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case.50 慈愛の心

先に言っておく

次回は総集編風味の最新話




『―――ァ』



 黒き獣の身体に、一つの拳が突き刺さった。


 獣の身体に大きな風穴が開く。



 そして、その風穴からは3つの球体が現れた。

 あれが、あの青い球体が、魂なのだろう。


 それは、倒れたままの騎士―――アマクサ、イクサ、ヤマトの方へと入っていった。



「……はぐっ……!」


「ッ……!」


「……ほ……ッ!」



 3人は突然、覚醒したように目を開いた。

 そして何事も無かったかのように立ち上がっていた。



「……この、状況……は?」


「一体何が……」



 少し、困惑していたようだったが。


 ……って、そんな事より彼女は―――



『ァ……はは、やっぱり……ワタシは……』



 ……何で、そんな傷を負って喋るのよ……。

 どう考えても、痛いでしょうが……!



『ワタシは……勝てないのかなぁ……』



 ……何でそんなに……



『早く、殺しなさいよ……もう、ワタシには何にも残ってないのよ……』



 だから……どうしてそんな……ッ!



「では……遠慮無く殺させてもらう。許せ、死神の女」



 ディラが、アルカナに向かって再度拳を構えた。

 もちろんその手には神気を纏わせている。



『あはは……ようやく、死ねるのね……。今度……こそ、バックに誰もいない、この状況で……やっと……死神を辞めれ―――』



 …………ッ。

 私の手には自然と力が籠もっていた。


 それは怒りから来るものではない。

 同情などしたくないが、これはきっと同情なのだろう。


 私だって死ねるなら死にたかった。

 でも、大切な……大切にしたい人が出来てしまったから。


 今こんなところで死ぬ訳には行かなくなった。

 多分、きっとアルカナも似たようなものなのだろう。



 彼女の言葉から察するに、一度“勇者”とか言う奴に殺されたことがあって、そしてそれをたまたま拾ってくれたのが、あの二人の死神王だった……とかいう話だと思う……けど。



「それでは、さらばだ―――」



 ディラが拳を突き刺す態勢に入る。


 もう、時間は無かった。



 この判断が後で最悪な結果をもたらすなら、その時は私が全部対処してみせるから……だから今だけは自分に正直に…………自分の信じたものを貫かせて―――




「「―――『守護ガーディアン』ッ!!」」




 ―――ガキィィィンッ!



「…………ほう? どういうつもりだ……貴様ら」


『へ…………?』



 ディラの拳は、私の使ったスキル『守護』の防御壁に阻まれて止まった―――のだが……



(今、声がハモったような……? ってか、貴様“ら”ってどういう…………)



「―――答えろ。ミカエラ……アスモフィ」



 アスモフィ……って、あの!



 私は即座に振り返った。

 するとそこには、「えっへん!」と仁王立ちするアスモフィがこちらを見ていた。



 そしてアスモフィが何故か私にウインクして目配せしてくるので、仕方なく私が話すことにした。



「はぁ。―――理由なんて……無いわよ。ただ、私が助けたいと思っただけ」


『は……? 何を言って……』


「私もね、貴女と同じような重圧……っていうか、立場になった事があるっていうか、今もそうっていうか―――とにかく! こんなもの、同情よ同情! 同情の念から助けたの!」



 はぁ、はぁ……。

 言ったわよ……!


 私は、今度は仕返しのようにアスモフィの方を向き、目をパチパチさせた。



 するとウインクはウインクで帰ってくる。



「えっへん! お姉ちゃんも同じ理由……だと思う! 特に理由なんて無いの」


『は、は……?』


「でも、貴女と初めて会った時とは、確実に何かが違ってて……だから、今の貴女を見た時、見殺しになんて出来ない……少なくとも、私が信じた……愛した彼は、きっとそんなことしないと思って……それで助けたのよ」


『で、でも私は貴女たちに酷いことを……』



 アスモフィは、一歩ずつアルカナへと近づいていく。


 そして彼女のそばまでくると、しゃがんで魔法をかけ始めた。

 それは、彼女癒やす、治癒の魔法だ。



『き、傷が治って……』


「貴女に罪が無い訳じゃない。でも、見殺しには出来ない」


『そ、そんなの矛盾して―――』


「―――そう。だから、私たちは貴女に罰を与えなくちゃいけない。でも、殺しはしない」



 殺さないけど、受けてもらう罰……か。


 ああ、多分アスモフィが言いたいのは―――



「―――私たちと一緒に来なさい。貴女には、彼に会ってもらいたい。私たちが信じている、彼に」


『……ぁ……ぁ…………! あり……が……とう!』



 ポロポロと大粒の涙を零し始めたアルカナ。

 獣の身体でも涙は出るんだ、なんて思いつつも、私は少し考えた。


 私たちが、3体の死神王を倒したことになる。

 そして他のところでも恐らく、終わっている事だろう。



 と言う事はつまり―――



「ふむ……まあ良いか。面倒な事は全部魔王に任せるとして―――」



 私の考えと、ディラのそんな呟きが重なった瞬間だった。




『―――ふざけるなよ……ッ! 何故冥府には雑魚死神しかおらんのだッ! ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなッ! 卑しい侵入者風情が……調子に乗るなァァァァァァァァァァッ!』




 空から、そんな叫び声が聞こえてきたのだ。



「クハハハハ! ようやくお出ましか!」


「長かったような気ィするなァ……!」



『ふざ……けるなよッ! 我が、私が、俺がァァァァァァァァァァ! 全員、全員全員全員全員全員全員全員全員葬り去ってくれるわァァァァァァァァッ!』



 刹那、地面が揺れた。

 それはもう、激しくだ。



「きゃぁぁっ……何よこれ!」


「お、落ち着いてください!」



(しがみつくものが無いこの状況……ひとまずしゃがんで地面に掴まるしかなさそう……ね!)



 そう考えた私はすぐにしゃがんだ。



『全員、纏めて葬り去ってヤルゥヴヴゥゥゥゥゥゥッ!』



 しかし、それは無駄に終わってしまった。

 何故なら……



 私たちは全員、刹那にして視界がブラックアウトしたのだから。

ブックマークと高評価がどれくらい増えればランキングに乗れるのか…………

というか俺はランキングの確認の仕方すら分からない……


俺は、誰?

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