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case.48 第三形態《Diabolos Beast》

これが、終焉の刻―――



『―――対価には生命を』



 ……ッ!

 早速詠唱を始めた……?



「みんな! 速攻で―――」


「あァ! 分かってらァ! “獄炎縛インフェルノバインド”ッ!」



 私が指示を言い切るより早く、サタンは動いた。

 サタンの放った黒炎の糸は、アルカナの足を縛り付ける。


 前に放った、“フレイムバインド”より強力な物だ。

 そう簡単に破られはしないだろう。



「クハハハハ! 鬼の子よ、我のスピードについてこれるかなッ!?」


「貴方が誰であろうと、俺は俺の道を往きます!」



 そう、争うように駆け出していったのはディラとクサナギ。

 彼らの通った道は、地が抉れていた。


 どれだけ力を込めて走ったのだろうか。



 ……って、私もそんな解説している場合じゃ無かったわね……!



『―――望むのは配下を』



 攻撃を仕掛けられても、今だ止まらないアルカナの詠唱。



「クハハハハ! 詠唱を中断させてや―――」


「……ッ! 危ないッ!」



 響いたのはディラの笑い声。

 だが、直後鉄の打ち合う音が響く。



「あら、残念」


「クッ……なんて、力だッ!」



 アルカナの振るった大鎌を、クサナギが間一髪で受け止めていたのだ。



『―――踊れ、踊れ、踊れ。私と共に、踊りましょう』


「“雷光弾ライトニングバレット”ッ!」



 私は、クサナギがアルカナの気を引きつけている隙に、遠距離から攻撃を仕掛けた。


 しかし、



「あはっ!」


「ぐぁッ……!」



 力任せにクサナギを押し退けたアルカナは、器用にも片手で大鎌を振り回し、私の放った“雷光弾”を弾き飛ばしていた。



『―――“死神達の狂宴デス・カーニバル”』



 詠唱が、終わった……?



「チッ、こりゃまた厄介な―――」



 サタンがそんな呟きを漏らした時。



「さあ、ここからが本番よッ!」



 空に広がったのは、無数の魔法陣。

 そこから顔を覗かせたのは、小さな悪魔。



「何よ、あれ……」


「さっき言ってただろ、アイツ。“配下を求む”って」


「それじゃあアレは……」


「そう。あの無数の悪魔は―――」



「……アルカナの、配下」







「“狂乱撃バーサーク”ッ!」


「“光壁ライトウォール”ッ!」



 アルカナの攻撃を何とか防ぐも、その一撃一撃が重く、連撃を耐えるのには十分キツかった。


 それに加えて、悪魔たちも攻撃を仕掛けてくるから、その対処にも追われてしまう。


 結果、アルカナとの連携が取れた向こうの悪魔たちの方が、私たちを上回り、私たちは押されてしまっていた。



「アハハハハッ! さっきとは違って防戦一方ね、アナタたちッ!」



 大鎌を振り続けながらそう言うアルカナ。



「クッ……煩いわねッ!」


「弱い犬ほどよく吠えるって言うけど、本当なのねェッ!」


「きゃぁっ!」



 力いっぱいに振られた大鎌を受けきることが出来なかった私は、そのまま勢いよく吹き飛ばされてしまう。



「―――“矢雨アローレイン”ッ!」


「“乱れ裂き”ッ!」


「“獄炎弾インフェルノバレット”ッ!」



 

 周りでは、他の皆が悪魔の処理に追われていた。

 アスモフィは回復や強化魔法での補助をしていて、ディラと私が、アルカナの相手をしている振り分けだ。



「“神帝武流・連撃レンゲキ”ッ!」



 再び地面を抉ったのはディラ。

 超高速でアルカナまで詰め寄り、今度はお返しの連撃をお見舞いしていた。


 しかし、



「アハハハハッ! 痛くも痒くも無いわァッ!」


「何……だとッ?!」



 ディラの攻撃を一身に受け始めたアルカナだったが、何故か抉れた肉体が次々と再生していくのだ。

 

 そして―――



「―――次はコッチ、でしょ?」


「きゃぁぁぁっ!」



 ディラを囮に、アルカナの背後まで回り込んでいた私が攻撃されてしまう。



「次はコッチ」



 すると今度は大鎌を振り回して、飛来した一閃の矢を受け流したアルカナ。



「嘘、でしょ……? 今のにも気づいていたの……?」



 仕掛けたのは当然レヴィーナ。

 悪魔狩りの隙間に攻撃を仕掛けてきたのだが、それすらもアルカナは当然のように防いだのだ。



「あー、最高だわこの力。“あの時”にもこの力があればねぇ……」


「あの時とは、どの時だ……ッ!」


「全部、バレバレなのよ」



 正面から襲いかかるディラと、無言で背後から襲いかかった私の挟撃。

 しかし、それも分かっていたかのように話しながら大鎌で防ぎきったアルカナ。



「あの勇者には一度痛い目に合ってもらいたいしねぇ……こんな所で負けるわけにはいかないわよね」



 勇者……?

 一体、アルカナは何の話を―――



「そうね、もう面倒だし本気で行くわ。貴方たちの本気も見てみたいし、あの状態でのなまりも取っておきたいしね」


「はぁ? アンタ、何言って―――」




「―――全権能解除完了」



 そう、アルカナが呟いた時、彼女の体から黒い殻のような物か零れ落ちた。


 ま、まさかあれは―――



「さっきの攻撃、ありがとねぇ。お陰で最後のロックが外れたわ」


「チッ……まんまと攻撃してしまった訳か……!」



 三重目のロックが、解除された……。

 それが、あの肉体再生の力……?

 それとも、あの予知みたいな力……?



「アハハハハッ! ちょっと困惑してるようだから教えてあげるわぁ」



 自ら手の内を晒し始めたアルカナ、軽く舌なめずりをした後、こう続けた。



「さっきの力は、さっき私が美味しーく食べた二人の死神王の力。

 一つは再生する狂気の肉体リバース・バーサーク

 もう一つは予兆の魔眼。

 【全滅】と【予兆】の二つの力を得た私は、まさに【終焉】。



 そう、私こそが【終焉】の死神王アルカナなのよッ!」




 そう叫んだアルカナは、一瞬にして黒い闇にその身体を飲まれてしまった。



「何……よ、あれ」


「分からん……だが、あれはとてつもなく恐ろしい気配がする……」



 天に向かってそびえ立つ一本の闇。


 その中心部では、紫色の光が漏れ出ていた。




『さあ、これでファイナルラウンドよ。私の本気で、貴方たちを殺してあげる!』




 そう言って闇の柱から姿を現したのは、一体の獣。



 九本の尻尾を生やした、狼のような獣。




『―――最後に嗤うのは、私なのよ』

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