case.A11 その力の名は
場面は戻りまして。
「―――ヴッ……グ……ァ……ァァ………」
「おいッ! 何をしているルシファーッ!」
リガルテが、ルシファーによって怪しげな光に包まれていく。
それを止めようと俺は手を伸ばすが―――
「アハハハハハッ! もう遅いですよッ!」
その瞬間に全てが終わってしまった。
リガルテを包んでいた怪しげな光は全てリガルテの体内へと消えていき、その光はやがて、リガルテのオーラのような物となって見え始める。
「さあ、もう一度場をかき乱すのです。リガルテッ!」
「ッグ……アァ……ァァァ……」
ルシファーにそう指示を出されたリガルテは、ヨロヨロとよろめき、フラフラと辺りを漂い、そして―――
「ッ……ヴッ…………ヴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
やがて叫び声を上げると、リガルテの体を包んでいたオーラは一筋の柱となった。
そして、リガルテはそのオーラの柱から顔を覗かせる。
「さあ、再び始めましょうかッ!!」
『……ああ……始めよう』
オーラの柱から顔を覗かせたリガルテは、そう、“龍化”していたのだ。
白き龍の、本来の姿でリガルテはルシファーに応える。
『魔王、役割分担だ』
「え……?」
突然、アポロンがそう呟いた。
アポロンは疑問を浮かべた俺に続けて言葉を投げかける。
『あのデケェ龍は俺とかわいい妹に任せろ。だからお前とそこの嬢ちゃんは偽ルシファーを頼む』
「ああ、そういう事か」
2対1に持ち込むという訳だな。
確かにその方が効率的にも作戦的にも良いだろう。
『安心しな、あの偽ルシファーが逃げないようには気を使うからよ』
『はい。お任せください!』
「二人とも……」
それなら、安心してルシファー……いや、“ルシファルナ”を取り戻せるって訳だ。
俺は二人に答える。
「ありがとう、二人とも。そこまでしてくれるからには、何としてもこの作戦……成功させないと、だな」
「ですね、主様!」
ルインも気合満々の様子でそう答える。
「―――作戦会議はもう十分ですか?」
リガルテ同様、空中に鎮座したルシファーがそう言った。
どうやら律儀にこちらの話が終わるのを待っていたようだ。
「ああ。いつでも始められるぞ。―――かかってこいよ、偽物の大罪」
軽い煽りと、少しの怒気を込めた言葉を放つ俺。
するとそんな簡単な挑発にルシファーは乗ってきた。
「偽物……ですって……? 私が……私がもう本物の大罪だッ!! 本物の“傲慢”になったんだッ!」
ヘイトを稼ぐのは得意な方だったが、こんな簡単に引っかかるとは。
前までのルシファルナだったらこうはならなかっただろうな。
「アポロン、そっちは任せたぞ。できれば殺さないで捕らえておいてくれると助かる」
『了解した。サクッと無力化しておくから、そっちも厄介事があるなら早めに処理しとけよ?』
「ああ、分かっているさ」
コツン、と俺たちは拳を合わせた。
バトル漫画でよくあるあれだ。
「―――誰と話をしているのだッ!!! 今は私が貴様の相手なのだぞッ!!!」
そう叫んだルシファーは、愚直にも一直線に突っ込んで来た。
『我は……貴様らを仕留めようッ!!』
隣にいた龍王状態のリガルテもそのまま突っ込んで来る。
狙い先はそれぞれ俺とアポロンに分かれていた。
「ご都合主義もいいところだな……ッ!」
「何を言っているッ! ―――“鷲獅子”よッ!!」
ルシファーは突っ込みながら魔力の獣を生み出して攻撃してきた。
いつぞやのグリフォンがルシファーの盾となって突っ込んでくるが、俺は冷静に“シロガネノツルギ”を構える。
「まだだッ! 『召喚【悪魔】』ッ!!」
さらにルシファーは、安い悪魔共を大量に召喚し、こちらへ突撃させる。
だが、俺は動じない。
俺が指示をせずとも、彼女は動くから。
「主様に、近づくな―――」
音もなく彼女は消えた。
そして、それと同時に無数の悪魔たちも消えた。
それを見た俺は、刀を振るう。
「“次元斬”」
水平に刀を振るうと、俺の刀はグリフォンを払いのけ、ルシファーを後退させた。
「この程度では終わりませんよッ! ―――『蟲繰』ッ!!!」
すると後退したルシファーは、地面から、これまたいつぞやの虫兵を召喚した。
確か……“翻弄者”と“破壊者”、だったか。
ペアで組ませるとかなりの戦力になる虫兵だし、大きさもかなりある敵だが……
「まだ……まだ足りないッ! 『幻想』ッ!」
しかしルシファーは止まらなかった。
次はその身体を分身させていったのだ。
俺を取り囲むように、ルシファーは分身していく。
確か俺の記憶が正しければ、ルシファルナだった頃にこの『幻想』というスキルについて少し聞いたことがある気がする。
幻影のような分身は、実は全て実体を持っていて、本体とダメージが共有されてしまう代わりに全ての身体から本来の威力の魔法やスキルが使えるのだ、と。
「「「行くぞッ! 『召喚【悪魔】』ッ!!」」」
すると分身した全てのルシファーから言葉が聞こえる。
無数に展開した魔法陣からは悪魔が顔を覗かせる。
「主様ッ!!」
「ん、安心して見ていろ。ルイン」
俺は、動じない。
この程度ではもう動じない。
「ハッ……ハッタリも大概にしろッ! これで足りないというなら、まだ増やすのみだッ! ―――『蟲繰』ッ!」
ルシファーは俺のそんな態度に恐怖を感じたのか、さらに“甲冑虫兵”まで召喚してきた。
「これで……終わりだッ!!!!」
ルシファーはそう叫ぶと、その言葉を合図にその全ての軍勢が突っ込んで来た。
▶クハハハッ! 面白い状況だな、魔王ッ!!
―――ああ、インドラか。そうだろう? こうなるように、俺が仕向けたんだから。
▶貴様が? フン、我には関係無いことだが、何か策はあるのか?
―――ハーデス。俺は、ただの人間じゃないんだぞ?
▶ほう。お前、まさか……
―――ああ、ハヌマーン。俺は、神で、魔王らしいからな。
(絶対に出来ると、信じている。だって俺は、魔王だから)
こういう状況になった時、どうやって対処するべきか、今まで考えていた作戦がある。
もし、この作戦が上手くいくなら。
俺は、真の意味で“王”に近づく事が出来るかもしれない。
魔王として、配下を守れるような存在に、なれるかもしれない。
だって、この力があってこその俺なんだから。
俺は手を天に掲げた。
そして、そのまま呟く。
「―――全員、我の傀儡となれ」
そう。
これこそが、俺が魔王である理由。
その力の名は―――
後書き。




