case.A12 制圧
Aパート完結。
次回からBパート、《天使達の宴》編です。
「―――形勢逆転、だな」
俺は刃をルシファーに向けていた。
いや、俺だけでは無かった。
悪魔が虫兵が。
そしてルシファーの分身までもが、各々の武器を、一人のルシファーに向けていたのだ。
「有り……得ない」
どうやら、俺の考えた作戦は上手くいったようで、俺のスキル―――『支配』はどれだけの範囲だとしても機能するらしい。
よって、ルシファーの本体を除く全てのルシファーの配下を支配下に置いてしまった。
この方がよっぽど楽で、魔王らしい。
「有り得ないだろ……う?」
どうやらルシファーの奴、自分の置かれている状況が理解できていないらしい。
今まで自分が優勢だと思っていたのが、一瞬にしてひっくり返ってしまったのだから、当然の反応と言えばそうなのだろうが。
「受け入れろ。そして認めろ」
「……何……を」
「負けを、だ」
俺がそう吐き捨てた瞬間、ルシファーの顔は絶望に染まっていった。
何だろう、この気持ち。
この、征服感……とてもいい気持ちだ。
「嘘だ…………我は、《七つの大罪》最強なんだぞ……? それが……こんな一瞬で……」
「いいから、認めろ」
「有り……得ない」
まだ認めないと言うのか。
それなら仕方が無い。
今度こそ、力の差をハッキリとさせてやろう。
「今度はお前の番だ」
俺は手をかざす。
ルシファーの頭に。
「やめ……やめてくれ……ッ!」
「もう一度、我の傀儡となるがいい―――」
▶フッ……フハハ。なかなか貴様もどうして……
▶スキル発動。『支配』を開始しよう―――
淡い光が、ルシファーの身体を包んでいく。
「やめ……ろ……」
ルシファーの目がとろんとして、だんだんと閉じてくる。
俺は、その目が完全に閉じきってしまう前に言った。
「―――もう二度と、俺から逃れられると思うなよ」
「……ヒッ……」
その言葉でルシファーの支配は完全に完了した。
「……戦闘終了、だ」
「お疲れ様です、主様!」
何だか、違和感のある戦いだったが……まあ、俺の考えた作戦がうまく行って良かった。
「さて、リガルテの方は―――」
視線を横に移すと、そこではもう戦いは終わっていた。
リガルテの身体に座るアポロンとアルテミスが見えたのだ。
「二人とも!」
『おう、魔王。コイツも『支配』するんだろ?』
「あ、ああ。そうだな」
アポロンにそう言われて、俺はリガルテの下に近寄った。
『にしても、見事な手腕だったな。お手柄だぜ魔王サマ』
「やめてくれよ、たまたまだって」
『まあそんな謙遜すんなって』
俺はリガルテに『支配』を使いながら、笑うアポロンを見ていた。
(別に謙遜してる訳じゃなくて、ホントにたまたま上手くいっただけなんだけどなぁ……)
なんて呑気にも考えながら。
『それで、よ。そろそろ次のステップに進もうと思うんだが……』
「次のステップ?」
俺は滞り無くリガルテの『支配』を終え、そのままアポロンの話に耳を傾けた。
『そう。それはズバリ、俺たちの力の継承について……だ!』
「力の……継承……」
ハヌマーンの時もやった、あれか。
というかインドラの時もハーデスの時もやったな。
俺の体内に……正確には俺のスキル『Scarlet』の中に《十二神将》の面々が入り込む事を言うが……。
「本当にそんなあっさりと力を託してもいいのか?」
俺は若干不安になって、二人の神にそう問う。
だが、件の二人は笑ってこう返してきた。
『もとより私たちは貴方の協力をするつもりでいましたから。全く問題ありませんよ』
『それに、裏切るとかそんなつもりも無いしな! ハーデスに打ち勝った奴らに、挑もうなんてこれっぽっちも思わねぇさ』
「お前たち……」
こんなに優しい神も居るんだな。
今までは必ず一回は対立してきたから、どうも不思議な感覚だ。
当然嫌では無い。
「ありがとう。それじゃあ、頼む」
そう言って、俺は目を閉じた。
『おう! これから宜しくなッ!』
『私からも。よろしくお願い致しますね』
そんな言葉を最後に、辺りは一気に静かになった。
もう、終わったのか。
本当に一瞬だったな。
▶チッ……ただでさえ騒がしいというのに、また騒がしい奴が……ッ!
▶クハハハッ! いいだろうッ! 騒がしいのは好きだぞッ!
▶まあ、騒がしすぎるのもどうかと思うがな。
もともといた奴らはそれぞれ三者三様の反応を見せていた。
「主様。あちらに……」
全てが終わったかと思うと、今度はルインが遠くを指差して俺を呼んだ。
「どうした……って、あぁ」
俺はそのルインの指の先を辿る。
すると、そこにはアイツらが居た。
「おーい魔王ー!」
遠くから手を振って俺を呼ぶ三人組。
サタール、マノン、ベルゼリオは、ゆっくりとこちらへ向かって歩いてきていた。
そして真ん中にいたマノンに関してだが、マノンのヤツ、何故か天高く人を掲げていたのだ。
あれはもしかすると……
(おいおい……何をやったらあんなになるんだよ……)
「あ、あはは〜」
どうやらルインも気づいたようで、苦笑いしていた。
かく言う俺も、苦笑いしてしまっていたのだが……。
「親父、討ち取ったり〜!」
そんなマノンの呑気な言葉が、この広い草原に溶けて消えていった。
マノンの両手には、魔道王カラクの姿があったのだが……
(めちゃめちゃボコボコやんけ……)
ともかくだ。
かくして、俺たちの小さな冒険は終わった訳だが。
これから一度、魔王城へと帰還しようと思う。
帰る道中に、ルシファー……いや、ルシファルナから色々と話を聞こうと思う。
そして、消えた白夜の妹―――皇月夜の行方についても探らなければな。
(さあ、まだまだやる事はあるぞ……。ここが踏ん張りどころだ、俺。
もう少し……あと少しで全てが終わるんだ……!)
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