case.43 魂喰
ぐりとぐら
今……何て言ったの?
もし、私の聞き間違いじゃなければ、確かに―――“アルカナ”って言ってたような気が……
「アルカナ、ですって?」
その言葉に真っ先に反応したのは、さっき到着して合流してきた三人組の内の一人、確か、アスモフィ……だったかしらね。
彼女が、真っ先に反応していた。
「そ。アルカナだよ。あの御伽話に出てくる、アルカナ」
宙に浮かんでいる死神王フィーは、即答した。
「そんな……でも、あれは前に……」
「残念。君たちが倒したアルカナは、ボクたちが回収して保存しておいたのさ」
「……嘘……」
待って待って……?
話についていけないのだけど、まさか以前にアルカナと戦闘した事があるの……? この三人組は。
もしそうなのだとしたら、それ自体が凄い事だと言うのに、さらにそれがまた復活した……って流れで合ってるわよね?
もうそんなの奇跡レベルとしか言いようがないわね。
「それが今、こうしてようやく復活したって訳だよ。まだ、この子も状況が理解出来てないみたいだけどね」
そう言いながら黒い球体をコツコツと叩く死神王フィー。
「ねぇフィー。まだこの子も眠ってるみたいだし、私も早くご飯が食べたいから、アイツら殺してもいい?」
「え? あ、うん、好きにしていいよ」
「キャハハハハハハハッ! やったあ!」
そう、子供のように大はしゃぎする死神王シュリーユ。
(って言うか何だかここにいる死神王さんは、みんな子供っぽいような……)
って、呑気に考えている場合じゃないわね……!
今普通に流したけど、これから私たち、殺されようしてるじゃん!
すると、
「……皆さん、下がってください」
「まずは俺たちで敵の情報を引き出します」
「―――そのまま殺してしまうかもしれんがな」
そう言いながら、私たちの前に騎士三人組―――イクサ、アマクサ、ヤマトが並んで立った。
情報を引き出す……って、つまりはかませ犬みたいな事をする訳ね。
私たちに託す前提みたいな提案だもの。
「クハハ! 気をつけろよ!」
「あァ、あの黒い球体から怪しい気配がするしなァ」
恐らくこの中で一番強いであろう二人、サタンとディラが腕を組みながらそう言う。
「ご忠告、痛み入ります」
「後は俺たちに任せて、敵の動きを観察していて下さい」
「ホホ……では行くぞ―――」
騎士組が、そう言い残して駆けだそうとした時だった。
『―――ァ……ァ……タマ……シ……イ?』
(黒い球体が、喋った…………?)
「アハハ、どうしたの急に」
『フィ……ー……タマ……シイ…………が』
「タマシイ? ああ、魂が食べたいのかぁ―。それなら自分で取りなよ」
『分か……ったぁ』
魂を……食べる?
待って……それってまさか―――
『―――“魂喰”』
黒い球体から、そんな言葉が聞こえてきた。
直後の事だった。
―――バタッ。バタッ。バタッ。
「嘘……」
「そんな、一瞬で……?」
私たちの前に立っていた騎士組が、一斉にその場に倒れてしまったのだ。
―――理由なら、分かる……。
そんなの、もう説明するまでもないだろう。
だってこれは……
『うま……い』
「アハハ、よかったよかった。―――でもさ、アルカナ」
『な……に』
「勝手に三つも食べちゃダメじゃないか。これはキミにも“オシオキ”が必要そうだね」
『いや……だ』
「いいや、これは決定事項だ。―――ねぇ、シュリーユ。ソイツらの相手しててよ」
「キャハハハ! 任せて!」
「ありがとね。ボクはこの子の“躾け”をしてくるからさ―――それじゃあまた後でね」
「うんっ!」
そんな不吉な会話を残して、死神王フィーと、黒い球体はその場から消えて行った。
その場に残ったのは、たった一人……
―――死神王シュリーユだった。
「あーあ、先に三つも食べられちゃったよー」
狂ってる……三つも、食べられたって……。
っていうか……まさか、本当にあの一瞬で彼らは死んで……?
「ま、いいや。まだ六匹も居るし、格別に美味しそうなのも二匹いるしねー! キャハハハ!」
「何なのよ……コイツ」
「同感です」
私の隣にはクサナギがやって来た。
「それじゃあ、始めましょう? 楽しい楽しい―――パーティーをねッ!!」
「―――“神帝武流・速”ッ!」
刹那、ガァンッ!という地面の砕ける音が響いた。
高速で飛び出した死神王シュリーユと、ディラがぶつかり合った衝撃だろう。
「我々も行きましょう……ッ!」
「でも……」
私は振り返りながら戸惑う。
一応、ここまで一緒に来た間柄だし、無視する訳にもいかない。
あの騎士組を、どうにかして安全な場所まで移動させたいところだけど……。
「おい天使の女! アイツらはまだ生きている!」
私が戸惑うのを見て、サタンはそう言った。
「え……?」
「ただ、魂が持ってかれちまってるから、アイツらの魂を奪ったあの黒い奴―――アルカナを倒さねェと、復活は出来ねェんだよ!」
―――へぇ、なるほど。
それなら話は簡単……ね。
「……分かったわ。それじゃあ、さっさと死神王を“全滅”、させてやりましょうか」
「フッ、物分りが良くて助かるぞ」
(1対6なら、勝ち筋は濃厚だろうけど……)
私は、前を見ながらそんな事を考えていた。
「―――キャハハハ! キャハハハ!」
「チッ……! “神帝武流・爆速”ッ!!」
前方で巨大な爆発が起きる。
だがしかし……
「―――キャハハハハハハハハハ! 痛い痛いよー!」
死神王シュリーユには全く聞いている様子が無かったのだ。
そう。あの《十二神将》の一人、“神帝インドラ”を相手にして、だ。
「これは……本気で、かつ全員で戦わないと勝てないかもね……」
そんな私の不安が募る中、戦いの加速度はさらに上がっていくのだった。
グラトニー
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