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case.5 海王の槍

場面は再び戻って―――





「なになに……っ!? アイツは、何なのよ!」


『アハハハッ! 動揺してるみたいだけど……俺は容赦するつもりはないからね〜?』



 そう言って、まるで威嚇のように長身の槍を華麗に回してみせるポセイドン。

 まるで少年のような見た目の神様の登場に、ミカエラは驚いていたのだが……



「「―――戦闘態勢に入ります」」


「おいクソ天使。……今だけは協力してやらぁ」


「当然です。私だってこんな時まで貴方と争うつもりはありませんよ」


「……」



 他の皆は思っていたよりも驚いていなかった。

 それはまるで、コイツが現れることを知っていたような―――いや、この感じはあれだ。


 ―――強敵の襲来に慣れている感じか。

 まあ確かに、俺ももう大して驚かないようになってきたが。



▶おい魔王……あんまり奴を侮るなよ? いくらお前の陣営が強いからって、油断してると全滅喰らうぞ?


(そんなにアイツは強いのかよ……?)


▶クハハ! ああ、異常だ。主神イヴからもらった破壊の力が、かなり奴の体に馴染んでいるせいもあって、一撃一撃が俺よりも重くなっているはずだぞ?


(インドラよりも……重い一撃だって……?)



『もう準備は出来たか? ならとっとと始めようぜ……ッ!』


「―――危ないッ!」



 刹那。ポセイドンの言葉と共に放たれた大槍をラファエルが間一髪で防いでくれていた。

 俺の目と鼻の先には、瞬時に放たれた大槍があったのだ。


(今の……一瞬で俺の目の前まで……ッ!?)



▶フン。だから油断するなと―――



『今の投擲……まるで弾丸ね』


「ああ……下手すりゃ弾丸より速いかもだぞ……?」



 アルカナの呟きに、俺はそう応えた。

 するとラファエルが防いでくれた大槍がぐらぐら……と動き出し、そのままポセイドンの元へと帰っていってしまった。



『あーあ。ま、こんな簡単に当たるとは思ってなかったけどね』


「チッ……あの神調子こきやがって……! こっちからも一発喰らってみろや……ッ! ―――“爆発炎魔エクスプロージョン”ッ!」



 するとそのタイミングで、イライラした様子のマモンが前に出て魔法を放った。

 それはマノンと同じで“爆発炎魔エクスプロージョン”の魔法だった。



『―――《七つの大罪》ってのも、所詮このレベルなんだね』



 しかし直後。



「……は?」



 ブシュッッッ!と噴き出す鮮血。

 それは誰のモノか。


 ポセイドン―――のモノの訳が無い。

 では誰の……



「―――ぐあ……ァァァァァァァァァァァァアアッ!!」


「ま、マモン……っ!?」


『あはははは!! やっぱ雑魚じゃん!』



 ポセイドンの高らかな笑い声が辺りに響く。

 そう……やられたのはマモンだった。


 どういう訳か、マモンの放った魔法は消えてしまい、逆にマモンの左腕は付け根から綺麗に切断されていたのだ。

 そこから噴き出す鮮血。それを即座に治癒するラファエル。


 切り落とされた腕の近くには、ポセイドンの槍が刺さっていた。



「また……弾丸みたいに……ッ!」


『あーあ。なんかつまんなそうだね、お前ら』



 そう言いながらポセイドンは、再び離れたまま槍を回収した。

 そして再び槍を構えると、



『―――じゃあもう、お前ら全員死んでいいよ?』


「―――待てよ」



 言葉の応酬。

 俺はマモンの回復までの時間稼ぎとして、ポセイドンを静止させる。



『何だよ』


「―――お前は突然、こんな風に世界を変えて……何がしたいんだよ」


『ハァ? 何がしたいってそりゃお前。一つはお前たち……あーいや、魔王、お前とあとは勇者と巫女は例外だけど……それ以外の邪魔な奴らを殺して新しい世界を創るためだろ?』



 魔王と勇者と巫女以外の、全ての殲滅。

 そう言うポセイドンだが、疑問は一つある。何故、俺と皇兄妹を残すのか。―――何か、俺たちに残す意味があるのか。



「って……『一つは』ってどういう事だよ」


『あー、もう一つね。それは〜……まあ、教えてもいいか。どうせ魔王以外ここで死んじゃうし』



 明らかに俺たちを舐め腐った態度。

 だが今は我慢だ。とにかく情報を集めなきゃいけないからな。


 俺はそのまま放たれるポセイドンの言葉に耳を傾けた。 



『もう一つの目的はねぇ……。―――“双神”を現界させる為だよ』


「……“双神”を現界させる……だって?」


『ああそうだよ。お二人はまだ実体を持っていないからね。その為の生贄?集めをして、最悪の場合お二人がお前たち下界の人類を滅ぼせるようにするんだとさ』


「ちょ……待て待て待て」



 ……コイツ、何を言っているんだ。

 双神が実体を持たない? 現界させる為の生贄集め?


 本当に、何を言って―――



『もういい? とにかく。俺“ら”はお前たちを滅ぼしに来たって訳。―――いいからとっとと死ねよ』



 刹那。再三放たれた高速の槍。

 しかし今度は俺がそれに対応する事が出来た。



「―――っぶねぇな」


『……ふぅん。対応できる奴はそれなりに居るってことか』



 俺は瞬時に取り出した刀―――“シロガネノツルギ”でポセイドンの槍を防ぎ落とした。

 しかしまた槍はポセイドンの元へと帰っていく。


 やはり破壊までしないと駄目なのだろうか。



「おい……まだ話は終わってな―――」


『もういいって。話すだけ無駄だよ……あとは、全部終わったあとに話してあげるからさ』



 再び投擲。

 だが、その攻撃ならもう見切った……!



「―――“居合い”ッ!!」



 一度刀を納刀する事で攻撃の威力を一点に集中させた剣技、“居合い”で俺はポセイドンの放った槍をまた防ぎ落とした。



『もう駄目か……じゃ、これならどうかな……ッ!』


「全員、一旦散開するんだ!!」



 見たことのない攻撃態勢に入るポセイドンを見て、俺は瞬時に指示を出す。

 指示を受けた皆はそれに応え、縦横無尽に駆け回っていく。



「私は貴方と一緒に居るわっ!」


「ミカエラ……! 助かる!」



 俺の隣にはミカエラが来ていた。

 見ればマモンを回復しているラファエルは二人でペアとなって動いているし、二機のマザーも一緒にいる。

 唯一一人で動いているのはルシファルナだけだった。




『―――“三叉ノ海槍デルタ・ポセイドン”ッ!』




 と、次の瞬間。

 上空に居たポセイドンは、その手に持つ槍の矛先を三叉に変形させ、再び投擲の構えに入った。



「来るぞッ!!!」


『―――死ね』



 直後、俺の叫びと共に槍は放たれた。

 一方向……狙いは俺だと思ったのだが……。



「―――んな……ッ!!」



 放たれた槍は、三叉であることを意味するように。

 ゴムのように伸びた三つの矛先は、ルシファルナ以外のペアを狙うようにギュン!と高速で伸びたのだ。



「ここは私がッ!」



 予想外の動きを見せる槍に、今度はミカエラが防御を繰り出す。他のペアも同様に防げたようだが……。



「―――今ならチャンスか……ッ!」



 そう言ってルシファルナが飛び出した。

 唯一マークされていなかったルシファルナが、ポセイドンの槍が地面に突き刺さっている今、直接本体を狙いに行ったのだ。



「……貴方を、我が手中に―――『強制堕天フォールンフォース』、発動……ッ!!!」



 そうルシファルナが手をポセイドンにかざすと、ポセイドンは闇色の光に包まれていく。

 あれは確か、ルシファーの力で―――




『―――お前、馬鹿なの? 俺が隙なんて見せる訳ないじゃんか』


「……ッ! ルシファルナッ!!!! 危ない!!」


「え……?」




『―――もう遅いよ』




 刹那。

 再び舞う鮮血。



「―――カ……ハッ!」



 ポセイドンは、その手に持つ槍でルシファルナを貫いていた。

 そしてルシファルナは……正面からポセイドンに刺され―――そして、背後から迫ってきていたもう一つの槍にも刺されていたのだ。



『槍は二本用意しとかなきゃさ。―――もしもの時の為にね』


「クソ……が……ッ! ポセイドンッ!!!!」


『アハハハッ! そうだ、怒れ怒れ! お前を殺すつもりは無いけどさ、出来る限り全力で楽しんでやるからッ!!』



 もういい、あとは俺がやる。

 そう心の中で呟いて、俺は飛び上がった。



「全力で行くぞ」


『お手並み拝見といこうかな』



 俺はシロガネノツルギをしまい、代わりに“神剣・神滅かみごろし”を取り出した。

 そして剣をポセイドンへ向けた俺は、こう告げたのだ。




「―――お前も俺の傀儡となれ。お前が、俺より下だって思い知らせてやるからよ」


『ハッ! 楽しみだ! んじゃあその力ってのを見せてみろよ!』



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