case.B6 天使達の楽園
天使編完結。
次回からはついに長丁場のCパート開始です!
「『絶対―――』」
メタリアが大剣を振り上げるタイミングで、私たちは動き出した。
ラグマリアが右、私が左に展開する。
さらに私は、
「『絶対守護』ッ!!」
「『―――破壊』ッ!!」
メタリアが大剣を振り下ろすタイミングを狙って障壁を展開する。
ガキィィィンッ……と障壁と大剣はぶつかり合い、矛盾した二つのスキルは反発し合う。
「“天雷”ッ!」
私とメタリアが交戦している間にメタリアの背後を取ったラグマリアは、再び“天雷”で勝負を決めにかかる。
だが……
「同じ作戦は、私には通用しないッ!!」
雷が当たる寸前、メタリアは消えた。
かと思えば今度は、
「『絶対破壊』ッ!!!」
「当たらないわよ……ッ!!」
私の背後に奇襲で現れて攻撃を仕掛けてくる。
しかし、体に蓄積したダメージが思いの外効いているのか、メタリアの攻撃速度はだんだんと落ちてきていて、奇襲でもかわせてしまった。
スキル、『挑発』のお陰でラグマリアが狙われる心配はあまり無い。
攻撃も私がかわせてしまうとなるともうメタリアには―――
(勝ち目は、無い)
「ウゥッ…………グ……ァ……」
だいぶ苦しそうだ。
一体どれだけの鞭を自分にかけていたのだろうか。
『絶対』のスキルは、使った本人に絶大なダメージがいく諸刃のスキルだ。
使えば使うだけ、慣れれば慣れるだけダメージは無くなり、今となっては私やラフィーナはもう代償なんて無いも同然なのだが……メタリアやその他の子たちは違う。
いや、多少は使い慣れてるだろう。
でも、それでも私より使っていないのは確実だ。
だからこそ、多少なりともダメージは受けているはず。
それに、『身体強化』の力もあの様子だと限界以上まで引き上げているに違いない。
あのバーサーカーモードがこれ以上続くと、本当に危うい可能性がある。
そろそろ本気で止めにかからないとメタリアが、死に至る可能性が―――
「―――『絶対……」
これ以上、技を撃たせるか。
「“麻痺電撃”ッ!」
「ウァァァァァァァァァッ!」
右手に電気を纏わせ、それをそのままメタリアの腹に流し込んだ。
麻痺電流はメタリアの全身を駆け巡り、足から手から、全ての神経を一瞬だけ麻痺させる。
「動か……なッ―――」
「ラグマリアッ!」
そして私は最後の指示を出す。
背後から再び近づいていたラグマリアが、一気に高くまで飛び上がった。
「同じ戦士として、尊敬してます。メタリア姉さま」
ラグマリアは金色に輝く光の剣を、天高く掲げた。
「そして、だからこそ……貴女を超えたいと思っていた!」
「うっ……ごけ…………ッ!」
体を無理に起こそうとするメタリアだが、一度麻痺した感覚は、そう簡単には戻ってこない。
痺れ自体は消えただろうが、復帰までには時間がかかるだろう。
「これで、決めます」
そうラグマリアが呟いた直後、天から光が落ちる。
ラグマリアの掲げる金色の剣先に目掛けて。
「―――“天雷神剣”」
それは、輝く一閃の刃。
天から振り下ろされたのは、大地を両断する一筋の煌めき。
そんな煌めきの中に、メタリアは溶けて消えていった。
『メタリア、リタイアよ……。これにより、ミカエラチームの勝利とします』
そんなラグエル様のアナウンスと共に、私たちは。
「やったわ! ラグマリア!!」
「はい! やりましたねミカエラ姉さま!!」
天高々とハイタッチを交わすのだった。
■
「私たちの完全敗北ね……まさか奇襲に奇襲を重ねるとは思わなかったわ」
戦いが終わった後にウリエナがそうやって話しかけてきた。
そんなウリエナや他の仲間たちに「お疲れ様」と声をかけながら話す。
「そうね。でも、私だって最初っからあんなにぶっ飛ばしてくるとは思わなかったわよ」
「地形を変えたら戦いやすいと思った。でも負けた」
ガブリエラはそう呟いて肩を落とす。
そんな時、ラグエル様がやって来た。
「さてと。今回の勝負の結果だけど」
全員の視線がラグエル様に集まる。
「まず順位変動についてだけど……これはごめんなさいね。今回の決闘での順位変動は無しよ」
「えっ……」
ラグマリアはもちろん、ラージエリも少し驚いた表情になっていた。
その理由をラグエル様は話した。
「まあ、主な理由としては……そうね……あんまり活躍出来てなかったから……?」
「そう……ですか」
ラグエル様からそう見えたのだったら、恐らくそうなのだろう。
この評価は、申し訳ないけど妥当なところだと思う。
勝っただけじゃ順位が動かないのは、いつもの事だし。
やっぱり決闘は、タイマンに限るわね。
「そして、話は変わって……勝者チームの要求を敗者チームは呑むことになるけど……それは大丈夫かしら?」
敗者チームの面々にそう問うラグエル様。
するとメタリアは一歩だけ前に歩み出た。
「問題無いわ。もう、吹っ切れたし」
「え……? でも、いいの……?」
「吹っ切れた」と言ったメタリアに驚いて、私はつい聞き返してしまう。
すると、メタリア以外のメンバーも私の方へと歩み寄ってきてこう言った。
「私たちはそういう勝負ごとで決まった約束は必ず守るっていう約束でしょう?」
「うん、私たちの負けは負け。それなら姉さまに従うだけ」
「……私は、認めたく無いですけど……。まあ、お姉様たちがそう言うなら……?」
「ね? 勝ったんだったらしっかりしなさいよ、ミカエラ姉さま」
皆がそうやって私の事を励ますように言ってくれた。
……今でも、少し信じられない。
こんなに皆が一つになった事なんて、今まで数回しかなかったから……。
「み……んな……」
私の頬を、一筋の涙が伝うのが分かった。
「ね、姉さま!?」
「どうした」
「違うの……違うの……! 嬉しくて、ね……?」
安心したのか、皆と会えたのが嬉しいのか涙が溢れて止まらなくなってしまった。
それでも、何だか笑えてきて。
「あはははははっ!」
ようやく訪れた天使たちの平和に、他のメンバーたちも笑みを零すのだった。
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