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case.16 旅立ちと変化

少しずつ動き出す





「―――飛空艇、ですか」



 白夜はゲームでしか見たことのないそれが、自分の目の前にある事に驚きながらも何とか絞り出てきた言葉を漏らした。



「ええ。現状、陸からの大陸移動は不可能なはず。となれば、密かに開発を進めていたこの飛空艇が役に立つときなのではないかと」


「でも、どうしてこんな物を?」


「……元々はこの国の住民をそちらの国へ送る為に開発していたのですよ。だから開発自体はだいぶ前から始まっていましたし、完成させるのも容易かったという訳です」


「なるほど」



 白夜は、自身の疑問が解消された事でスッキリとした顔になる。が、それはすぐに険しい顔つきへと戻ってしまう。



「でも、それじゃあこの飛空艇があれば言われた通り大陸の移動が出来るわけですよね……? だったら今すぐにでもアニキ達と合流して―――」


「ちょっと待ってよ、にぃ」


「……月夜? どうかしたのか?」



 これまた真剣な表情で、白夜を静止させる月夜。

 他の皆は、その雰囲気から誰も口出し出来ずにいた。



「これは、私の直感でしかないんだけどね? 多分、お兄ちゃんたちと合流する必要はすぐには無いんじゃないかな……って思うんだよ」


「え……? な、なんでだよ」


「それよりも今は、私たちには私たちの役目があるんじゃないかな―――って、そう思う―――」




「―――ええ……全くもって、その通りよ……ッ!」




「だ、誰だっ!」



 月夜が途中まで言葉を言いかけた時、白夜たちのいる部屋には“聞き覚えのある声”がした。

 それが分からないアマクサたちは警戒態勢に入るのだが。


 その声の主は、すぐにその姿を見せた。



「……ごめん……な…………さい、ね? こんな、登場の仕方……」


「―――レヴィーナ!」



 しかし、その現れた女性―――それはレヴィーナだったのだが、彼女は体中に怪我をしていて、右腕もぶらんと脱力した感じで動かす様子が無かった。というより反対の手で腕を抑えている始末だ。

 そんな彼女の様子を見たアスモフィが、すぐに駆け寄って回復魔法をかけ始めた。



「レヴィーナ……様ですか」


「ならば心配は無用か。しかしそれよりも……一体どうしたのですか、その怪我は……」



 アマクサとイクサは、彼女がレヴィーナだとわかると警戒を解き、その異様な様子について問いかける。

 するとレヴィーナは、こう答えた。



「私を……いいえ。―――私たちを襲ったのは、神よ」


「神……?」


「ええ、そう。一瞬で終わっちゃったから、何が何だったかは分からないけど。でも、あれは間違いなく神だったわ」



 レヴィーナがそこまで言うとは。そう白夜たちは驚く。

 それに、この状況で“神”という単語を聞けば、その答え―――正体なんて自ずと一つに絞られているような物だ。



「“十二神将”……か」


「まあ、恐らくそうでしょうね」


「そう……ですか」


「ああ、そうそう白夜。それよりも貴方には―――ううん、私たちにはやるべき事があるわ」


「やるべき事?」


「ええそうよ」


「それって、一体……」




「そんなの。―――あの神を、私たちで止めるのよ。その為には、同じく神であるガネーシャの力が必要だと思う。……だから、その飛空艇を使って、彼女たちを探すの」


「そうなってもいいように、整備はしておきましたよ?」


「……準備万端、って事ですか。じゃあ、行くしかないですね」



 白夜は決意する。

 レヴィーナの言う通り、アニキの弊害になる物―――十二神将は勇者である自分が止めなければ、と。



「2人は、これからどうするんですか?」



 白夜はアマクサとイクサに問う。

 すると2人は首を振って、



「我々にはあまり大した力も無いので……」


「ここで、民を守りながら事の顛末を見届けたいと思いますよ」


「そうですか……」



 そう答えた。

 そしてそのまま2人は、一つの鍵を白夜へ渡した。



「あとは、任せました。飛空艇なら壊れても構わないので、絶対に救って来てください―――世界を」


「―――はい。任せて、ください」



 そんなやり取りを最後に。

 白夜たちは飛空艇へと乗り込んでいく。


 目指すは散り散りになった仲間たちとの合流。

 そして―――レヴィーナ達を襲った神の撃破だ。



「……絶対に、成し遂げてみせるぞ」


「うん。にぃ……頑張ろうね」



 2人は手を固く繋ぐ。

 これからの不安を払拭する為に。そして、互いを必ず守ると誓うように。







「―――ほーん。それじゃあ、その“アルジャイル王”って人があそこにはいるんだな?」


「ああ。魔王様が言うにはな」



 その頃。アルジャイル王を探して無法都市ムウラへと向かっていたルヴェルフェたち一行は、もう間もなく国に到着する……といった辺りであらかたの事情の説明をマサムネとムラマサにし終えた。



「ふむ。それではその人物を我々のように味方に―――いや、協力者にする事が今の目標と言う訳か」


「まあ、そうなるな」


「だが、それはいいとして。それから先はどうするのだ?」


「それから先……?」


「ああ。もし仮にその王様がすぐに仲間になったとして。それから、我々はどうするのだ?」



 ムラマサは、そんな急所を突くような質問をクサナギへとした。どう答えればいいのか、クサナギは悩んでしまうが。



「ああ、それならさ」



 すると、一応パーティーリーダーであるルヴェルフェが、手を上げて言った。



「また分断された大陸の狭間に行ってみようよ。一つ、気になる事があってさ」


「……まあ、目的があるのなら構わないのだがな」


「それよりも。着いたんじゃないかな?」



 ルヴェルフェはそう言って指を差すと、その先には異様な光景―――死体の山が……と思っていたのだが。

 その国の外観を見て、マサムネとムラマサは驚愕した。



「あ……れ。こんなんだったか、ここって……」


「い、いや。そんなはずはない! 我らの記憶が正しければ、外には死体の山が……それに門にも落書きが沢山してあった筈だと言うのに……!?」



 それもそのはずだろう。

 何故ならば、今はムラマサが言った特徴は全て、とある一人の人物によって綺麗に片付けられたのだから。



「自分の記憶にも、死体の山々は強く残っていたのですが……確かにこれは驚きですね」


「ッスね……ここまで来ると、国の中も気になってくるッスけど」



 一同は、そんな期待をしながらも国の中へと踏み込んで行く。



 



「―――アルジャイル王! どちらへ向かわれると言うのですか!」





 ―――行こうと思ったのだが。

 また、奇跡というか偶然というか……そんなのな起こったのだ。



「止めるな。私は行かねばならないのだ。こんな老いぼれに何ができるかは分からないが、それでも行かねば……な」


「ですが、せっかく取り戻した王国の平和をまた危険に晒すような真似は……」


「何を言っておるか馬鹿者! 王国の平和どころか、もしかすると世界そのものの危機なのかもしれないんだぞ?! だとすれば、その2つを天秤にかけた時、どちらがより重いかなんて明白だろうが!」


「は、ハッ!! すいませんでした!」


「では私は行く」



 一人の老人が門から出てきて、そこを警備していた兵士とひと悶着していたのだ。

 するとそれを見たガネーシャは、一人でその老人のもとへ歩いていった。



「そなたは……」


「―――はいはい、ちょっと待ってね」



 兵士に怒声を浴びせてその場を去ろうとする老人を、ガネーシャは引き止めた。



「貴方に、用事があるの。少し時間をもらうわよ?」

最弱姫プ 毎日更新 してるよ(少しの間だけ)

今日も上がるから、ぜひそっちも読んでみてね

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