case.6 破壊王神
破壊司りし最強の従者たる其の名は―――
『まずは手始めだッ! ―――“二槍追従撃”!』
「来るぞミカエラ! 狙いは俺たち―――いや、俺だッ!」
「おっけー!」
空中で俺たちを見下ろすポセイドンは、その手に持つ二本の槍をそのまま投擲してきた。
最初とは違う……倍の二本の投擲。その狙いは当然俺な訳で―――
(来る……ッ!)
音速で近づく槍の存在に気付き、なんとか剣で弾こうとした時だ。槍は俺の剣の届く範囲まで来ると、その瞬間にさらにブーストがかかったようにその速度が上がったのだ。
「―――んなッ……!」
「飛んでッ! ルミナス様!!」
「ッ!」
直後、ダァン!という音と共にさっきまで俺が居た地面には二本の槍が刺さっていた。
咄嗟のミカエラの指示で体が動いたが、お陰で助かったようだ。
『アハハハッ! 残念、俺の力はここからなんだよッ!』
「……? 何を言って―――」
「―――危ないッ! 避けて!!」
ポセイドンの槍を避けてホッと一息ついていると、再びミカエラの叫びが耳に入る。
一体何事かと下を見ると、そこには再びポセイドンの槍が俺に向かって飛んできていた。
(ホーミング、ってそういう事か……っ!)
『俺の槍は狙った獲物を殺すまで追い続ける地獄の槍なんだよ……!』
「なら槍その物をブチ壊してやるよッ!」
『ンなことできる訳ねぇだろうがッ!』
「―――今度はこっちの番だ……!」
ゆっくりと加速しながら飛んでくる槍を躱しながら、俺は剣を構える。まずは手始めにアレを試してみよう。
「―――“虚空斬”!」
剣を横に凪ぎ、空間に歪みを生み出した。
そこに俺を追従していた槍が避けることなく入っていく。
対象を虚空へ送り込んだ歪みは、その瞬間に元通りになった。
(これで大丈夫なのか……?)
若干の疑いはあるが、一応成功はしている。
と言うことは奴に武器のない今が―――
「今が、チャンスだッ!」
「俺も行くぜぇッ!!!」
「私も行くわよッ!!」
刹那、ポセイドンの槍が虚空に消えたタイミングを見逃さなかった俺とマモン、そしてミカエラは飛び上がってポセイドンへと近づいて行く。
先程負傷したルシファルナは、ラファエルによってマモン同様に治療されていた。
『雑魚の分際で、生意気。俺の近くに来んじゃねぇよ』
「ハッ! 寝言は寝ていえ神様よォッ! ―――“連弾爆撃”!!!」
俺よりも高速で近づいたマモンは、ポセイドンに爆弾のような物を連続で投げつけていた。
それに合わせて俺とミカエラも攻撃を繰り出す。
「―――“虚影斬”ッ!」
「―――“光輪連撃”ッ!」
3人の攻撃が重なり、それをポセイドンは避ける動作を見せない。これはもらった―――そう、思っていたのに。
『舐めるなよ? ―――『神威』』
そんな言葉と共に、ポセイドンの周りにはオーラのバリアが現れて俺たちの攻撃をことごとく防いでしまった。
そしてさらに奴は……
『帰ってこい、“トライデント”』
トライデント。それは奴の槍の名前だろうか。
だが、いくら呼んだところであの槍はさっき俺が虚空へ飛ばしたから―――
―――ピキッ。ピキキッ。
(そんな、まさか……ッ!?)
『―――“破壊槍顕現”』
そんなポセイドンの言葉が聞こえた次の瞬間だった。
ピキッ、と鳴っていた空間の歪み……割れ目から“三本”の槍が現れたのだ。
『もう容赦はしない。あんまり調子に乗るなよ、雑魚が』
「……ッ! ミカエラ、危ないッ!!」
「え―――」
まるで指揮者のように手を振ると、その動きに合わせて戻ってきたポセイドンの槍は動いた。
そして先程とは比にならないくらいの速度で飛んでくる槍は、ミカエラを狙っていた。
「ちょ、待ってよ―――」
『まずは周りの雑魚からだ……ッ!』
「させるかよ。―――『神威』」
しかし、俺はそんな事を許さない。
『神威』を発動して、ミカエラのもとへ瞬時に近寄った。
「しっかり掴まってろよ」
「ひゃっ……! え、え、え?」
俺はいわゆるお姫様抱っこというやつでミカエラを捕まえて、そのまま槍から逃げていく。
『―――ふぅん……?』
この時、初めてポセイドンの顔には動揺が見えた。
眉がピクッと動き、それから放たれる声がすごい怒気の含んだ物になっていったのだ。
『生意気だ。ホントに雑魚の分際で生意気だよお前ら……ッ!』
怒りで拳を握り締めるポセイドンのもとに三本の槍は帰ってくる。そして、そんな槍たちは主人の周りでフワフワと浮く中。
『あームカつく。もう……本気出しちゃってもいいかな……? ま、いいよね?』
『『チャンス。“超魔力光線”ッ!!!』』
なんと今まで息を潜めていた二体のマザーが木の影からポセイドン目掛けて静かにレーザー砲を撃ち放ったのだ。
そしてそのレーザー砲は、ポセイドンへとそのまま直撃する。
綺麗なまでのクリティカルヒットだった。
だがしかし―――
『―――真名解放。我が名は海王神に非ず。幼き神に非ず。我は海を支配する最強の従者なり。全ての破壊を司る神の従者なり。破壊の力を授かりし最強たる従者である我が名は破壊王神ポセイドン。
全てを、壊す者だッ!!!!』
そんな攻撃などそもそも無かったかのように佇み、そして謎の詠唱を繰り広げるポセイドン。
そのポセイドンによる詠唱が終わると、周囲に浮いていた槍は三本以上に増えていた。
四本、五本―――いや、それよりも多い。数は、10以上はあるだろう。アーチ状にならんだその槍たちは、黒い輝きを放っている。
『まずは、雑魚からだ。―――“破壊輪槍”』
その内の何本かがポセイドンが腕をかざした方向へと飛んでいく。その方向は―――
「あっちはさっきレーザー砲が放たれた地点―――まさかッ!」
二体のマザーが危ない。そう指示を出そうとした瞬間。
『『システム……エラー』』
『まずは二体。次は―――そこだ』
俺が言葉を放つ間もなく攻撃は終わっていた。
二体のマザーはその場に倒れ込み、黒煙を出していた。
そしてそのまま流れるようにポセイドンは、次なる狙いを定める。
『―――“破壊閃槍”』
今度は一本の槍が飛んでいく。
その飛んで行った方角は―――
「ラファエルたちの方か……ッ!!!」
マモンとミカエラがいる俺の方は狙われてない。となると次に狙われたのは負傷したルシファルナとそれを治療するラファエルの方だろう。
「ッ! 危な―――」
「―――せめてもの、罪滅ぼしですッ!!」
言葉と共に舞う鮮血。
俺に聞こえるくらいに放たれたその言葉は、ルシファルナの物だった。
『これで三体。次は、お前たちだ―――』
空から見える。
ルシファルナが、ラファエルを庇って槍をその身に受けたのが。
そして、そのまま倒れてしまったのが。
「―――お前…………ッ!!!」
『死ね。―――“破壊槍流星”』
ポセイドンは、俺たちに向けて槍を放つ。
それはまるで、俺たちを玩具のように見てる攻撃の連発。
もう既に3人もやられちまったんだ。
流石に、許せない。
―――空から降り注ぐ流星の如く槍は降ってくる。
「二人とも。いけるか?」
俺はミカエラとマモンに問う。
すると2人はさも当然と言ったように笑った。
「へっ、たりめぇよ!」
「もちろん。何としても、アイツを倒すわよ!」
「2人とも……!」
勝算はまだない。
だが、奴はここで食い止めないと多分マズイことになるのはよく分かる。
だからこそ、奴はここで倒す。
そして、俺の支配下に置くんだ。
「絶対に……勝つ。何としてもな」
『面白いな。なら、勝ってみろよ雑魚が』
対ポセイドン戦。第2ラウンドの幕開けだ。
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