case.9 能力の仕組み
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「―――まずはサタールとベルゼリオ。貴方たちが“順番に”攻撃してみてくださいッ!」
「了解ッ!」
「了解したッ!」
戦いが再開すると、すぐにミカエル様はそう指示を出した。
指示を受けたサタール様とベルゼリオ様はすぐに駆け出す。
「あの、私たちは……?」
「ああ、皆さんには少し見ていてもらいたいのです。一人で考えるよりも複数人で考えた方がいい事多いですから」
「で、ですが……もしあのお二人に何かあったら……」
「―――大丈夫ですよ。そんな事には、させません。もしそうなってもそこの悪魔が癒やしてくれますから。皮肉な話ですが」
私が不安そうにそう呟くと、ミカエル様はしっかりとクロノスの方を見ながら答えてくれた。
確かに、この方は守護の力が特徴的な天使の、しかもリーダーたる方だ。もしも万が一があれば守ってくださるのだろう。
いや、だけど頼りすぎるのも駄目だ。
何があっても自分が何とか出来るように警戒しておく―――そのくらいの意気でいないと。
「―――さあ、見物です」
ミカエル様がそう呟いた直後の事だ。
『フッ。雑魚が何人来ようと初戦は雑魚ッ! さぁ、私を楽しませてみよ!!』
「言われなくても、楽しすぎて昇天しちまうくらい楽しませてやらァッ!」
『フン、面白いッ! ならばそれをこの戦いで証明してみろ!』
「―――ベルゼリオッ!」
「分かっているッ! ―――“鬼龍流奥義・龍砲”」
クロノスの背後で、少し離れた距離からベルゼリオ様は攻撃を仕掛けた。剣から放たれる魔力波が龍となり、それがクロノスに襲いかかる。
だけど……
『―――“時間逆行”』
それは瞬時にして消えてしまった。
「あれは、対象の時間を巻き戻す能力ね……? その対象は攻撃となる魔力にまで及ぶという訳かしら……」
「な、なるほど……?」
と、そんな戦いを見ながらミカエル様は考察をしながら呟いていた。
「次は俺が行くぜェッ!! ―――“鬼龍流剣術・牙突”ッ!!」
次はサタール様が攻撃を仕掛けた。
先程と同じ、一直線に突きかかる攻撃。だけどこれも……
『何度やっても同じ事だ。―――“時空逆転”』
「な……にッ!?」
クロノスによってかわされてしまったのだ。
いや、正確に言えば位置が入れ替わっていた?
「あれは……位置を入れ替える力……? だとすると……いや、でも―――」
ミカエル様の考察はさらに深くなっていく。
だが、まだ確定的な情報が足りないのははっきりと分かる。
現状分かるのは『時間を巻き戻す能力』と『位置を入れ替える能力』の2つ。そして私は一つだけこれに関して気づいた事があるのだが、初めてその力を使った時から、2つの能力を順番に使っているのだ。
これがたまたまなのか、或いは“順番”でしか使えないのかによっては、戦い方が変わってくる気がする。
(それなら、確かめてみるとしましょう……っ!)
「―――“分身”っ!」
私は自分の推理を確固たる物にするために、分身を召喚しながら飛び上がった。
『フン! 次は貴様かッ!』
「―――行きますッ!」
もし私の推理が正しいのであれば、次は『時間を巻き戻す能力』のはず。それなら、魔法とかの遠距離攻撃ではなく武器での近接攻撃がもっとも有用なはず。
ただ、最悪の場合は効果の対象が“生物”にまで及ぶ場合だ。
もしそこまで出来るなら―――
(いや、そこまで出来るのなら最初っから私たちを生まれて来るより前に戻せるのでは……?)
『どうした娘ッ! 私に恐れをなしたかッ!』
「―――いいえ……っ! “虚空弾”ッ!」
私はクロノスの言葉に反論しながらも作戦を急遽変更し、一旦魔法を放つことにした。
―――“虚空弾”は虚空の力を有した魔力弾を任意の方向に撃ちまくる魔法だ。
さらにそれを目くらましとして攻撃を放った。
『無駄な事をッ! ―――“時間逆行”ッ!』
(来た……ッ!)
私の狙い通り、“先に放った”虚空弾は謎の力でフッ……と消え去ってしまったのだが―――
「―――“第二の弾丸”」
消えてしまった弾よりも少しだけ距離を話して、二度撃っていた弾が後から再びクロノスを襲った。
そしてここでクロノスは『位置を入れ替える能力』を使うはず。そうなれば再び攻撃のチャンスがやって来る。
『なるほど……ッ! 考えたな、娘! だが―――“時空逆転”ッ!』
「―――なるほど」
攻撃はかわされてしまった。だけど―――今のでほぼ完璧に把握できた。
いや、まだ確定と言うわけでは無い。だけどこれはほぼ確定と言っていいだろう。
―――クロノスは、能力を順番にしか使えない。
「ルインっ! ……よくやりましたわ」
「はい! 仕組みさえ分かれば後はこちらのモノですッ!」
「そうね。ふふ……完璧だわ―――それでは皆さん。反撃と参りましょうかっ!」
ミカエル様は全員にそう呼びかける。
すると一人だけクロノスと同じ高さまで飛んでくる影があった。
『フン……いきなりどうしたと言うのだ。何度も言うが雑魚がいくら群がろうが所詮は雑魚。何度かかってこようが、私に勝つことは出来ないのだよ』
「ヘッ……そいつはどうかなって奴だぞ?」
『何だと?』
「この、大魔法使いマノン様がいりゃ……ピンチもチャンスに早変わりってな……ッ!」
―――それはマノン様だった。
どうやら治療を終えたようで アスモデウス様ももう戻ってきていた。私が彼を見ると微笑んで応えた。「治癒は完璧だ」と。
「ええ……そうですわ。もう、貴方との戦い方は完全に私の脳内で組み立てられてますから。後はそれを実行して、貴方を倒すだけですッ!」
『戦い方が組み立てられた、だと? ―――ああそうか。分かったのか。なら、もっと楽しませてくれよ……?』
「ええ、言われなくても……ッ!」
そう言ってミカエル様は飛び出した。
それに合わせる形でガブリエラ様も飛び出す。
(次に来るのは時間を巻き戻す能力の方……となると恐らく有効なのは近接の―――)
「ガブリエラッ!」
「りょうかーいっ!! ―――“双斬”っ!」
ガブリエラ様は一瞬でクロノスへと詰め寄り、そして二本の短剣で攻撃を仕掛ける。
しかし、そこで有り得ない事が起こったのだ。
『―――“促進”』
「おわ、わわわわわわっ!」
何と、ガブリエラ様はどういう訳かクロノスを通り過ぎて飛んで行ったのだ。
今のは、一体……
「何をしたのか知らないけど、喰らいなさいッ! ―――“光輪天撃”ッ!!」
『―――無駄だ。“時間逆行”』
「……なッ! け、剣が……っ!」
クロノスは再び力を使った。
今度は見たことのある力……時間の巻き戻しだ。
対象は、ミカエル様の持っていた剣―――それが消えてしまったのだ。あれは見たところ魔力で出来た剣だから消されてしまったのだろう。
―――と、そんな事よりもだ。
(さっきのガブリエラ様に使ったあの力は……一体?)
『フッ……クク。フハハハハハハ!』
「何。何が……おかしいと言うのかしら?」
『いやぁ、面白くてな。―――我がただの時空神だと思ったら大間違いだぞ? 雑魚が』
突然……クロノスは何を言い出したのだろう。
ただの、時空神では無い……?
『我は元々、“農耕神”だったのだぞ? となれば当然そちらの能力も扱う事ができる。―――対象の成長、すなわち速度を上げるという事がな』
対象の、速度を上げる能力―――?
それじゃあさっきのあの力が、その能力だったのか。
「―――あー、そっすか。アンタ、“農耕神”だったんすね」
『……ほう。気配を一つも感じなかったな。貴様、何をした?』
「いんや? 特別な事はなんもしてないけど」
と、その能力を受けて遠くまで飛んで行ったガブリエラ様が、突然クロノスの背後から現れたのだ。
それはまるで、暗殺者のように。
「でも、対象の成長……ってねぇ。私のアイデンティティ奪わないでもらっていいすか?」
『何だ。貴様は怒っているのか?』
「―――ええ。それはもう。かなりね」
『フン。くだらない……だが、面白い。いいだろう天使の娘。私が遊んでやる』
「ほざいてろ爺さん。―――私が全て超えてやるからな」
『「―――勝負だ」』
新作も今日の夜に上がります




