でしょうが、それでも無いよりはマシなはずです。どうか、そんな形でよろしくお願い致します」
「分かりました。それでは皆さんをその場所まで案内する為に、あの飛空艇に乗り込んでもらいます!」
俺は、上空から降りてきていた飛空艇を指差して言った。
ちょうどいいタイミングだ。
「……すごい乗り物ですねぇ」
「儂ら、あれに乗るのか」
「おしっこ飛び出そうじゃな」
「汚えぞジジイ!」
「……ホントにお前らは」
飛空艇を見るやいなや子供のような―――いや、なんとも言えない反応を見せる五老の方々。
「話は纏まったのか?」
「はい。一応は」
「それは僥倖。では次の地に向かうとしようではないか」
「了解。さ、皆さん。早く乗り込んでください!」
急かすようで申し訳無いが、俺は五老の方々を引っ張るように飛空艇に乗り込ませた。
そして、全員が乗り込んだところでレヴィーナさんにグーサインを出す。
「それじゃあまた飛ばすわよ! 次は魔王国近海を目指すからね!!」
「了解です!!」
次なる目的地は海王ムルさんのところだ。
無事に、会えるといいのだが……全ては行ってみないと分からない。
それに、魔王国の近くまで行くのだから、アニキたちと合流できるかもしれないんだ。
飛空艇の速さなら、きっとすぐに着くことだろう。
「頼む……間に合ってくれ―――!」
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