case.12 全てを生み出す力で
「―――創造の力って事は、こういう事がし放題ってことだよなァッ!?」
―――ああ、それでいい。如何なる物も君が生み出せば、それは“形”として残るから。
俺は自分の周囲を埋め尽くすくらいの小さな剣を創り出した。
『ほざいてろッ!! 全員まとめて葬ってくれようかッ!』
「煩え神サマだなァッ! だったら逆にこっちがテメェを葬ってやるよッ!」
『生意気なァァァァッ!!』
マノンが叫びながら飛び出して杖を剣のように振るうと、対するクロノスはその手に持つ斧を振るって受け止めていた。
一見マノンの杖が一方的に負けそうな鍔迫り合いだが、以外にもマノンはクロノスの押しきろうとしていた。
「援護するぜェッ!」
俺はそれを援護するように創造した剣を射出していく。
『チッ! ―――“断罪”ッ!』
クロノスは対峙しているマノン共々、俺の放った剣を斧の横凪で吹き飛ばそうとした。
実際それで俺の放った剣は吹き飛んだのだが、クロノスはそこに集中してしまっていたせいで見落としていた。
俺たちには、もう一人仲間がいる事を。
「“鬼龍流剣術・牙突”ッ!」
『しまっ―――グアァァッ!』
背後から迫っていたベルゼリオが、その剣でクロノスの背中を突き刺していたのだ。
だが、クロノスの体は思っていたよりも硬いのか、ベルゼリオの剣はこちら側―――つまり腹側まで貫通していなかった。
『―――“牙刃”!』
するとクロノスは、ベルゼリオ目がけて斧を振りかざした。
「クッ……!」
ベルゼリオはクロノスの攻撃を難なくかわすが、クロノスに刺した剣はそのままにしてきてしまっていた。
(武器が無くなっちまったか、アイツ……)
いや、クロノスが捨てれば話は別だが……それでも回収に時間がかかるのは事実だろう。それなら、早速手に入れたこの力が役立つ時じゃないか。
「おいベルゼリオッ! ―――コイツを使いなァッ!」
「……ッ!」
俺は一振りの剣を創造すると、そのまま上空にいるベルゼリオに向かって投げつけた。
ベルゼリオは俺からその剣を受け取ると、
「助かるぞ!」
と一言礼を言う。
―――だいぶこの力の事を理解しているみたいだね。
(いんや……元々剣を生み出すスキルは持ってたんだ。だから別に、これは神サマの力って訳じゃねェだろうよ)
―――なら、剣以外の物を創ってみようじゃないか。
(剣以外の物?)
―――ああ、きっと今頃他の二人も似たような話をしているだろう。俺たちは、3人で一つの神なんだから。
(きゅ、急に何を言ってるんだァ……?)
―――いいから。さっきも言ったでしょ?
「オレが……破壊し。俺が創る。それを私が守る……か」
俺は思い出すようにそう呟く。
この神サマと、俺たちが自然と……呼吸をするように呟いたその言葉を。
―――三神一体となってあの王様ヅラの爺さんを倒すんだ。鍵は、キミだよ。
(か、鍵だと?)
―――さあ、もう戦いに集中しな。爺さんが……クロノスが戦線に復帰するよ。
(は? お、おいちょっと待て―――)
『雑魚の分際で忌々しい……ッ! 貴様らを殺すまで、私も死ねない―――ならばこそ、最大限の力を披露しようではないか』
「三神一体となって……か。―――おい爺さん。そっちがさらなる本気を出すってんなら、俺らも披露してやるよ」
俺は、勢いでクロノスへと応えた。
もうここまでくればヤケだ。勝負は一回きり。マノンとベルゼリオがどう動くかは知らないが、言葉の通りにやるしかない。
何でもいいんだ。俺が、“鍵”だと言うのなら……恐らく―――
『フッ……クハハハハッ! 面白い! ならばやってみるがいいゴミ神共よ!』
「いいぜェ……見せてやるよッ!」
俺はそう叫ぶと、マノンとベルゼリオの方を見て言った。
「おいお前ら! ―――分かってるなッ!?」
「ああ。分かっている! ―――任せたぞ、2人とも!」
「おう……ッ! オレが、きっかけを作ってやるから……後はオメェに全部任せるぞッ!」
2人は頷いてそう答える。
やっぱりそうか。俺が鍵ってことは……俺がフィニッシャーになるという事だ。
―――君は剣以外の物も、何でも生み出せるんだ。それが俺の力。『創造』の力だからね。
「ヘッ……分かってらァ。やってやろうじゃねェの」
『さあ、来るがよいッ!!!』
クロノスのその挑発の言葉で、マノンは飛び出した。
俺とベルゼリオは、動き出すタイミングをマノンを見ながら慎重に考える。
「行くぜ……ェッ!」
―――さあ、ブチかませ女ァッ!!
「『―――“破壊術式・極爆発炎魔”』」
誰かの声とマノンの声が重なり、いつもよりもさらに火力が上がっている爆発魔法がクロノスを中心に巻き起こった。
……かと思ったのだが、
『“時間逆行”』
そんな言葉一つで、巻き起こっていた爆発は時空間が歪んだかのように消えてしまった。
「チッ……そういやそんな力があったか……ッ!」
『フハハハハハッ!! 何をしようともう無駄なのだよッ!! ―――“時空逆転”』
そして次の瞬間、マノンとクロノスの位置は入れ替わっていた。
そうだ、あの2つの能力をどうにかしないとコイツとの戦いには勝てないんだった。
「さ……サタール様……っ!」
すると後ろの木陰から、誰かが俺を呼ぶ声が聞こえた。
すぐに振り返ると、そこにはルインの嬢ちゃんがいた。
「お、おい……どうしたんだよ! 危ねえから怪我人は―――」
「あ、あの神の能力は分かっていますか……?」
「あ、ああ。分かってるつもりだが……」
「それなら、良かったです……。あの神の能力は3つ……一つは対象の時間を巻き戻す力。一つは対象と自分の位置を入れ替える力。そしてもう一つは、対象の急成長―――つまり何かしらの加速を促す力。……それだけ、忘れないで……くだ、さい……」
そう言い残すと、ルインの嬢ちゃんはパタリと倒れてしまった。
(もう皆も限界が近いって訳か……ッ!)
「おいマノンッ! もう時間が無ェ! そろそろ決めてくれねぇと怪我人が厳しいぞッ!」
俺はルインを木にもたれさせながらマノンに呼びかける。
するとマノンは、遠くても分かるくらいの大声で笑いながら言ったのだ。
「―――ハッハッハッ! ハーッハッハッハッハッ!!!」
「な、何がおかしい……んだ?」
「おいサタール。準備しておけよ……!?」
「は……? だ、だから一体何を―――」
俺の疑問は、解消される事なくマノンは自分勝手にも話を進めていく。
(ああもう! いいぜェ。やってやろうじゃねぇか!)
『フッ……ハハハ! 何をしようと無駄な事。それがまだ分からないのか雑魚がッ!』
「―――“高速詠唱”」
マノンは一言、そう呟いた。
その瞬間、彼女の周囲には幾つもの魔法陣が展開される。
「“無限詠唱”」
『ン……ァ? 貴様、何をして―――』
「“魔法強化”」
(……なるほど。こりゃァ……)
そこまで彼女が言うと、今度は何やら赤い光にマノンが包まれていった。
―――ほう、そこでシヴァの力を使うのか。面白い!
「―――破壊術式発動……“破壊魔法・壊獣”」
刹那、マノンとクロノスのいる周囲を取り囲んで、まるで一つのドームバリアのように魔法陣が展開されていった。
そしてそれは、全てが真っ赤かな陣だったのだ。
『何をしようと無駄だッ! 全て元に戻れ、“時間―――”』
「―――全部爆ぜやがれ。“破壊爆発炎魔”」
クロノスが動くよりも早く、マノンの詠唱が終わった。
瞬間爆発は起こり、先程同様周囲をかなりの威力の爆発が連続で起き続ける。
しかし先程と違うのはただ一点。
『う……グ……アアアアアアアアアアアアアアアアア!』
クロノスが、抵抗していなかったのだ。
いや、出来なかったのか?
だが、何でもいい。
今の爆発が、きっかけになった!
「今だサタールッ!」
「おうッ!」
俺はマノンに言われて、飛び出した。
飛んでみると、ベルゼリオはマノンの爆発から他の仲間たちを守っていた。
2人はやるべき事をやっている。
残るは俺だけだ。―――今の俺に出来る事。『創造』の力を得た俺が、出来る事。
剣以外でも、何でも生み出せるというのなら。
俺は、信じた主の力すらも、創造してみせよう。
「全力全開だ……ッ! ―――生まれやがれ、『支配』の剣よッ!」
―――ああ、やっぱり君は。君たちは……
『う……グ……ア……ッ! ふ……ざ、け……るなァァァァァァァッ!』
「おらァッ! とっとと俺らの傀儡になりやがれクソジジイッ!!!」
グサリ。
俺は、爆発の中に飛び込んで……そして手に持っていたその剣でクロノスの腹を刺した。
そして、その剣を受けたクロノスは―――
『ァ……ガ……脳……がッ!』
何かに抗う様子を見せた直後、やがて気を失ったかのように倒れたのだ。
―――とっても面白い。
金曜なので最弱姫プ更新ありです




