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case.C29 邂逅失敗

タイトル通りです



「警備が、やけに手薄ですね……」


「ええ。まるで敵の侵入なんか考えていない無防備さだわ」



 難なく城へと侵入した俺たちは、その警備の手薄さに驚いていた。

 と言うか、警備の人はおろか監視カメラのようなセキュリティすら無かったのだ。


 いよいよもってこの国が怪しくなってくる。



『ボクたちの事を誘っているのかな……?』


「はぁ……。でも、我々が今日この国に訪れることを予知できる訳が無いと思いますが……」



 物陰に隠れながら、この現状の考察を始める俺たち。

 ビッグ・マザーのその発言に、クサナギさんが反論した。



(確かに……月夜の『未来予知』みたいなスキルとか装置がない限りは俺たちが“今日”ここに来るなんて予想できないはずだよな……)



「ってことは……」


「……? どうしたの、にぃ」


「いや、もしかするとずっとこういう状況を作り出して俺たちを誘っていたんじゃないかなって」



 俺は一瞬脳内に浮かんだ考えをポロッと呟いた。

 だが、自分で言ってから気づく。そんな可能性がある訳が無いと。


 いくら一国の王とは言え、これだけ広い国なんだ。

 そんな中に住む全国民一人ひとりの行動を操作できる訳が無い。


 それに、俺たちが“今日”ここに来て、そして“国の支配”を目論んでいる事なんて知る由もないはずなんだ。

 それこそ、それを知っている人間が居たら、俺たちの側に内通者が居る、もしくはさっきも考えた通り『未来予知』が出来る力が向こう陣営にもあることの証明になってしまう。



「やっぱ無いですよね……」



 一応俺は、自分で言った言葉を自分で否定しておき、視界を城内の通路へ向ける。

 物陰から顔を出すが、やっぱり人影は見当たらない。



(逆にこの静けさが怖いんだけどなぁ……)



「あの、一つ提案なんだけどさ」



 突然、ガネリアが手を上げながら言った。



「もうこの際だし、考えても仕方が無いならさ。思い切って王が居そうなところまで突っ込んじゃわない? その方が良いような気がしてきたんだけど、どうかしら」


「あー……なるほど」



 もう脳死になってもいいということか。

 確かに、考察も大事だけど、人が居なくて情報も無い以上今は先に進むしかないのかもしれない。



『ボクはいいと思うよ』


「私もいいわよ」


「それなら私も」


「うん! 私も問題ないよ!」



 皆は特に問題も無く、ガネリアの言葉に頷いていた。

 かく言う俺も例外では無く頷く。



「いいよ。とっとと行っちゃおう」


「よし来た! じゃあ速攻で行くわよ!」



 この先に何が待ち構えているのかは分からないけど、今は時間が惜しい。

 どうせ最後の国なんだ。向こうにはどうやら敵意があるみたいだし、それならこっちだってさんざん暴れてやろうじゃないですか。



(かかってこいよ喧嘩上等、だな!)



 そうやって俺は、拳をかち合わせて気合いを入れ直す。



『よし、じゃあ行くよ!』 



 再びビッグ・マザーを先頭にした俺たちのパーティーは、王が居そうな中央の広間を目指して走り始めた。









「んー、何だか呆気なかったよな」


「ンだな。マノンおまえの父親も洗脳できたし」


「おいサタール。洗脳とか人聞きの悪い事を言うなよ。『支配』だ『支配』。お前動けないようにしてやろうか」


「ふぃー怖い怖い。すまんかったよ大将」


「いや冗談だけどよ……それにしても、今俺たちは何をやってるんだ?」



 《魔道王国サルナラ》を出た俺たちは、そこで仲間にした―――いや、仲間に強制的に引き戻したルシファーことルシファルナに聞き出した情報をもとに、ここ、《死国ディブリビアゼ》までやって来ていた。



「我が主よ、今我々がやっているのは―――やっているのは………………あれ? 何なんでしたっけ」


「おいおいお二人さんよォ。もう忘れちまったのかァ?」


「ふふっ、お茶目な主様。今私たちがやってるのは、ルシファルナ……もといルシファーの本拠点の探索でございますよ」


「ああ、そうか。そうだったな」



 行動を開始してからだいぶ時間が経ったから、忘れかけていた。

 そうだ、俺たちは今、ルシファルナを取り戻したことから色々な情報を引き出して、それの真偽を確かめようとしていたんだ。


 まあ、何を一番に重要視していたかと言うと。



「ホントに月夜がここに来るのか?」



 そう、巫女・月夜の事だった。



 しかしお世辞にもこの国は綺麗とは言えない。

 何やら薄気味悪い空間が延々と広がっているようなこの国に、月夜は果たして居るのだろうか。



(って思ってそのまま城に乗り込んだはいいけど、いよいよ怪しいよなぁ……)



「なあ魔王。こういう事って有り得るのか?」


「いや……無いと思うけどな」



 城内には人っ子一人の気配もしなかったのだ。

 警備はおろか、防犯セキュリティの類の物も一切無かった。


 有り得ない。有り得ないだろう。

 恐ろしく無防備すぎる。これじゃあまるで侵入してくださいと言っているようなものじゃないか。



「そんでもってこの装置だよなァ……。なぁ軍師サマよ、こりゃ一体何なんだい?」



 サタールはルシファルナにそう問いかけるが、ルシファルナは何も答えない。



「大将、頼む」


「ああ」



 本当はこういう事はしたくないんだが、俺は『支配』の力の強制力を高め、ルシファルナに無理矢理話させる。



「ァ……グッ……! こ、ここは……我らの、本拠地……! この装置、は……ァッ! 古の存在を、喚び、起こす装置の……! 試作品……ッ! だ!」



(古の存在を喚び起こす……ねぇ)



 ルシファルナがそう言った装置があったのは、城内入って一直線に進んだ通路の先にあった大広間の中だ。

 巨大な玉座に隠れるように設置されていたそれは、ゴォンゴォンと洗濯機のような音を立てて光り、動いていた。



(もしかしてこれってもう、起動してるのか?)



「……ん? 主様、ここ何か変じゃないですか?」


「え? ……あ、本当だ」



 ルインに言われて、そこを見てみると。

 装置のさらに後ろには、人一人が難なく通れそうな穴が隠されていた。



「おい、ルシファルナ。この先には何がある」



 再び『支配』の力を強く込め、話させる。



「こ……こは……っ? 我らの本拠地に、こんな場所は……っ、無かった……!」



(無かった……? じゃあ、何なんだこの穴は……)



「……ッ! 誰かがこの広間にやってきます! 皆さん、一度この穴の中に避難しましょう!」



 ルインは何かを感じ取ったのか、俺たちにそんな指示を出してきた。



「了解だ。皆、さっさと入れ!」



 俺はそれを受けて、皆に繰り返し言う。

 するとサタール・ベルゼリオ・マノン・ルシファルナの順番に、躊躇いも無く穴に飛び込んでいった。


 俺はそれに続く形で穴に飛び込む。



「行くぞ、ルイン」


「はい、主様!」



 最後にルインが穴に飛び込み、俺たちは全員、無事に見つかること無く逃げ出すことに成功したのだ。

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