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case.13 もう一度あの日々を

※リガーテ視点。

 あれは、1年前の事だ。


 僕と父さんは、2人で居なくなってしまった母さんを探して旅に出た。


 母さんは、僕が物心つく前から居なくて、ずっと男手一つで育てられてきた。


 だから、父さんだけいればいいと思ってたし、僕は父さんがとても大好きだった。


 父さんは、“竜王”なんて呼ばれた最強の竜人で、僕はそんな父さんにずっと憧れていた。


 毎日のように稽古をつけてもらっていたし、竜人族トールの最大の特徴である『竜化』も使えるように、特訓してもらっていた。


 恥ずかしい話だが、お風呂の時も、ましてやトイレの時までもが、僕と父さんの時間だった。

 ……まあ、トイレに関してはさすがに扉の前にいてもらってたけど。


 それでもずっとずっと一緒に居たんだ。


 それなのに、急に父さんは「母さんを探しに行く」なんて言って旅に出る準備を始めた。


 僕は怒った。「母さんなんかいらない。父さんだけいればいいんだ」って。


 でも父さんは「俺にはアイツが必要なんだ」って言って聞かなかった。


 悔しいから僕は父さんについていってやった。


 街や村を訪れては、母さんについて聞き込みをした。


 どうやら母さんは、かつて魔族のトップ、“魔帝八皇”のうちの1人だったらしく、外界では大罪人としてその名前が知れ渡っているらしい。


 僕は母さんの名前を聞き出そうとしたが、父さんまで、みんな口を揃えて「お前は知らない方がいい」なんて言う。


 何とか盗み聞けたのは、「魔帝八皇の弓使い」であること。名前は1ミリも聞けたことはない。


 それが、今からちょうど約1年前の出来事。


 あの日、僕たち家族が引き離された日に、父さんは言った。


 「お前は竜魔族イーヴィルだ。いいか、竜人族トールと魔族、どちらとも良好な関係を築け! そしたら俺とも、そして母さんとも会える!」と。


 その日から僕は、竜人族と魔族を見下す奴らを許さないようにした。


 そしていつの日か、魔王に……龍王に……母さんに……何よりも父さんに会えるのを期待していた。



 それが今、こんな形で出会う事になるなんて。



『リガーテェ!リガーテェ! コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスゥァァァァァァァァァァァァァァ!』



「父さん。目を……覚ましてくれ!」


 剣を引き抜く。



 僕の職業ジョブは騎士。


 高い防御力と、高火力の反撃カウンターが得意な職。


 なら、父さんの攻撃を何度でも耐えてみせる。

 そして、疲れたところで反撃する。


 今の僕には、これしか手段がない。



「父さん、行くよ。“盾投シールドスロー”!」


 少ない魔力で、魔力の盾を生み出し、それを高速で投擲する。

 ブーメランのような形で円を描き、リガルテの裏へと飛んでいく。



『グガァァァ! ガァァァァァッ!』


 怒りに身を任せ、その巨体で突進してくるリガルテ。


 僕はその足元を狙い、剣を凪いだ。



「“地平”」


 低い姿勢から真っ直ぐ水平に切る剣技。


 それがリガルテの左側の脚を襲う。



「父さん、お願いだから目を……」


『グァァオ!』


「ハッ……!?」



 後ろを振り向いた時、リガルテはこちらを向いて牙を出していた。



「へ……?」



 死を、覚悟した。


 気づくのが遅かった……。


 父さんに、殺される……。


 ダメだ……。


 もう……!



「諦めるなリガーテ。“招雷しょうらい”!」


 諦めかけた時、僕の周りを雷が襲う。



『グギャァァァァァァァ!』


「吹き飛びなさい! “暴風”!」


 今度はリガルテを遙か上空へと吹き飛ばす風の魔法。



『グァァァァァァァァ!』


「おっしゃ! おいそこの騎士! 行け! “爆☆速”!」


 そして最後のこの声が聞こえた直後、僕の身体はとても軽くなる。まるで飛べそうなくらいに。


 これをやったのは……


「魔王殿……! それに魔帝八皇の皆さんも! どうもありがとうございます!」


「フッ、構わん。それよりも早く行け!」


 僕は飛んだ。


 軽く飛んだつもりが、リガルテを飛び越すくらいには飛んでしまう。



「うおぉぉぉお! 帰ってきてくれ! 父さん!」


 僕は、剣を振り下ろした。


 攻撃はリガルテの頭へと当たる。



『グォォォォオオォォォ!』


 リガルテは咆哮と共に倒れてしまう。


 恐らく、気絶したのだろう。



「父さん……」


 目が覚めたら一発ぶん殴ってやるからな……!



 そう言う僕の目からは、涙が溢れていた。

「おかえり」って、言えるように。

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