case.B5 純潔の狂戦士
「第一位、撃破―――」
「メタリア、お疲れ様。これで残りはかわいい妹たちを脅すだけで十分ね」
「うん、よくやった。メタリア、えらい」
三人は勝利を確信していた。
相手チームの脅威となるのはたった一人、《天帝八聖》が誇る屈指の第一席、ミカエラのみだったが、そのミカエラがたった今こうして散っていったのだ。
メタリアは、ミカエラの事を殺しはしていない。
しかし、斬られれば一撃で気絶するような箇所を狙って大剣を振り落としたから、大丈夫だと思っていた。
「残りも、早く殲滅しましょう」
「殺さない程度に、ね?」
メタリアとウリエナは自信に満ちた声でそう言葉を交わす。
残りの戦力では、もう私たちは超えられないと。
自信満々に。
「―――“天輪連撃”」
しかし、彼女たちも諦めていなかった。
「後ろ……」
「私が守るッ! ―――『絶対守護』ッ!!」
刹那、透明な障壁が三人を囲んだ。
そこに、光の輪上の刃が突き刺さる。
「やっぱり、ウリエナ姉さま相手に攻撃は通じないですね……」
木陰から現れたのはラージエリだった。
「奇襲が失敗したからって、そうノコノコとやって来て良かったのかしら!?」
「それはお前たちの負けを意味する」
「これはもう、私たちの完全勝利。ぶい」
三人はまだ、余裕に、自信に満ちた声でそう言う。
油断は、命取りになるとも知らずに。
「でも、私ばっかりに気を取られてていいんですか?」
「どういう事?」
ラージエリの問いに、ウリエナは素で疑問を返した。
するとそこに、また新たな声が響く。
「ちょちょちょぉぉぉぉッ!! 無理無理無理、やっぱり私は戦いなんて無理なのぉぉぉぉ!!!」
「これで……終わりよッ!」
ガスン、という鈍い音が響き、そこには一人の少女が現れて、倒れた。
「ダルフィーネ……貴女―――」
『ダルフィーネ、リタイアよ。これ以上の戦闘は不可能と判断するわ』
ラグエル様のアナウンスが入り、ダルフィーネのリタイアが確認される。
「それにしても、まさか貴女が殺るなんてね」
「うふふ、これが私……よ」
ダルフィーネを仕留めた人物。
それは、ラフィーナだった。
木陰から姿を現したラージエリもは、水で出来た鋭い刃―――剣でダルフィーネを刺したのだと思われるような武器を持っていた。
「それにしても、リタイアか……」
「ってことは、ミカエラ姉さまも、リタイアだよね」
ガブリエラのその言葉に、一瞬誰もが疑問を持たなかった。
ラフィーナとラージエリは、全てを分かった上で行動していた。
(さあ、ここからが仕上げの時間よ)
「……ッ!?」
「違う、姉さまはまだ―――」
「―――もう遅いわよ」
敵陣中央からの。
相手が油断しきった時の。
―――完璧な、奇襲。
「“殲滅の光波動”」
背後から、完璧な連撃を叩き込む。
それだけじゃない。自分を中心として巻き込んだ大爆発を起こすのだ。
これを喰らえばただじゃ済まないだろう。
しかし、たった数撃で落とせるほどヤワな相手でも無い。
だから、この戦いを決めるのは私じゃない。
「クッ……まさか、姉さまがまだ戦えるだなんて……ッ!」
「不覚……」
「ぶぅ……」
案の定三人はまだ立ち上がった。
脅威の耐久力だ。
だが、それももう崩れ去る時。
(悪いわね。負ける訳には、いかないのよ)
「攻めはもうお終いみたいですね……それでは今度は仕返しに―――」
「―――“天雷”」
刹那、巨大な落雷が三人を包む。
痛く、激しく包み込む。
「「「キャァァァァァァァァァァッ!!」」」
最後の、奇襲。
最初からラグマリアだけを隠して作戦を立てていた。
相手は必ず私を狙ってくると思って、思念伝達で作戦を伝えたのだ。
『ラージエリが奇襲、さらに私が奇襲、最後はラグマリアが奇襲』と。
こんな一か八かの作戦が、こうも上手く決まるとは思ってもいなかったけど。
『ガブリエラ、ウリエナは戦闘不能ね。リタイアよ』
ラグエル様のアナウンスが入り、二人は光となって消えていく。
しかし、二人しかアナウンスされなかったという事は―――
「私が、まだ……いる」
ボロボロになっても立ち上がるのはメタリアだった。
「もう、終わりにしましょう?」
「煩い……私は、《純潔》の美徳を継ぐ者なんだ……! お前たちに負けたら、魔王などという
不潔な存在に汚されるに決まっている……ッ! だから、私は―――」
―――負けない。負ける訳にはいかないッ!
そうメタリアが叫んだ瞬間だった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『ラフィーナ、リタイアよ』
ラグエル様のアナウンスが鳴り、近くでラフィーナが光となって消えていった。
さらに、
「次ッ!!!!!」
そんな声が聞こえると、今度はラージエリが光となって消えた。
『ラージエリ、リタイア』
マズイ……あれはメタリアの限界まで引き上げた『身体強化』のスキルだろう。
バーサーカーモード、そう呼ぶ天使も居たが……あれは消耗が激しくてかなり己が身を削る諸刃の剣の状態だ。
あれが長く続けば、彼女の身は保たない……。
「ラグマリア」
「はい、姉さま」
「まだ、戦えるわよね?」
「もちろんです」
「よし。それじゃあ、やるわよ」
これで最後だ。
全ての意見を総意とする、最終決戦。
あの人の願いを達成するためにも、私はこんな所で負ける訳にはいかない。
それに、あの人と同じくらい大好きな妹たちも、守らなくちゃ。
「ウゥゥゥゥ……残りは、お前たちだけ……だッ!!!」
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