case.C22 超越
超えるべき力
『ほらほら、どうしたのさ! 早くボクから抜け出してみなよッ!』
「……グァッ…………!」
俺と月夜を掴む手を、さらに強くする。
まるで、手でティッシュを握りつぶすかのように、俺たちは潰されそうになっていた。
「どうにか……しないとッ!」
―――白夜、ここは私に任せてッ!
(ヘル……ッ! 頼む、ここはお前に任せるッ!)
―――任せときなさい!
そう言うと、ヘルは俺の腰に差してある“魔剣レーヴァテイン・改”から冷気を漂わせ始めたのだ。
砂時計の中で砂が零れ落ちるように、俺の剣からは氷の粒が落ちていく。
―――行くわよ……ッ!
(ああ、いつでもいいぞ……っ!)
『ホントにこのままで大丈夫〜っ!? 死んじゃうよ、こっちの子!』
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! いやいやいやいやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「月夜……ッ!」
月夜だけ握る手の強さが上がったのか、月夜の悲鳴はさらに大きくなった。
もうそろそろ、流石の月夜でも保たないだろう。
(頼むぞ……ヘルッ!)
―――“絶対零度”
刹那、大気が凍えた。
『へぇ…………?』
この時、初めてビッグ・マザーに動揺が見れた。
ヘルによって、ビッグ・マザーの俺を掴む腕が凍らされたのだ。
それによって、俺を掴む強さが変わった。
この隙を俺は逃さなかった。
「―――“鬼神炎渦”……ッ!」
『……ァ……ッ!』
ヘルよって氷点下まで下げられた腕の温度に、今度は俺の“鬼神”の炎で一気に熱を与えた。
するとダメージが通ったかどうかは分からないが、温度の急激な変化に驚いたビッグ・マザーは俺と月夜を手放したのだ。
「今だ……ッ!」
その瞬間、俺は震える手で“レーヴァテイン・改”をビッグ・マザーの反対側の手……つまり月夜がいた方向に投げる。
「頼むぞ……ヘルッ!」
刹那、“レーヴァテイン・改”を纏う冷気が濃くなり、それはやがて人の形を作り出した。
「任されたわ……ッ!」
現界したヘルは、そのまま流れるように月夜を回収し、俺の方まで戻ってきた。
「よく……やった!」
「ふふん、もっと褒めてもいいのよ!」
握りつぶされそうになった時のダメージが酷く、まともに動けなかった俺は、咄嗟の思いつきで、
「そうだ……ッ! ―――『神威』!」
神気を解放し、自然治癒力を限界まで引き上げた。
『やってくれたね……ぇ! なかなか力だけはあるようだねッ!』
「危ないっ!」
直後、ビッグ・マザーは自分の腕を俺たちに向けて振りかざした。
それをヘルの言葉によってギリギリで察知し、前に飛んで何とか避ける俺たち。
「よし……!」
『神威』の力で何とか戦えるレベルまでは回復した俺は、次に月夜の様子を確認する。
「月夜は大丈夫か……!?」
「ええ、問題無いわ。どうやらこの子の中で自然に回復が始まってるみたい。多分すぐに意識が戻るはずよ」
「……それなら良かった」
そんなヘルの言葉を聞いて俺が安堵したのもつかの間。
ビッグ・マザーは俺たちへの攻撃をやめなかった。
『もう君たちに余裕は与えないよ……ッ!』
再び腕を振り下ろしてきたビッグ・マザー。
ヘルは月夜を背負っていて抵抗する余裕はあまり無さそうだった。
(だからここは俺が……ッ!)
「―――“鬼神炎斬”ッ!」
“魔剣グラム”に獄炎を纏わせ、それをビッグ・マザーの振り下ろされた腕に打ち当てる。
『へ……ぇ……? そんなに力があるなんてね……ッ!』
俺の小さな腕一つと、ビッグ・マザーの巨大な機械の腕では明らかに重量が違った。
だが、俺がそんな腕を受け止められていたのは完全なスキルの力によるものだ。
『神威』の力と、『神力』の力。
この2つの力が、俺にこの巨大な腕を受け止める力をくれる。
「驚くのは……まだ早いぞッ!」
『……ッ!?』
さらに俺は、そのまま剣を振るう力を最大に込めてビッグ・マザーの腕を振り払った。
さらに『神速』を使い、瞬時にビッグ・マザーの背後に立つ。
『何処に……ッ!』
「ここだッ! “鬼神炎渦”ッ……!!」
そして俺は、一気に獄炎を撃ち放つ。
いくらビッグ・マザーが強かろうが、神をも焦がすこの炎には耐えられないようで。
『ウッ……グゥゥゥゥッ!』
(よし……ッ! ダメージは通っている!)
ダメージが通っているのが確認でき、ビッグ・マザーが怯んだ。
そして、このタイミングで“アイツ”が起きたのだ。
「に……ぃ! 私も、私も戦うよ!」
聞き覚えのあり過ぎたその声は、俺の後ろから力強く放たれていた。
俺は振り返り、その目を見つめる。
「月夜……! 迷惑かけた分、しっかりと働けよ……ッ!?」
「うん、任せて……! さ、久々に兄妹のコンビネーションの復活といこうよ!」
「はっ……勝手なヤツめ。いいよ、やってやろうじゃん!」
俺と月夜は拳を当てがった。
コツンと、小さくなったその拳には、さらに一つの拳が重なった。
「私もいるけど、ごめんなさいね」
「ヘル……。気にしなくていいぞ、三人でアイツを倒そう……!」
「うん、そうだよ!」
「二人とも……ありがと」
(さあ、こっちの準備は大方済んだぞ……ッ! 後はテメェを倒すだけだ……ッ!)
『クソ……まさかここまでやられるなんて……! だけど、まだ“試練”は終わらないよ……ッ! ボクが、負けを認めるまではねッ!』
「いいぜ、かかってこいよ……! こっからは俺たちが全力でお前の相手をしてやるからよ……ッ!」
『それは、こっちのセリフだけどね……ぇっ!』
(さあ、第2ラウンドを始めようか……ッ!)
「―――『魔剣現界』」
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