case.22 幼児退行
死んだと思ったか?残念、うそでしたーべろべろべー!!ばーかばーか!!
「死んだと思ったか?」
「……」
そこに居たのは、紛れもなくゼウスだった。そう、さっきまで白夜たちと戦っていた、あのゼウスだ。
ただ、その容姿が明らかに変化していた。
「お前、その姿はちょっと……」
「これは……うん……」
「アンタ、それはヤバイわよ?」
白夜も、ルヴェルフェも、同僚の神であるレヴィーナでさえゼウスの身体に訪れていた変化に目を点にしていた。
それくらい、おかしかったのだ。
「フハハハ! 我が必要なのであろう!? ならば感謝するがよい! こうして我は生きていた訳だからな!」
「いやでも。だからってその姿なのは無理があるだろ」
「うん。僕も同意だね」
ゼウスは自慢げにそう言ってみせるも、白夜たちはやはり困惑する事しかできなかった。
何が起きたか―――それは。
―――ゼウスの身体は、まるで推定5、6歳といったレベルのモノにまで退化していたのだ。
「ううむ。まあ、我もまさかここまで退化するとは思わなんだ」
「? アンタまさかスキルの力でその姿に?」
「ああ。我が力、『天命』の能力でな。フハハ! やはりこの力は便利すぎて困ってしまうな!」
「……自分が望む未来を選べる能力、だったかしらね。確かにその力は強いけれど、でも別にそんな姿にならなくて良かったんじゃないの?」
「いや、だから別に我もここまで退化するとは思わなかったんだ」
幼い姿で渋い口調のゼウスに、一同はやはり失笑してしまい。
だが、ガネーシャはすぐに「どういう事?」と聞き返していた。
「あの時、実は本当にやばくてな」
あの時、と言うのは多分ゼウスを追い詰めた時だろう。
ゼウスは続ける。
「この我の力が使えるのは一日に一回だけだ。強過ぎるが故な。―――だから、この力を使うかどうか……ギリギリまで悩んでいた。だが、我が生きながらえる為には使わざるを得ないと判断したのだ」
「だから使ったって訳ね? でも、その姿になった理由は説明できてないわよ?」
「……我は生きたかったのだ。だから、生きれる道を選んだ。そうしたら我の姿がこんなのになってしまっていたと言う訳だ。多分、我の神力や魔力は生きるためのソースとして使われてしまったのだろうな」
「望んでその姿になった訳じゃない、と……ふぅん?」
ガネーシャはゼウスの幼い身体を舐め回すように見るが、ゼウスは恥ずかしがったりはせずに、むしろ堂々としていた。
「まあ何はともあれ! 皆のもの、よろしく頼むぞ!」
「うーん。よろしく頼むぞって言われてもな」
「急には無理だよ。普通に脳がびっくりしちゃってるもん」
……まだ、白夜たちには状況が理解できていなかったようだ。
そんな様子を見たゼウスは、「致し方ない」とこう提案してきた。
「ならば、我を魔王の元へ連れて行ってはくれないか?」
「アニキの……?」
「うむ。そうすれば万事解決だ。我が、魔王の中に入れば良いのだからな!」
「……なるほど。確かにそれなら―――」
魔王ルミナスの中に入ってしまえば、もう逃げ道はなくなるし、抵抗のしようも無くなるはずだ。
ゼウスから出てきたその提案は、とても理にかなっている提案だった。
「じゃあ、ぼちぼち向かいますか……? アニキたちのとこに」
「そうね。もうそろそろ皆と合流した方がいいかもね」
白夜の発言に、レヴィーナは頷く。
すると他の皆も―――ゼウスに囚われていた人たちも今は解放されていて、白夜の提案に頷いていた。
「話が纏まるのが早いな」
「まあ、他にする事もないしな」
「確かに。それでは出立する前に一つだけ忠告しておいてやろう」
「忠告……?」
「ああ。恐らく、我の敗北をきっかけに双神は動き出したであろう。事実、世界の中央の辺りからとてつもない神力が感じ取れるからな」
そう言ってゼウスが見た方向を、白夜やヘル、ガネーシャといった神の力を持つ者たちが見てみる。
すると確かにゼウスの言う通り、そこには神々しいまでの光の柱が見えていたのだ。あれが多分、同じ力を持つ者にしか見えない不可視の力なのだろう。
「そして、双神の狙いは魔王と勇者と巫女以外の全ての殲滅、破壊だ」
「魔王と、勇者と、巫女以外の……?」
「うむ。その3人にはこの世界がこの世界である為に必要なピースだからな。だから、消すことが出来ないのだよ。そう、作られているから」
「……?」
「まあ、難しい話は多分あの魔王だけが聞いていればいい。だからお前はそこまで深く考えるな勇者よ」
そうゼウスに言われるが、白夜は何処か心の中で引っ掛かっていた。別に深い意味は無いのだろうが、今の言葉はかなり重要な気がして。
「だが、勇者よ。そしてそこに隠れている巫女よ。お前たちは双神と戦うのにとても重要な役割を担っている。その事だけは、くれぐれも忘れるなよ?」
「重要な、役割……」
「ですか……?」
気づけば、船の中に隠れていた月夜も外に出てきていた。
そして、白夜と同じくゼウスの言葉に首を傾げている。
「まあ全ては彼の地に行けば分かる話よ。さあ、早速出発しようではないか!」
「……ああ」
幼い姿で人差し指を空に向かって突き刺すゼウスは、何だか興奮してはしゃいでいる子供みたい―――というか事実そうだったが、そんなゼウスに先導されて白夜たちは、飛空艇へと乗り込んでいった。
「さあ、行くぞ。これより最終決戦の幕開けだ!」
何故か場を仕切り始めたゼウスを横目に、レヴィーナは『妖神化』を果たし飛空艇を動かし始めた。
目指すは神力の柱が立つ世界の中心部―――魔王が、海王ムルの協力のもと創り出した、最も新しき土地である。
◆
「―――こ……れは」
「―――主、様……?」
その頃。魔王ルミナスと、その従者ルインはとある場所で再会を果たしていた。他の仲間たちも一緒に。
「な。何でここにいきなり……?」
「強制転移、ですか」
「みたいだな」
しかしそれは、自分たちの意志とは全く違う物で。
ルインの言った通り、とある神によって一行は強制転移をさせられていたのだ。
「―――俺たちの国、だよな。ここ」
「……ですね」
そう。そこは、魔王国だったのだ。
目覚めているのはルミナスとルインの二人だけ。残りの仲間たちは皆何故か眠っている状態だった。
まるで、世界が変わってしまった直後の時のようだ。
「一体、何が起きて……」
ルミナスが、そこまで言いかけた時だった。
『ようこそいらっしゃいました―――』
何処からか、聞き覚えのある声が聞こえてきて。
声は続く。
『突然で申し訳無いですが……今からあなた方には、滅んで頂きます。世界の安寧の為、どうか死んで下さい』
その声は言った。
『死ね』と。
この状況に、この声。ここまでくれば、ルミナスにも敵が誰なのかはわかっていた。というより、明らか過ぎた。
「遂に……遂にお前のお出ましか―――双神ッ!」
『まずは力の証明として、我らが貴方を殺さない程度に甚振って上げましょう』
『俺たちの力……とくと味わいなァッ!』
絶望的な状況の中。
魔王ルミナスと従者ルインは、世界を創りし神々“双神”との戦闘を開始しようとしていた―――
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