case.C3 威圧の眼光
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嘘と嘘が混じり合う日。
過度な嘘は犯罪です。気をつけましょうね?
「おーい、ガネリア殿〜。失礼するぞ〜」
コンコンコンとリズム良く部屋の扉をノックしたイクサ。
その場所は、城の一階。
さらにその奥の、物置のような場所だった。
こんな所に、神様が……?
「入るぞ」
返事を聞かずして、ガチャッと扉を開けたイクサ。
俺たちも彼の後に続いて部屋に入る。
すると目に飛び込んできたのは。
「あーもう忙しい忙しいッ! 何でこんな面倒くさい仕事押し付けてきたのよあの魔王はッ!」
そう叫びながら書類を高速で仕分けていく女性がいた。
あれが……
「ガネリア殿。進捗はどうだ?」
「あぁッ!? って……ああ、イクサね! 煩いからあっち行って―――」
そう言って彼女は振り返った。
そこで、俺たちの目は合った。
「あ……」
「どうも」
「貴方たちは…………」
少しだけバツが悪そうに、頭をかきながら彼女は再び元の態勢に戻った。
「な、何の用かしら? ちょっと私は今忙しいのだけれど」
「……えっと、今は何をしているんですか?」
再び高速で書類を仕分けていく彼女に、俺はそう質問した。
一体、何の書類なのだろうか。
「ああ、これ? これは、この国から魔王領に引っ越したいって人の個人情報よ。不備があるといけないし、こんな人数を移住させたらこの国が崩壊しちゃうから、その仕分けと選別を今はしてるのよ」
「移住……仕分けと、選別……?」
いや、それにしてはこの机の上に山積みになった書類の量が多過ぎるような気がするけど……。
まさか、この国の全員が……とか無いよな……?
「まさか、シュデンの国民ほぼ全員が移住したいだなんて言い出した時はびっくりしたわよ」
「え……っ?」
マジで全員なのかよ……。
アニキ、この国で一体何をしたんだ……。
「だから、この書類の……国民のほんの一握りを移住させる為の選別をしてるって訳。分かったかしら?」
「なるほど……」
こりゃしばらくは忙しそうだな、この神様。
アニキからは、連れて帰れそうだったらそのまま連れてけって言ってたけど、無理そうだったら放置でオーケーって言われてるから、放置しておこう。
「それじゃあ、確認出来たので俺たちはそろそろ―――」
「―――は?」
彼女の首がグリンと回ってきた。
こちらを、視線だけで掴んで離さない。
「白夜。多分逃げられないですよ、もう」
「お姉ちゃんも今何となくこの先の展開が予想できたわ」
諦めたように俺の両肩に手を置くアスモフィさんとクサナギさん。
イクサやアマクサの二人も、苦笑いしてこちらを見ていた。
「邪魔したんだから、もちろん手伝ってくれるわよね……ェ?」
言葉に含まれる邪気や怒気が異常だ。
俺たちの精神までもを掴んで離さないつもりらしい。
「……はい」
そんな彼女の威圧的な言葉に、俺たちは成す術無く頭を垂れるのみだった。
■
「はい、それじゃあ移住条件は今言った通りだから。それに満たしている人はこっち、満たしていない人はこっちの分別してね」
そう言って底が深いダンボール箱を二つずつ渡してきたガネリア。
「半分くらいは私一人でもう終わらせてるから、残り半分、4人で分担して頑張りましょうね」
(その半分が異常に多いんだけどな……)
改めてこの国が大国なんだと実感させられる書類の量を目の前に、俺たちはため息を付きながら言われた通りに仕分けを始めた。
書類一枚一枚に目を通していくと、それには全て付箋が貼られていた。
書類の不備や、補足がその付箋には書かれていたのだ。
「ねぇガネリア? まさかとは思うけどこの付箋全部一人で……?」
「え? ええ、そうよ。住民に聞いて、確認したのよ」
なんて事だ。
この量を、一人で聞いて付箋に纏めて貼っつけて、その上で仕分けしていたと言うのか……!?
そんなの、社畜にも程があるぞ……。
流石に、神様と言えども頭がパンクしてしまうんじゃないか?
「私は群れを率いる神だからね。群れのメンバー一人一人の情報は完璧に把握しているのよ。……してなきゃ、いけないのよ。だから、把握する為に動いただけ。分かる?」
「でも、無理し過ぎは良くないよ……?」
「煩いわね。神として、その力を存分に使ってるだけなんだから、いいじゃない」
「でも……」
さっき俺が門兵さんとやってたみたいな論争をガネリアとアスモフィさんはしていた。
それを聞きながら俺は書類を手早く仕分けていく。
案外、慣れてくると簡単に仕分けられるな、コレ。
「こちらは終わりましたよ」
そう言って立ち上がったのはクサナギさんだ。
「えっ、もう終わったんですか?」
「はい。こういう作業的なことは私好きなんですよね。よければ、白夜殿のもお手伝いしますよ」
「あ、じゃあお願いしま―――」
俺が「す」と言い切る前に、クサナギさんは俺のところに来て、書類の仕分けを始めた。
高速、というより超速で書類を仕分けるクサナギさん。
もはや、神業だ。
世界大会があったら優勝できるレベルだぞこの速さ。
と……まあこんな感じで俺たちはガネリアの手伝いを進めていったのだ。
■
「はい、これで終了ね。ありがとう」
大量にあった書類が、今や一つの小さな封筒に収まるくらいの量に収まっていた。
これが、今回の移住者か……。
「はい、イクサ。これで私の任務は終了よ」
「ガネリア殿、感謝する。後は我々にお任せを」
「言われなくてもお任せするわ」
イクサに書類を入れた封筒を渡すガネリア。
彼女は、あくびをしながら俺たちの方へとやって来た。
「ふぁ〜あ。それで? 私は貴方たちについていっていいのかしら」
「え?」
「だから、私の次の仕事よ。貴方たちについていけばいいのかしら?」
「あ、ああ……そうだな……」
仕事が終わった以上、城に帰ってもらうか俺たちについてきてもらうかの二択になるが……
「そうね、お姉ちゃんが貴女を癒やしてあげるから、ついてきて。何だか貴女はほっとけないわ……」
「あ、そう? じゃあお言葉に甘えてついていくわ」
……俺が介入する余地もなく、ガネリアの同行が決まった。
まあ、別にいいんだけどね?
「それで、白夜殿。次は何処へ向かうのですか?」
クサナギさんがそう俺に聞いてくる。
次、か。
候補としては《戦帝国フラウ》か《聖皇国ラーゼ》の二択だな。
「アスモフィさん、クサナギさん。次はフラウかラーゼに行きたいと思うんですけど、どっちにします?」
正直、話を聞いた限りだと難易度的にはどっちも同じだと思う。
それならどっちでもいいんだよな。
「どうしようかしら……私は別に後でもいいけど」
「えっと……それじゃあフラウでもいいですか?」
「了解です」
「私も問題無いわ〜」
クサナギさんがフラウが良いと言ったので、全員がそれに同意する。
理由は聞かないが、これで行き先は決まった。
さあ、時間はあまり無いし、サクサクと進もうか。
「それじゃあさっさと転移しちゃうわよ〜」
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