case.1 イメージと違う
和装鬼、顕現―――
俺の名前はルミナス。
この世界で“魔王”たる存在である。
「主様、楽しみですね!」
隣を歩くこの少女、名をルインと言う。
夢婬魔という魔族の中でも割と少ない部類に入る種族であり、俺がこの世界で初めて出会った娘だ。
今は絶賛“暗殺者”の職業になる為に修行中である。
「しかしルミナス様。アイツには……サタールには気を付けた方が宜しいですよ」
俺の前を歩くこの爽やか執事風金髪長身クソイケメンはルシファルナ。
魔界を1人で守っていた、“魔帝八皇”と呼ばれる超強いエリート8人衆の内の1人で、【傲慢】を司る悪魔、ルシファーの子孫でもある。
職業は“言霊師”である。
そして彼の口から出た「サタール」と言う言葉。
少しだけ解説しておこう。
今は魔帝八皇が1人、【憤怒】を司る戦士のサタールを探して、戦帝国フラウへと向かっているところだ。
転移魔法のお陰で、もう少しで国に到着というところまで来ている。
「サタールって、そんなにヤバい奴なのか? アスモフィの時も思ったが、別にアイツもそんなにヤバくなかったからな。少し疑ってるぞ、俺は」
俺は歩きながらルシファルナに聞く。
「アイツは……マノン以上の戦闘狂で、魔帝八皇一番の古参勢で、物理も魔法もこの世界で一番強い、まさに最強の“鬼”なのですよ」
鬼……種族は“鬼族”か。
やはり、俺のイメージ通りだ。
前に立てた予想もあながち間違ってないかもな。
「それじゃあ……もしサタール様が仲間になるのを拒否してきたら、どうするのですか?」
と、ルインが。
確かに、もし拒否された場合、その後どうなるかは何となく予想ができてしまう。
「アイツなら、戦うでしょうね。『力を示せ!』なんて言ってくるでしょうね」
「多分、俺が戦う事になるよな……」
確かにこの世界に来た頃よりは強くなった。
もうこの世界がゲームなんて思ってもいないし、ステータス以外のゲーム要素もほぼ皆無となってきている。
だからこそ、“現実”として自分自身で生きる道を探さなきゃいけない。
今、俺が生きるためにしなきゃいけないのは……強くなること、だ。
俺は平原を歩いていた足を止め、2人に提案をした。
「2人共、少し手伝ってほしい事がある」
「何ですか? 主様」
「強く、なりたい」
「主様は十分強いですよ?」
「もっとだ。サタールに対抗できるくらいには強くなっておきたい」
サタールの強さがどんなものかはまだ分からないが、戦闘狂と言う位だ。かなり強いのだろう。
今の強さが足りないとは思わないが、経験値の差が違い過ぎる、と思う。
少しでも戦闘経験を積んでおいた方がいいだろう。
「分かりました。それじゃあ我々2人と、ルミナス様1人の2対1で戦いましょう」
「……わかった。もちろん」
と、そこまで言いかけたところだった。
「いいネェ! その話、俺も乗ったゼ!」
その声がしたのは遙か上空。
声の主を確認するべく、俺は空を見上げた。
そしてその直後、俺はその行動を後悔する事になる。
「オラァ! 着地成功だ! ……ァ?」
「おい……早くどけ……」
「おっとっと、わりいな! ほいよっと!」
顔面直撃急行落下。
顔が潰れるかと思ったぞ。
目の前に立つ男は、スラリとした長身イケメン。
イケメン……(憎悪)。
そして分かりやすい特徴がもう一つ。
「鬼……?」
「おう! 俺ァ、鬼族のサタールってんだ! よろしくな魔王!」
「は?」
何だこれは。
アスモフィの時と同じだ。
何故か俺のことを魔王と知っていて、なおかつ都合よく俺のもとへ現れる。
コイツが、魔帝八皇のサタールだと……?
「サタールって、あの?」
「おう、どのサタールか知らねぇが多分それだ!」
「る、ルシファルナ……コイツなのか?」
俺は恐る恐る確認する。
「はい。コイツ、です」
「おっ、ルシファルナじゃねぇか! 達者にしてたか!?」
なんだろう、随分爽やかだ。
顔はイケメン。髪はさっぱり切られている。
額の……眉の部分からは2本の短い角が生えている。
身体には和服を纏い、腰には赤い和傘を刺している。
まさに和装イケメン。
想像してたのはもっとゴツいイメージだったから、むしろありがたいくらいだ。
「あぁ、それでだな。俺っちがここに来た理由は分かるかい?」
「分からないが」
「んなの簡単よ。俺っちを魔王軍の仲間にしてくんな」
あれ、マジか。
やっぱりイメージと違う。
なんかコイツには調子狂わされるな。
「いいのか? こちらとしては願ったり叶ったりだが」
「ああ、いいぜ? なんなら『支配』してくれてもいいしなァ」
スキルのことまで知ってるのか。
一体どこでそんな情報を……?
ま、まあいい。
せっかくの提案だ。
そのまま水に流すわけにはいかないだろう。
「そうか? それじゃお言葉に甘えて……」
「あっ、ちょっと待ちな」
「何だ?」
「一回戦ってみようか? 俺とお前の、サシで」
えぇ……結局そうなるのかよ。
まあ、覚悟はしてたから別に構わないけど。
「ハァ……分かった。ただし俺は弱いぞ?」
「構わねぇさ! ケケ……んじゃ早速始めようか?」
「ああ……勝負開始、だ」




