case.C9 見えざる刃
種も仕掛けもありません。
後日。
それは天から知らされた。
『緊急。ムウラ王、奇跡の帰還! 勇者とのエキシビションマッチ開催決定!』
そんな内容の書かれたビラが、空から沢山降ってきたのだ。
まあ……そんな自然現象ある訳もなく。
当然それは、俺たちの自作自演だ。
アスモフィさんが書いたビラを、俺たちが何枚も何枚もコピーして、そしてそれを空からガネリアが振りまいてくれているのだ。
俺はそんな様子を、この試合会場となる少し開けた住宅街……の廃墟となっている場所で見ていた。
目の前には、アルジャイル王が静かに佇んでいる。
「―――儂は手を抜かない。一人の戦士として。一人の王として、本気を出す」
少しずつ、観客が増えていく。
そんな中、アルジャイル王は言葉を続ける。
「こうなってしまったからには、民に儂の勇姿を見せつけようと思ってな。だから、少年も全力でかかってきなさい」
まるで、武術の師範のように。
静かに、だけどそれでも殺気は隠さず。
「分かりました。俺は、手を抜くことはしませんよ」
そんな誠意に精いっぱいでそう答えた。
俺も、こうなってしまったからには最初っから本気で戦おうと思う。
「これでも、国一番の最強戦士よりも儂は強かったんじゃよ?」
「それは昔の話ですよね……?」
自慢げにそう語るアルジャイル王に、俺は疑問と煽りを含めた言葉を返した。
すると王は、
「フッ……。儂は、今でもこの体は鈍っていないと思うがな」
そういうアルジャイル王だが、流石に体は衰えてはいるはずだ。それは見ただけで分かる。
若かりし頃の力は、もう出ないだろう。
それでも、ここまで豪語するとは……。
油断、出来なさそうだな。
「ホホ……だいぶ観客も増えてきたようじゃな」
そう言われて、俺は周囲を見回した。
すると、確かに言葉通り戦闘に巻き込まれないように離れた場所ではあるが、確かに人は集まってきていた。
一応、アスモフィさんの魔法で防御結界は張ってあるから、指定されたエリアから抜け出すことも出来なければ、逆に侵入することもできないそうだ。
バトルフィールドは普通に廃墟となった住宅地。
マンションのような高層の建物も少しあり、身を隠す場所も多く存在しているフィールドだった。
「そろそろ、始めますか?」
俺はアルジャイル王に向き直ってそう聞く。
「そうじゃな。そろそろ、始めるとしようか」
細い目をアルジャイル王は見開いて、俺を見つめた。
その瞳にはやはり、殺意が籠もっていた。
俺には負けないという、強い意志を感じる。
「―――それでは」
どこからともなく、クサナギさんの声が響く。
俺以外の皆は、何処かで俺たちの戦いを見守っているらしいが……。
「―――これより、アルジャイル・フラウと皇 白夜のエキシビションマッチを開始致します! ルールは単純明快! どちらかが戦闘不能になるか、もしくは降参するまで試合は続行と致します! 当然殺しは無しです!」
簡単なルール説明を、観客に向けてするクサナギさん。
歓声からは「面白そうじゃねぇか」とか、「あの王様がねぇ?」みたいな面白がる声が聞こえてくる。
狙いは、こういう奴らの欲を満たして、アルジャイル王を王として認めさせる事だ。
俺は、その立役者になればいい。
ただ、それだけだ。
(ヘル、準備はいいか?)
俺は内に眠る吸血鬼神ヘルにそう問う。
―――問題無いわ。ただ、ルール的にも現界するのはマズいでしょうから、今回は力を貸すだけにするわね。
(ああ、それで構わない。ありがとな)
―――お礼を言われるほどでも無いわよ。さ、それよりも集中しなさい。前よ、前。
ヘルにそう言われて、俺は前を向く。
すると、クサナギさんのアナウンスがクライマックスを迎えようとしていた。
「―――さあ、それではいよいよ試合開始です。フィールド上をふんだんに使った、勇者と元国王のぶつかり合い。とくとご覧あれッ!」
―――ごくり。
そんな、つばを飲み込む音だけが響く。
「―――レディ……?」
魔剣グラムに手をかける。
いつでも、戦える状態になった。
(さあ、来い……ッ! アルジャイル王!)
「―――ファイトッ!!!」
試合が始まった。
さあ、まずは相手の出方を―――
―――カチッ……。
「う……グァァァァァァァァッ!?」
刹那にして、飛び散る鮮血。
それは誰の?
……それは、俺のだ。
―――白夜、大丈夫ッ!?
「ああ……問題無―――」
何とか立ち上がろうとした時。
―――カチッ……。
「ウァァァァァァァァァァァッ!!!」
再び舞う鮮血。
何が、起きているのか。
―――白夜ッ!? 何……何が起きているのッ!?
「俺にも、分かんねぇ……よ」
俺は倒れながらそう呟く。
薄れかかる視界の中、俺は視線を何とか正面に向けて、そこに居るアルジャイル王を見る。
(動いていない……のか……ッ!?)
そんな事実に驚愕しながらも、まだ諦めちゃいけないと俺は歯を食いしばって気絶するのを堪えた。
失った血は戻ってこない。
だが、俺にはまだ力がある。
こんなところで諦めてたまるか。
「―――『神威』」
震える声でそう呟く俺。
刹那、体中を金色のオーラが巡り始める。
力が漲ってくるのが、目で、心で、脳で分かる。
「ほう……?」
俺はゆっくりと立ち上がり魔剣グラムを引き抜いて構えた。
「儂の見えざる刃で倒れなかったのは、君が初めてじゃよ。―――少年」
「見えざる刃……ね。そりゃ……対処出きなさそうな名前だ」
皮肉を言うようにそう呟く俺。
だが、まだ戦いは終わっちゃいない。
何ならむしろ、始まったばかりなのだ。
さあ、ここから盛り上げようじゃないか。
俺と、アンタの本気。
どちらの力が上か……
「勝負だ……アルジャイル王ッ!」
「きたまえ、白夜少年。こてんぱんに、返り討ちにしてやろう!」
来週から投稿形態変わるかもしれません……
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