case.C33 行動指針
そろそろ動き出します。
Cパートも終盤へ―――
「全てが、虚構? それって……。え? 何を言って―――」
「はい。僕から君たちに教えられるのはここまでだよ」
「……は?」
「ふふ、順を追って説明したいところだけどね。あんまりそんな余裕も無いみたいだからさ」
ニルマトリアは、そう言うと振り向いた。
そして右手を上げて、こう一言。
「じゃあね。また顔出すよ。……必ずね」
刹那。
たったそれだけを言い残したニルマトリアはフッ―――と消えてしまった。
「おい、ちょっと待て! ……ってもう遅いか」
突然どうしたのだろうか。
何でいきなり逃げるように消えてしまったんだろう……?
「んだよあのクソジジイ。まあいいや、早いとこ先に進もうぜ」
「あー……そうだな」
マノンにそう言われて、俺は渋々頷いた。
正直、ニルマトリアのさっきの言葉は気になる。
むしろ気にならない訳が無い。
「全てが虚構」。
今はまだ何を言っているか分からないが、その真実、その意味を突き止めるためにも、今は前に進もう。
「ひとまず、今回もあの大きな城を目指す感じで大丈夫か?」
「問題ないと思います、我が主よ」
「さっさと行こうぜェ。あの爺さんのせいで余計な時間食っちまったしよ」
「そうだな。それじゃあ行くか……」
突然の出来事に戸惑い、謎の発言に心残りが出来つつも俺たちは進む。
現在の目標は、この国の真実を暴き出し、ルシファルナの本拠点を突き止めることだ。
(目的だけは、見失わないようにしないとな)
そう心に誓って、俺たちは再び歩き始めた。
■
「よろしかったのですか、ニルマトリア様」
「ああ、これでいいんだよ。―――ナキリ君」
魔王ルミナスのもとから離れ、再び歩き出す彼らを見つめる影が二つ。
一つはさっきまでその場にいた張本人、前魔王ニルマトリア。
そしてもう一つは―――前魔帝八皇暗殺者、ナキリ。
「でも、どうしてこのような事をなさったのですか?」
「いやぁ。ボクは常にロマンを追い求める悪魔だからね。こうしてこの場所で―――ボクが創り上げたこの場所で強くなってくれたら、嬉しいなと思ったんだよ」
「いえ、そういう事を聞いているのではなくて。どうしてこんな場所を創って、それにどうしてそこへ彼らを招いたのですか。まさか、本当にただ彼らを強くするためだけに?」
「そんな訳ないでしょ。って言ってもまあ、目的という目的もある訳じゃ無いんだけどね。しいて言うとすれば、彼らが“双神”と戦うと知った時に、ちょっとだけ助力したくなっちゃってね。それに、こんなところで潰れるようじゃ、まだまだってことになっちゃうもん」
「なるほど。それってつまり―――」
「あーいや、ちょっと待ってね? 冷静になってみても、僕の調べた情報によると、彼らはもう他の国を全て支配しようとしてたんだよ!? 残っているのはこの国だけ。彼らにちょっかい出すのも、ここが最後になっちゃうって訳だよ」
「そうですね」
「だから、彼らに僕たちの力を託せるのはここが最後って訳」
「そうとも限らないと思いますが……」
「いやいや、案外僕も最後だからって厄介なの召喚しちゃったしねぇ……まさか原初の《魔帝八皇》を召喚し始めるとは思わなかったし……」
「あー、ま、そですね」
「まあ、つまりは―――」
「フッ、まとめるとただ助力したいだけですよね。なら最初からそう言えばいいのに。回りくどい言い方しやがって」
「えー……。ひゅ、ひゅ〜キッツいねぇ君は相変わらず」
「これが私ですので」
「ま、それもまた愛嬌って事で」
「クソキモいですよ、その言い方」
「ハハ。まあ、そんな事は置いといてさ。今は取り敢えず、彼らの動向を見守ろうじゃないか。―――ボクの仕掛けた試練を、乗り越えることが出来るかどうかを、さ」
そんな会話を繰り広げる二人の眼下には。
『支配』の力によって生み出された幻影の都市と、その都市を歩く後輩たちの姿がただあるのみだった。
■
「こっち、全敵排除しました!!」
「こっちも全部終わったわよ〜」
気づけば大広間からは“アニキ”たちの影人は居なくなっていた。
俺たちが、全部排除したのだ。
全部片付いた事を互いに確認した俺たちは、一旦近くまで集まった。
「はいお疲れ〜」
そう言って、ガネリアが俺たちに回復系魔法をかけてくれる。
サタールさんの影人につけられた切り傷がすぐに回復した。
「ありがとう」
「いいのよ、気にしなくても」
「それよりも……サタールさんの偽物だけ異様に強かったような……」
「師匠は剣技だけなら神クラスですからね……私も苦労しましたよ」
クサナギさんがうんうんと頷きながら、そう話した。
兎にも角にも、一応全部倒したし、これ以上の敵が出てくる事も無さそうだから今の内に作戦を考えないとな。
「あの、今後について一つ提案があるんですけど……」
「ちょっと待って。先に今の目標を再確認しとかない?」
アスモフィさんがそう言うと、月夜がバッ!と手を上げる。
「はい! では私が確認してもいいですか?」
「ああ、頼んだ」
「はいっ! では―――」
そう言うと月夜が「目標」について話し始める。
「えっと……にぃから聞いた限りだと。今回の目標は、国を支配出来るように下準備をしておくこと……だよね。そして、残る最後の国に選ばれたのが、この《死国ディブリビアゼ》。だけど、なんだか様子がおかしいから進んでみたら、色んな人の偽物に出会って、戦って……今はその真相を突き止めながら進まなきゃ! 一体どうなっちゃうの私たち〜〜」
「え……月夜ちゃん……?」
「あー、始まった。いつもの事なんで気にしないでください……」
目に手も当てられない。
月夜のやつ、こういうあらすじとか作るの大好きな人間だから……一回語りだすと止まらないんだよな……。
先に気づくべきだった……すっかり忘れてたよ……。
「次回、真実! デュエルスタンバイ!」
「デュエ……え……?」
「ふぅ……こんな感じですよね」
大方間違っていないのが腹立つポイントだよな。
何だかやり切った様子の月夜だが、俺はそんな月夜にポカンと頭を叩いた。
「ふぇ……何……?」
「なんでもない、ありがとな月夜」
さて……それにしても振り返ってみてもよく分からないよな。
一体ここで何が起きようとしようとしてるんだ……。
「うーん……まあ目的を忘れたわけじゃないけどさ。支配を進めるって言ってもこの人気の無さじゃ……どうしようも無いと思うんだけど」
「あ、アスモフィさん。その事について提案があったんですけど……」
『あー……ボクにもわかった気がするよ』
そう言うとビッグ・マザーは少し進んで止まった。
そこは、玉座の丁度真裏だ。
「そうそう、そこだ」
『この、謎の穴の中に行くんだね?』
「まあ、それしか無いのかなって」
『ま、それもそうだね。じゃあどうする? 早速行く?』
「ちょ、ちょっと待って、ホントにその穴って大丈夫な穴なの?」
アスモフィさんが焦るようにそう聞いてくる。
確かに、不安要素は多いけど……進まなきゃ話も進まないからな。
「大丈夫かどうか……は分からないです。でも、今はとにかく進むしか無いでしょう」
「で、でも―――」
「―――その必要は無いよ。君たちは先に進まなくていい」
「誰だっ!?」
突然、そう突然だ。
空から声が響いたのは。
「―――僕の事はいい。それよりも、その穴の先には今、とある人物が進んでいてね。君たちが来ると、逆に邪魔になっちゃうんだよ」
「はぁ? 何を言って―――」
「―――いいから。とにかく君たちは早くその場から去ることをおすすめするよ。どうやら、君たちの本拠地も危ないみたいだしね」
「え」
「―――それじゃあ、僕は伝えることは伝えたから。じゃね〜」
そう言い残すと。それっきりその声は聞こえなくなってしまった。
(本拠地……魔王城の事だよな。……それが危ないって……どういうことなんだ? それに、今の声は……?)
『んー……よく分からないけど、どうするの?』
「そう……だな」
こうなると迷うな。
さっきの言葉が本当なら、今すぐ戻ったほうがいいと思うけど……
「今の声……いやいや、まさか……でも……うーん……」
「アスモフィさん……?」
何だか悩んでいる様子のアスモフィさんに声をかける。
すると。
「一旦、帰らない? この事を他のメンバーに相談してみましょう……?」
「そう、ですか? それなら帰りましょうか」
「うん。じゃあ転移しちゃうわね?」
何だかあんまり気乗りのしない様子のアスモフィさんは、小さくそう呟くと、転移魔法を発動させた。
(何が何だか、分からなくなってきたけど……取り敢えず城に戻ってから整理しよう。ラグマリアにも会いたくなってきたしな……)
そんな思いを持ちながら、俺は転移の光の包まれていくのだった。
6/1は活動を開始して丁度1年の日です!
それを記念して、投稿開始を遅らせていた新作を、一周年の日―――6/1から投稿開始したいと思います!
詳細は追ってご連絡します!
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