case.C25 襲来する黒き影
急展開
「なるほどね……それで二人……? は一緒に来ることになった訳ね」
「はい。問題ないですよね?」
俺は、城の近くで待機していたアスモフィさんたちと合流をし、そのまま流れで月夜とビッグ・マザーの事を紹介した。
「それにしても……」
と、アスモフィさんが舌をペロリと出すと。
「月夜ちゃぁぁぁん! 良かったわぁぁぁぁぁ!」
「あ、あはは〜。ご迷惑おかけしました……!」
月夜に抱きついて、まるで犬を育てて入る飼い主かってくらい頬ずりをしていた。
月夜が困っているのが表情からも分かるくらいに。
「それで、この後の話なんですけど……」
俺はそんな二人を横目に、クサナギさんの方を向いてそう言った。
「ええ、どうしましょうかね。残っている国は《死国ディブリビアゼ》と、《魔道王国サルナラ》の二つですが……」
(遂に残り二つまで来たのか……)
そんな風に俺は思う。
もう夜だし、考えてみれば一日で六つの国を回っている時点でもうだいぶおかしい事をしているのに。
まだあと二つも残っている……いや、ポジティブに捉えれば一日で六つの国も攻略できたんだ。
そしてそんな作戦も、あと二つで終わる。
(さあ、ラストスパートだな!)
「それじゃあ、気になるんで《魔道王―――」
『ちょっと待って』
俺が次の行き先を言おうとすると、その言葉を途中でビッグ・マザーが遮ってきたのだ。
「どうした?」
『いや……《魔道王国サルナラ》には、多分だけど“魔王”がいるよ』
「え? アニキが……? 何でそんな事が分かるんだよ」
『えっとね、ボクってば有能な装置だからさ。世界各国に、ボクのちっちゃいバージョンがちょこちょこ設置されてるんだよね。それから気配を感知してるって訳』
ちっちゃいバージョン……小さなビッグ・マザーが世界に点在してるって事だな。
何だよコイツ、めちゃめちゃ有能じゃないか。
「なるほどな……それじゃあ、《魔道王国サルナラ》ってとこには行かなくても……」
「大丈夫じゃないでしょうか。魔王様のチームにはサタール様もいらっしゃいますし、恐らく問題ないかと」
まあ、言われてみればそうだな。
あのチー厶には、アニキだけじゃなくてルインさんにサタールさんにベルゼリオさんも居るし。
しっかり者が多いイメージがあるから多分大丈夫だろう。
「それじゃあ……実質、最後の国ってことになりますね」
「そうですね……」
俺の言葉に、クサナギさんは頷く。
「《死国ディブリビアゼ》……八つの国の中で最も謎が深い国ですね……」
「謎が……深い」
「はい。話を聞く限り、一番謎です。サタール様もそう仰ってしました」
謎、か。
何だか適当な気もするが、そんな事は行ってみないと分からないだろう。
「それじゃあ、行ってみましょうか」
「そうですね。それではアスモフィさ―――」
そう言ってクサナギさんが振り返ると。
「月夜ちゃん月夜ちゃん月夜ちゃぁぁぁぁん…………」
「に、にぃ助けて〜!」
と、過剰なじゃれ合いが始まっていた。
見れば月夜の方はペロペロされたのか、ちょっとだけ頬が濡れていた。
「はぁ……しょうがないか」
そんな様子を見た俺は、月夜を助けるべく歩を進めるのだった。
■
「にぃ……助けてくれて、ありがとね」
抱きつくアスモフィさんをひっぺがして、俺は月夜を逆に抱きかかえてやった。
するとアスモフィさんも流石に目が覚めたのか、「こほん」と咳払いをして、真剣な顔をする。
「一応話は聞こえていたわよ。《死国ディブリビアゼ》に向かうのよね。いいわ、任せなさい」
「え……あ、はい」
アスモフィさんはそう言うと、その場の全員が困惑していると言うのに、気にせず魔法を発動したのだ。
「はい、それじゃあ飛びまーす☆」
そして視界は光に包まれていき―――目を開くとそこは。
「いや……やっぱりあっという間すぎるでしょ……」
―――もう到着していたのだ。《死国ディブリビアゼ》に。
「さ、切り替えてこー!」
(明らかに誤魔化してるじゃん、アスモフィさん)
さっきまでの自分の痴態を挽回すべく、テキパキと行動しているのがすぐに分かった。
そしてそれと同時に―――
―――白夜、この気配。明らかに私たちに向けた敵意よ。
(ああ、分かってる)
俺たちの周囲を取り囲むように放たれている敵意……いや、殺意ともとれるような気配が感じられる。
「どうやら……歓迎ムードでは無さそうですね」
「いやー、これって逆に歓迎ムードなんじゃない?」
この気配に気づいたのか、クサナギさんとガネリアが武器を取り構えた。
「え……? あ、この気配……」
そしてそんな様子を見ていたアスモフィさんもすぐに杖を構えた。
「月夜……まだ戦えるか?」
「うん、問題ないよ!」
俺は抱えていた月夜をその場におろすと、すぐに剣を引き抜いた。
『早速戦闘とはね〜。流石勇者だ!』
そんな事を言いながらビッグ・マザーも戦闘態勢に入る。
と、そんな時だ。
―――フン、勘の良い奴らだ。
「誰だ?! 姿を現せ!」
何処からか声がして、それを誘うようにクサナギさんが問いかける。
すると、目の前には一人の男が舞い降りた。
「フン……魔王の手先共め。いい加減にせよ」
「魔王の手先だと……? 貴様は一体何者なんだ」
クサナギさんが俺たちより一歩前に出て、剣を構えながらそう問う。
「我か? 我は―――」
そこまで言いかけた謎の男の周りに、突然黒い何かが集まり始めた。
「全員、警戒態勢を!」
クサナギさんの指示で、俺たちはその男に集中しながらも周囲の安全も確認する。
すると、その男は言いかけた言葉の続きを、言い放ったのだ。
「―――我は、初代《魔帝八皇》。その筆頭……“暗殺者”のナナシだ。貴様らのその首……刈り取らせもらう!」
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