case.4 農耕神とは仮の名前
魔王ルミナスが海王神ポセイドンと邂逅を果たしていた頃。
時同じくして、ルインたちも森の中で目を覚ましていた。
「皆様、無事ですか? お怪我などございませんか?」
「……ん〜、あぁ大丈夫だ」
「こちらも問題ありません」
ルインの問いかけに、サタールとミカエルが答えた。
他のみんなも心配無さそうだ。
さて。
全員の無事が確認できたとなると、今一度状況を整理しないといけないだろう。
―――まずルインたちは空も見えないほどの深い森の中で目を覚ました。当然周りは木だらけだ。
「……では、どうしてこんな場所に我らが居るか……だな」
「ンだな」
ベルゼリオの呟きに、サタールが頷く。
そう、今一番分からないのは“原因”だ。何故自分たちが突然こんな森の中に転移させられたのか。
それがどうしても分からない。
「しかし、私でも気づくことが出来なかったので……恐らくはかなり強力な―――それも神とかそういう力の持ち主がやった事では無いかと」
「だね。僕もそう思うよ」
「……お二人でも感知する事のできなかった力、ですか……」
ミカエルやアスモデウスの言葉に、さらに頭を悩ませるルイン。
実際、このメンバーの中で最も強い力を持っているのはこの二人だろうが、そんな二人が「何が起きたか分からない」と言っている以上、これは相当深刻な事態かもしれない。
「にしても、神クラスが相手と来たか〜」
「めんどそー」
……そんな深刻な事態かもしれないと言う中、マノンとガブリエラは呑気にもそんな事を話していた。
「―――ひとまず、外に出ましょうか」
この場の空気を変えようと……そして外の状況もしっかり把握しておこうと考えたルインはそう切り出した。
「そうですね。私は賛成です」
「了解だ」
「おっけー」
ミカエルやサタール、ガブリエラが私の提案を受け入れてくれたのを皮切りに他のメンバーも了承してくれた。
という事で早速森の外―――正確にはある程度開けた場所まで移動する事になった。
「にしても、不思議な場所っていうか、不気味な場所っていうか……なんか変な感じだな〜?」
「んー、そうだね。特にこの空を覆い隠している木々なんて、全部自然的に生えてきてるモノだしねー」
「……? それって、ガブリエラさんのスキルの力みたいな……?」
「ん。そうだね、私の力みたいな感じで、急成長してるけど自然的に生えてきてるモノみたいだよ、これ」
コンコン、と木の幹をノックしながらガブリエラはそう言った。
実際、マノンの言うとおりかなり不気味な感じでその木々は生えていて、その密集度が異常だったりする。
「こんな所で戦いになったら面倒ですから、一度全部焼き払うのもいい手だと思うんですけど」
「シンプルに怖いこと言わないでよミカエルちゃん」
「ちゃ……っ!? ―――ちょっとアスモデウス。私の事は普通に名前だけで呼んでください」
「嫌だね! ミカエルちゃんミカエルちゃんミカエルちゃぁぁん!」
「……〜っ! この腐れ悪魔!」
なんてまるでコントのような会話を楽しそうに繰り広げるミカエルとアスモデウス。
どうやら二人の中はそこまで悪くはないようだ。
「……む、サタール。何をしているのだ?」
「―――ん? ああ、これな」
すると今度はサタールとベルゼリオの方で何かがあったようだった。
ルインは二人の方を見ると、何やらサタールが剣で木に切り込みを入れていたのだ。それを疑問に思ったベルゼリオがサタールにそう聞いたらしい。
「これは、まあ一応何だか迷わない為の目印みたいなモンだよ。まあ、今のところ真っ直ぐ進んでるだけだから問題無いとは思うんだけどな? 一応だ一応」
「む、そうか。でも確かに、何かの幻術にかけられた場合にこういう目印があると役に立つかもしれないな」
「だろ? ま、だからつけといてるって訳。オーケイ?」
「ああ、了解した」
確かに、この状況だといつ敵に攻撃を仕掛けられるか分からない。しかもこんな森の中だ。
ベルゼリオの言う通り幻術にかけられてしまった時にこの切り込みがあれば目印となって役立つだろう。
そんなサタールの狙いに、ルインやミカエルはうんうんと感心していた。
「まあでも、こんな所で敵に襲われるなんてありえないだろ!」
「だねー。わたしは慣れてるけど、基本的にはこんな森の中で戦うなんてつらいもんね―」
「ですね。それではあんまり気負わないで行きましょうか!」
軽い気持ちで進もうと、改めて気持ちを切り替えたルインたち。
しかし、そんなルインたちには気づかないうちに辺りには霧が立ち込めていた。
「―――お、光が見えてきたぞ?」
しばらく歩いていると、マノンがそう呟いた。
すると目の前には、確かに光の射し込む場所があったのだ。
他の光とは明らかに違う光。
という事はあの先に太陽があって、その光がこの森に漏れてきているのだろう。
と皆は思った。
―――そして、その勘違いが全員を絶望へと落とすことになるのだ。
光の射し込む、木の間をくぐり抜けるルインたち。
何の疑いもなくそこを通り抜けると、そこは―――
「……森、だと?」
―――森、だったのだ。
さっきまでと同じ、森。何にも変わらない森。
空は見えず、不気味なくらいに木々が生い茂る森。
「―――幻術にかけられたか……?」
「怪しいかもなァ。流石におかしいと思うぜ」
「ですね。全員、警戒だけは怠らないように気をつけてください」
ベルゼリオの言うように何かの攻撃―――幻術の類を喰らった可能性を考慮して、ルインは警戒するように指示を出した。
全員、それに頷きいつでも戦えるような態勢になりながらも再び進み始めた。
霧はさっきよりも濃くなっていた。
『時は満ちた。―――今こそ、救済を与えよう』
すると。
何の前触れも無く。突如としてその声が聞こえたのだ。
「だ、誰だッ!!」
サタールが先頭で刀を構えながら叫ぶ。
全員が戦闘態勢に即座に入り、どこから襲われても問題ないように陣形を組む。
『―――我が名は農耕神クロノス。全ての、父である』
「クロノス……?」
『さあ、大人しくこの世界から消えるがいい。貴様らに用は無いのだから』
「随分と勝手なことを言ってくれるじゃねぇのッ! ならとっとと姿を現せよ神サマよォッ!!!」
挑発するようなサタールの言葉。
すると、その声の主はすぐに姿を現した。
『世界に不必要な羽虫が。我を挑発した事、そう簡単には許さんぞ』
「うるせぇ……ッ!」
目の前には、まるで神が居た。
いや、神なのだ。“農耕神”クロノスのはずなのだ。
しかし、それでは……あまりにもおかしい外見をしていた。
『主の命により、貴様ら本気で……一瞬で殺させてもらう。世界の調停の為の贄となる事を感謝しながら死ぬといい』
「さっきからごちゃごちゃうるせぇ神サマだなァ……ッ! まるでもう俺らが負けることが確定してるみたいな言い方じゃねぇかよ!」
『……ほう。違うのか? この我が、真の力を始めから解放しているのだぞ? 当然、我が勝つに決まっているであろうが』
真の力。
となればその外見も、それで全て説明がつく。
だってそれはあまりにも、“農耕神”と言うのにはかけ離れた―――
『農耕神―――改め、時空神クロノス。主神アダムの命により、貴様ら魔王の手先をこの世界から排除させてもらう。―――時は満ちた。さあ、死に備えるといい』
時空神クロノス。
それが彼の真の力、真の姿。
《十二神将》の父たる存在であった。
今日の夜10時に最弱姫プの第3話を更新します!
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