case.10 絶対救済と覚醒の予兆
三神一体
「ちょ、ちょっと何を言ってるんですかガブリエラ!」
「いいからミカエルパイセンは黙っててください。出来る限り私がアイツを削りますから、後は皆さんにお任せしますけど」
「い、いやだから皆で攻撃すればいいだけの話なんじゃ……」
「それじゃ―――」
「あ、ちょ、ちょっと!! もう!」
ミカエル様の言葉を聞かずに、クロノスへと向かっていくガブリエラ様。
しかし、いくら怒ってるとはいえ誰のサポートも受けずに戦うなんて危険すぎる。それならばこのメンツの中で一番サポートに向いている私が彼女をサポートしてあげなければ。
それに、私だって主様の従者で、そう簡単に負けれるはずがないから。やれるだけの事は、やらないと!
「―――“分身”っ!」
『フン、小賢しい技だ。貴様らを纏めて葬ってくれよう』
「ちょっと、ルイン!? 邪魔しないでって―――」
「いいから! 一人で戦うのは危険すぎますから、私が“サポート”をしますっ!!」
すぐに飛んで、ガブリエラ様の近くまで来た私は分身を数体出しながらそう言った。
「……サポート、ね。分かった、分かったよ! それなら全力でやるよー!!?」
「分かってますっ!!」
『無駄な足掻きと知るがいいッ!! ―――“断罪”!』
クロノスは、私が斧が触れられる距離まで来たところで、勢いよく斧を振りかぶった。
虹色に輝く魔力が斧を包み、その大きな刃が私に襲いかかる。
「ルインっ!」
「私は大丈夫ですっ!」
私の短剣ではこの巨大な斧の攻撃を防げないだろう。それならば、防ぐ必要なんてないんだ。
最初から、こうすればいい。
「―――遅いんですよ……っ!!」
『チッ……やはりこの武器では無理か……ッ!』
そう。避ければいいのだ。
斧は巨大で、攻撃の挙動はとても遅い。その分当たったら即死レベルなのだろうけど。
「よし、これなら! ―――“救済ノ剣”っ!」
『後ろに居るのは分かっていたぞッ!! ―――フンッ!』
そして私にクロノスが集中したその一瞬の隙に、クロノスの背後からガブリエラ様が攻撃を仕掛ける。
ガブリエラ様の持つ双剣は、何か緑色の怪しい光に包まれていた。
「ま……無理だよねっ! でも……ただじゃ終わらないんだよっ!」
しかし、その攻撃はクロノスが気づいていたようで、斧を後ろに勢いよく振ることでギリギリの所で防がれていた。
ただ、防がれたと言うのにガブリエラ様は笑っていた。
「ルイン! 畳み掛けるよ!」
「え? あ、はい!!!」
何がなんだか分からないが、私も体を動かした。
とりあえずクロノスに攻撃を仕掛ければいいだろうか。
「―――“影飛剣”ッ!」
「―――“種植え”っ!!」
『チッ……! 二人同時―――』
『「……え?」』
私と、クロノスの言葉がシンクロした。
それもそのはずだ。だって今、ガブリエラ様は何て言った?
『ふざけているのかッ! ええい、まずは貴様が邪魔だ!!』
「きゃぁっ!」
と、そこで私はガブリエラ様に気を取られていたところでクロノスに押し飛ばされてしまった。
「ふふ……ふざけてないよ。それに、私の力は“救済”の力だからね」
『な、何を言っている……?』
「―――私はね、この力が欲しかったから今の順位をキープしてたんだよ」
『じゅ、順位……?』
「そ。お前は気にしなくていい事だけどさ。でも、お陰でこういう力が手に入ったの。―――ほら、爺さん。お前のその斧、よく見てみなよ」
『お、斧がどうかしたと言うの―――かッ………………!?』
パチン。と指を鳴らして指を差すガブリエラ様。
すると、クロノスの持っている斧は驚くべき有様に変わっていったのだ。
『……斧が、崩れていく?』
「そ。斧なんかに変えられてしまった素材たちに対する“救済”。これが、その結果って訳だよ」
『救済……だと? ―――神器を壊すことが、救済だと言うのか?』
「神器でも何でもいいけど。私の力はつまりそういう力って訳さ。分かったかな」
『ふざけるなよ……ッ! あんまり、調子に乗るな雑魚がッ!!』
「雑魚はどっちか、思い知らせてあげるよ」
そう言うと、ガブリエラ様は再び指をパチンと鳴らした。
「―――『絶対救済』」
たった一言。
それだけで、世界が変わった。
『な、何だ……ッ! 貴様、何をしたッ!』
ゴゴゴゴ……という地鳴りと、突如吹き荒れる風。
まさしく、嵐の予感だった。
「まあ、見てなって。私の本気をさ」
次の瞬間だ。
地面から、ポコッと植物の芽が現れた。しかもそれは一つではない。ポコッ、ポコッ。と次から次へと現れる芽たち。
そしてそれは、ただ生えてきただけではなく、それぞれが急成長していったのだ。
ぐんぐん伸びる芽は、やがて木や蔦のような植物へと成長を遂げる。
「これが私の、救済の森だよ」
「救済の、森……?」
そうか。だからさっきガブリエラ様は“種植え”なんてふざけた技を使っていたのか。これで合点がいった。
「―――そして最後は、お前を救済してあげるよ」
『ほざ……けッ!』
「命の奇跡を思い知るといいよ。―――森よ、奴を捕らえて」
ガブリエラ様が手をかざすと、森はまるで生きていてその命令に従うかのように動き始めた。
蔦は伸びてクロノスを捕らえようとし、木々は枝を銃弾のように飛ばしてクロノスを狙う。
『小賢しい小賢しい小賢しい小賢しいッ!』
対するクロノスはその手に持つ巨大な斧で何とか攻撃を防いでいたが……
(やっぱり、攻撃の遅さが仇となって防ぎきれてない……! もしかすると、今なら……!)
「―――“分身”!」
私は即座に分身を出しながら、飛び上がる。
ガブリエラ様の攻撃に合わせて、私も仕掛ければかなりのダメージが稼げて、もしかすると倒せたりなんかするかもしれな―――
『もう、よい。手加減するのもやめだ。―――全員、死ね』
やがて、脱力したようにそう呟き、吐き捨てるクロノス。
次の瞬間だ。
『―――『神威』』
クロノスが、いよいよ最後の本気を出してきたのは。
◆
クロノスが、神威を使った瞬間。
彼らは、今までに感じたことの無い熱に襲われていた。
「おい……ンだよこれ……ッ!」
「体が……あつ……い」
「ハァ……ハァ……」
ドクン、ドクンと脈打つ心臓。
滴り落ちる汗。
火照る、体。
それはまるで体が、何かに反応しているようだった。
「―――全てを、壊し……」
「そこに新しく世界を創る……」
「その世界を……私が……守る―――」
3人は、無我夢中で呟いた。
何度も何度も、繰り返し同じ言葉を。
何故だがは分からない。でも、脳内にはこの言葉がずっと巡っていたのだ。
「……クソ……が! マジで、何なんだよ……ッ!」
「分からない。だが……」
「ああ……良くないことが、起こりそうだな……」
彼らは待つ。
宿主の覚醒を。
―――間もなく訪れる、その時を。
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