case.13 降りし神は災厄振りまきて
全てが想定外であった。
時同じくして、“壊王神ポセイドン”と“時空神クロノス”を支配する事に成功した魔王ルミナスとサタール。
各チームの戦闘はその時点で終了し、意識の失った神を、ルミナスは自身へと取り込み、サタールはミカエルの魔法で運ぶ事にした。
そうして2つの組は他の仲間たちとの合流を果たすべく再び移動を開始する。
ルミナスやサタールの所が移動を開始する頃。
他の仲間たちは分断された大陸の狭間まで辿り着いていたり、またあるチームはとある存在との邂逅を果たしていたりした。
◆
「これは……?」
「赤い光で、底が見えませんね」
白夜のチームは、分断された大陸の狭間まで辿り着いていた。
真近くでその狭間を見下ろす白夜たちだが、そこにはラージエリの言う通り赤い光が発せられていて、そのせいで底が見えなくなっていたのだ。
「これじゃあ向こう側まで渡れなさそうだしねぇ……」
「って事は、完全に私たちは分断されたって事?」
「そうなるのかしらねぇ……」
アスモフィとラグマリアはそんな風な会話をする。
確かに、とその会話を聞いて白夜は納得していた。
この狭間は結構深く、落ちたらひとたまりもないだろうし。
それにその距離もかなりあるように見える。飛んだら行けるんだろうが、この赤い光の中に突っ込んでいく度胸を持っている人はこの中には居なかった。
「まあ、とりあえず今ここで出来る事をしましょう? 近くにある国に行ってみたり、ね。それに早く“アレ”も実験したいし」
ラジエルはそう言う。
するとそれに同意するように月夜も、
「うんうん! こんな所で立ち止まっちゃダメダメだよ!」
『Zzzzzz』
そう言って皆を鼓舞していた。
それを受けた白夜は、一つ頷くと。
「分かりました。それじゃあ、行きますか! えっと、近くにあるのは……」
「多分《護王国》と《聖皇国》ね」
「じゃあ、行ってみましょう!」
と、元気良く仲間たちを引き連れて近くの国へと向かっていた。
◆
「んー……本来はこういうのをやるタイプじゃないんだけどなぁ……」
ルヴェルフェはその頃、共に飛ばされてきた仲間たちから期待の目を向けられていた。
一応リーダーが務まりそうなメンバーは居るには居るのだが……
サタンは先の一件で少し自粛をしており、レヴィアタンは正直使えない。頼れるのはベルゼブブかガネーシャか……そう思っていたルヴェルフェだったのだが、2人とも「自分はやらない」と言って聞かなかったのだ。
残ったリガーテ、クサナギ、スレイドもどちらかと言えば弟子ポジで仲間を先導するというイメージは無いし、何よりも本人たちがやりたくなさそうにしていた。
だから半強制的にルヴェルフェがリーダーを務めることになったのだが……
「でも、やらないと死にそうだしね……はぁ、面倒くさ……」
ルヴェルフェは“それ”を見上げながら溜め息をついた。
「師匠。あんなのちゃっちゃと倒すッスよ!」
「あーそうだね」
それ……は、一匹のドラゴンだった。
それはそれは黒い……呼称するとしたら“邪竜”とでも呼べるような、黒いドラゴンだった。
「それじゃあ……やりますか」
そんな気怠そうなルヴェルフェの言葉が合図となって、それぞれは邪竜へと攻撃を開始したのだ。
◆
「……ッ」
レヴィーナはその頃、軽く絶望していた。
だって、目の前に居たのは紛れもない神だったのだから。
『まさか、こんな結末になるとはな。ククク……』
近くにいた天使たちを起こして間もなく、神はやって来た。
何をする訳でも無く、彼女たちの行動を牽制するだけの神。
彼女たちは、その場から動けずに居たのだ。
「厄介ね……」
「そうやな」
「っすね」
その神は、まるで手足のように“天雷”を操り、その場から何とか動こうとする天使たちを足止めしていた。
それは何かを待っているのか。とにかく、その神は彼女たちへ攻撃をしなかったのだ。
『―――ほう。乗り越えたか』
「何……? さっきから何なのよ!」
レヴィーナはやがて怒り、感情のままに言葉を吐いた。
すると神は答える。
『こちらの話だ。それよりも貴様ら。これから面白い物が見せられそうだぞ?』
「……だから、何なのよ……!」
『ククク……あれを見るがいい』
そう言って神は、空を指差す。
いや、正確に言えばここは既に空中なのだが、それよりも高い空を指差したのだ。
『さあ、終焉の始まりだ』
「何よ……あれ」
すると。
そこから、2つの神々しい球体が現れた。
目の前にいるコイツと、同じオーラを放ち……いや、同じオーラでも量が尋常じゃないくらい違った。
目眩がしそうなくらいの、とてつもないオーラ。
『時は満ちた。さあ天使たちよ。我と―――残された最後の十二神将である、この天空神ゼウスと戦うがよい!』
◆
『いよいよですか』
『チッ……俺らが出るなんて、冗談じゃねぇって……』
『文句を言っている暇があれば、一瞬で世界が滅ぼせるように準備しておきなさい?』
『……わーってる』
神は消え去った。
自分たちの、優秀だと思っていた手駒はもう一つを残して全て消え去ったのだ。
まさかここまでやるとは、“彼”を召喚した片割れの神は思った。
所詮はその場繋ぎの、それこそ自分が新しい世界を構築する為の“駒”としか思っていなかった彼が、だ。
彼が来てから、想定外の事態ばかり起きる。
長年封じられていた《七つの大罪》が動き出し、それに合わせて《七つの美徳》まで動き始めた。
《魔帝八皇》が動くのは予想が出来たが、まさか《天帝八聖》までもが彼の側につくとは予想だにもしなかった。
そして何よりも、自分たちだけの手駒であったはずの、《十二神将》までもが取り込まれたのだ。
正直、アダムは侮っていた。
まさか自分が“彼”に直接手を下すことになろうとは。
『ですが……もうすぐなのです。世界はもう少しで、完全に新たな物へと生まれ変わるのです……!』
『ああ。こんな俺らに反抗的な世界は、何度だって滅ぼしてやるよ』
『今までも、そうしてきたように。―――この世界でも、同じく』
2人は思う。
自分たちの、それぞれが理想とする世界をここでも作るために。
『さあ、行きましょう』
『ああ』
『『全ては今日で終わらせよう―――新たなる始まりの為に』』
そう言うと、2人の神は。
大きな球体へとその身を変えて、変えるべき世界へと降りていくのだった。
故に、神は動かねばならないのだ。世界を、己が手で変える為に。




