case.A9 これがオレらの正攻法
大して苦戦はしないというネタバレ
「さてと……向こうもどうやらおっ始めたようだし。こっちもそろそろやるかァ?」
俺は肩に、鞘に入った刀を当てながらそう言った。
すると隣にいるマノンとベルゼリオは頷く。
「ああ。見たところ我らの欠片ほどの力も無いようだしな」
「で、どうなんだよマノン。実際のところ今回はどういう作戦で行きたいんだ?」
親父が居るって考えると、今回の作戦のリーダーはやっぱりマノンが適切だろう。
やりたいようにやらせるのが一番いいだろうからな。
「オレは……」
「ほれ、もう軍勢も迫ってきてるからよ。やりたい事があるなら教えてくんな」
「……分かった」
カッと目を見開き、マノンは考えるのをやめた。
そして、言う。
「まずはオレが範囲魔法であの軍勢の大半を仕留める。あと、あのクソ親父だけはオレにやらせてくれ」
「んじゃあ残った残党を俺らが始末すればいいんだなァ?」
「いや、お前たちにはやってもらいたいことがあんだ」
「ほう。聞かせてみなァ?」
平和だった頃はいつも強さを競って、争ってばっかだったからこういうマノンは新鮮だな……なんて思いつつも俺たちはマノンの話を聞く。
「クソ親父の軍には、三人だけクソ強えのがいるんだがよ。そいつらが多分、最低でも一人はいるはずだ。だからそいつをお前たちにはブッ潰してほしい」
「クソ強え奴、ねェ?」
「我は問題無い。むしろ好敵手とあらば、こちらから戦を挑みたいくらいだ」
ああ。全くもってその通りだ。
「強い奴」なんて言われたら、戦わない以外の選択肢があるのだろうか。
いいや、ノーだ。
絶対に戦うだろう。
「三人とも、オレの記憶が正しければ“魔法戦士”とか“魔法騎士”みたいな、魔法も近接戦も得意な奴らだった気がするからよ。気をつけてくれ」
「りょーかい」
「相分かった」
っと。
ちょうど会話が終わったタイミングで、時間切れのようだ。
前方すぐに、無数の軍勢が押し寄せてきている。
「さ、マノン。開幕一発!」
「派手にやってくれ」
俺とベルゼリオは一旦後ろに下がった。
それを確認したマノンは魔法を放つ態勢になる。
「さてと……シンプルイズベストって言うしな。最初はこれでいくか……」
そうマノンが呟いた瞬間だ。
空には、五つの魔法陣が展開していた。
「―――“五重詠唱”」
『ぜ、全軍魔法防御態勢に入れッ! マノン様の魔法が来るぞッ!!』
『応ッ!!!!!』
軍勢のリーダー格がそう指示を出している。
だが、恐らく。その判断はもう遅い。
「―――“高速詠唱”」
『全力展開で完全防御態勢に入りますッ!』
『何としても生き残れッ!!』
生き残れ……か。
多分、それすらも儚い願いとなって散りゆくのだろうな。
それくらい、マノンの魔法は―――
「―――“魔法強化”」
『“魔防陣”、展開しますッ!』
兵士たちは各々がそう叫ぶと、手に持つ盾のような物を自分の前に構えた。
すると、魔力の膜がその盾の所有者を覆っていくのが分かる。
だが、それだけだった。
それ以外にマノンの魔法を守れる要素があるようには見えない。
「―――“魔法再発”」
いや、違う。
あの魔道具、何かがおかしい。
おかしいと言っても、多分マノンの魔法は防げない。
こいつ、詠唱強化の魔法ばかり使ってるから、余裕で魔道具の防膜など貫通できるだろう。
だが、多分俺の想像してる効果とは違うはずだ。
あの魔道具、所有者だけを守ってるんじゃない。
範囲で防御膜を張っているんだ。
だから、数が多ければ多いほど、その効果が重ねられる。
つまり、膜が幾つも自分に纏われ、よりその防御を強固な物にしていっているのだろう。
「―――『獣神化』」
と、そこであらかたの強化を終え、マノンの奴はとうとう『獣神化』まで使いやがった。
身体がより獣じみた物に変化し、全ての準備が整った様子でマノンは杖を天高々と掲げる。
「さあ、行こうぜ」
そして、それは起きた。
「―――“爆発炎魔”」
縦に、五重に展開した巨大な魔法陣は、それぞれマノンの放った“爆発炎魔”を展開し発動していく。
爆炎は五重にも折り重なり、王国兵士のいる全ての範囲を爆炎で埋め尽くした。
「おいおい、マジかよ」
「うむ……流石に過剰攻撃過ぎるような……」
しかし、それだけで終わらないのがこの最強魔法使いの恐ろしいところだ。
事前に使ったとある魔法。
そう、“魔法再発”の効果が発動し、さらに“高速詠唱”の効果で魔法陣が一瞬にして再展開した。
見ると、すでに事切れてる兵士たちも多く見えるが、そんなのマノンにとっては関係無しだ。
問答無用でマノンは放つ。
「―――“爆発炎魔”」
再び爆炎が大地を、草原を埋め尽くした。
草花は燃え、人は灰と化し、残るのは奥に構えていた魔道王とそのお付きの護衛だけ。
俺は、そんな様子を生み出したマノンを見ながら、再び武器を構えた。
―――さあ、次は俺たちの番だ。
目に物見せてやろうぜ……ェ?
ブックマークしてほしいというネタバレ




