case.C11 偽神威
「全力……解放だッ!」
『覚醒』によって俺が変化したのは鬼神。
これによってパワーとスピードが桁違いに上がったはずだ。
そして『神威』は解放済みだし、『神力』や『神速』を常時発動にした。
ここからは、本気で行く。
手加減は、無しだッ!
「では……行くぞッ!」
そう言うとアルジャイル王は再び視界から消える。
と思った刹那。
「正面から……ッ!?」
消えたはずのアルジャイル王は、何のひねりも無く正面から現れたのだ。
だが、スピードは俺と同等みたいで、動きは全然通常の速度に見えている。
(大丈夫、落ち着いていなせば―――)
そう思って剣を受け止めようと、剣を振るった俺。
しかし、その剣は。
「―――“蜃気楼”」
届くことは無かった。
「ウグァァァァッ!」
「“瞬き”」
間髪入れずにこちらへ斬りかかるアルジャイル王。
俺は王を見ながら、何とか震える手、震える声で魔法を放つ。
「“氷壁”……ッ!」
ガキガキガキッ!と音を立てて俺の正面に氷の壁掛け生まれる。
「判断力はそこそこ……と言ったところか」
「そりゃ……どーも」
一瞬だけ出来た隙を突いて、俺はスキル『再生』を使い受けた傷を回復していく。
さらにスキル『気配感知』を使って、氷壁の向こうにまだアルジャイル王が居るかどうかを確認した。
するとどうやら、まだ氷壁の向こうで悩んでいるみたいだ。
「ふむ……中々硬い壁のようだが。それならば……“剛斬”ッ!」
かと思えば。
そんな声が聞こえてきて、氷壁は音を立てて崩れ始めた。
―――そんなっ! 神の力を全力で練り込んである壁を一撃で……ッ!?
(落ち着けヘル。これも想定内だ……!)
「流石に、もう驚かなくなりましたよ」
「ほほ……そりゃ良かった。儂も、少し本気を出しすぎて疲れてきた頃だったんだ。一度、小話でも挟んで休憩を―――」
(させるか。俺は、アンタが使ったスキルを聞き逃さなかった。『覚醒』……恐らく、俺と全く同じスキルだろう。それなら、油断は一切しちゃ駄目だ……)
全てフェイクに聞こえるくらい、疑わなきゃ駄目だ。
「“剣王”ッ!」
「そう上手くは絆されないかッ!」
ファンネル状に剣を召喚し、アルジャイル王を襲わせた。
「『飛翔』!」
さらにその隙に俺は『飛翔』で空へ飛び上がり。
「『剣王』……『魔剣現界』ッ!」
続けてもう一度魔剣を生み出す準備に入った。
「その剣は……させるかッ!」
俺のファンネル剣を一本の刀で華麗にいなすアルジャイル王は、再びあの魔法を使った。
「“浮遊禁止”ッ!」
その魔法によって、“俺”は地面へと舞い戻る。
しかし、天空ではファンネルたちが次々と魔剣へと変化している。
「な……あれはッ!」
どうやら空中に固定された進化する剣に目を取られて、驚いている様子だ。
そんな隙を、俺は見逃さない。
「余所見すんなよ……“飛剣”ッ!」
「ぬぐぁぁぁぁぁぁっ!!」
一瞬の隙をついた俺の斬撃は、見事アルジャイル王を傷つけることに成功した。
直後。
『うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』
という観客の歓声が響き渡る。
今まで防戦一方でやられっぱなしだった俺が一矢報いて、盛り上がったのだろう。
悪い気分じゃない。
というかむしろ……あはは。
(嬉しいものだな……こういうのって)
「……今のは、儂の油断だが……まだ、最後の本気を儂は出してないからな……ッ!?」
「……最後の、本気だと……?」
「『覚醒』は、儂の昔の名残り。ここから想像できるヤツは、想像できる力だろうな。
―――少年の使った『神威』……儂も使えると言ったら?」
(『覚醒』が、昔の名残りだと? それに……『神威』を……だと?)
確か、話を聞く限りだと『神威』というスキルは本来《十二神将》に与えられる力で、例外として《十二神将》の力を得た者や、元《十二神将》として活躍していた神が持っていた物をそのまま受け継いだりするパターンしか無いらしい。
そして今、アルジャイル王は『覚醒』が昔の名残りだと言った。
『覚醒』だって、ヘルに聞いた限りでは、神の力を持つ者だけが得ることの出来るスキルだって言って……た…………
「だいぶ力をセーブしたつもりだったんだがな」
(力を、セーブした……?)
まさか。
いや、有り得ない。
「儂の神気も衰えてしまったな」
まさか……。
そんな、まさか。
「これが、最後の力だ。受けてみよ……ッ!」
直後、アルジャイル王を包むオーラが目視できるレベルまで増え。
金色のオーラが、やがてアルジャイル王を完全に纏った。
「―――『偽神威』」
(……ッ!?)
―――神威……そんな、まさか……ッ!?
刹那にして。
場を包んでいた怪しげな空気は、一気にその濃度を増していく。
割とヨボヨボとしていたアルジャイル王の体は、みるみるうちに変化していき、その体つきは若かりし頃を想像させる肉体だった。
筋肉質の体に、伸びた背丈。
「あれは……あの頃の王様じゃないかッ!」
「王様ー! 頑張ってくれー!」
「勇者なんかに負けるなー!」
観客はその姿に、どうやら思い出すものがあったらしく、一気に歓声は広がっていった。
「これが、儂の本気の姿。正真正銘、最後の力だ」
「まさか、貴方が神の力を有した人間だったなんて……!」
「さあ、これでいよいよ王手じゃ。敗北の準備を早めに済ませておくといいぞ」
そう言って、余裕そうにフットワークを見せるアルジャイル王。
(こりゃ……いよいよ俺も使わざるを得なくなってきたか……)
―――そ、それじゃあ……!
(……ああ。俺“ら”も、本気を出すとしようか)
―――ふ、ふふん……! 任せなさい。ここからが真の戦いよ……ッ!
(ああ、行こうか。どこまでも、高みへ―――)
「さあ、来いッ!」
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来週は、予約投稿かお休みかのどちらかがあると思いますがご容赦くださいませ…




