case.42 【停止】の死神王ガイオン
風が強い
「とは言え、これはどうしようもねェよな……」
自分の知らぬ間に時を止められて、そして気づいたときには時既に遅し、というこの状況。
そもそも、どうしようも無いっつーか……。
「これ……詰んでるだろ」
「ウ……ム、そうだな……」
何か策があるなら教えてほしいくらいだ。
「クハハハハッ! ようやく気がついたか愚かなゴミ虫共めッ! 我が力の前には、ただひれ伏すのみしか無いのだッ!」
「チッ……」
ムカつくが、全部事実だ。
反論の余地が無ェ。
「―――時間を止めるというのは、確かに強力な力だ」
「……ァ? 急にどうしたんだよ、ベルゼリオ」
「いや、本当に何も対抗策が無いのかと思ってな」
……?
どういう事だ……ァ?
時間が止められたら絶対に動けないだろうが。
そんで、動けなかったら何も対抗のしようが無いだろうが。
これで証明終了。
完全に論破されちまうぞ……?
「無駄だ! いくら考えようと、我が力には敵わないのだからなッ!」
「いや……だが……何か、何か無いのか……?」
必死だな……ベルゼリオのヤツ。
まあ、そりゃそうか。
俺だって死にたくねェからな……。
でも、無いモンは無いんだから仕方ない―――
「―――なぁおい。例えばだがよ、もし俺らが時間を止められても動く事が出来たらどうするよ」
「「「……は?」」」
唐突に、そんな事を言ったマノンに、俺とベルゼリオ、そして敵である死神王ガイオンまでもが口をポカンと開けてしまった。
(こいつは急に何を言ってんだ……?)
「……いや、待てよ……?」
何だ?
まさか、マノンの言ったことが当たらずとも遠からずみたいな反応してるけど……まさかベルゼリオのヤツ、何か思いついたと言うのか……?
「―――チッ、これ以上考える暇を与えるのは良くなさそうだな……ッ! そろそろ殺させてもらうぞッ!!」
って……クソッ!
悠長にしてる時間はもうくれないってか……!
死神王ガイオンのヤツ、ベルゼリオが何かを思いついたのを見て、急に態度を変えて攻撃を仕掛けてきやがったぞ……!
狙いはもちろん―――
(ベルゼリオか……!)
「任せろッ! 俺はコイツを引きつけるッ!」
「マノンッ!」
そう叫ぶと、マノンは飛び出していった。
「オラオラオラァッ! 人間砲台のお通りだァァァッ!」
「んなッ……! クソ、何て速さ―――」
直後、死神王ガイオンとマノンはぶつかり合って、爆ぜた。
「おいおい、無茶し過ぎにも程があるだろ……」
だが、この隙に対抗策を練らないと。
マノンの活躍が無駄になっちまうからな。
「おい、ベルゼリオ。今の内に―――」
「―――“時間停止”……或いはそれに類する能力が働く場合」
「……ァ?」
「術者が、自分よりも位……すなわちレベルや能力値が低い相手の場合に確実に効果の発動・行使が可能であり、逆に自分よりも位の高い者に発動した場合、抵抗される恐れがある」
ど、どうしたんだ突然。
機械みたいにそんな事言って。
―――って、今、なんて言った?
「もし。もしマノンの言った通り、時を止められても、我らが動く事が出来れば?」
「つ、つまり……?」
「だから、我らがあの死神王より強くなる事が出来るのならば―――」
「……ッ! 時間停止が、効かなくなる?」
「ああ……恐らく、だがな」
ま、マジかよ……。
そんなあっさり対抗策が見つかっていいのか……?
いや、だが待てよ……?
「でも、どうやってヤツより強いと判別するんだ? そんな簡単に俺たちがヤツを上回れるとは思えねェが」
現状、俺たちは時間を止められてしまっているのだから、さっきのベルゼリオの言葉を借りるなら、俺たちはヤツより位が低い―――すなわち弱いという事になる。
それを超すと一口に言っても、そうやすやすと出来ることでは無いと思うが。
「いや、我らならば可能だろう?」
「は? 何を言って―――ってまさか」
一つだけ思いついたのがあるが……まさかそれな訳―――
「―――神化、だ」
「……やっぱりか」
えっと、つまり何だ……?
俺らが最初っから本気でアイツと殺り合ってたら、簡単に勝てたって言うのか?
「もちろん、成功する保証は無いがな」
ああ、そうか。
神化したところで、時を止められてしまう可能性もあるのか。
だがまあ、例えそうだとしても―――
「それでも、試す価値はある、だろ?」
「ああ」
■
「マノンッ! 一度戻れッ!」
「おうッ!」
ベルゼリオの指示で、マノンは即座に切り返し、こちらへと戻ってくる。
「フン……何を思いついたか知らないが、どうせ無駄な足掻きだ」
「そいつァどうかな、ってやつだぜ」
「何……?」
さあ、行こうか。
さらなる高みへ―――
「俺たちが勝つ未来へッ! ―――『鬼神化』ッ!」
「同じ力を持つ者として、負ける訳にはいかんからな。 解放だ―――『龍神化』」
「んァ? そういう事か。うっしゃ、任しときなッ! 全力で行くぜ―――『獣神化』ッ!」
俺たちは同タイミングで動き出した。
しかし、それを黙って見ている死神王では無い。
「チッ、そうはさせるか―――」
死神王ガイオンが手をかざす中、俺たちの身体はだんだんと進化していく。
「全て止まるが良い―――“時止まりし終焉の世界”」
そしてその瞬間、全ての時が止まった。
「フン、時さえ止めてしまえば、いくら強くなろうと無駄な―――」
「―――事だと思ったか?」
そう、俺たち以外の時が。
「な……ッ! ば、馬鹿なッ! どうして動いて……!」
「良かったぜ、こっちも内心ヒヤヒヤしてたんだからな」
「ああ、だがこれで我ら方が強いということが証明された訳だ」
「そうなのかァ……! クヒヒ、それじゃあ後はアイツを殺すだけだなァッ!」
神化のお陰で、死神王ガイオンの能力を上回った。
だから、時を止められても動ける。
そういう事だ。
さあ、残り細かい説明とか作戦とか、そういうのはもう要らねぇ。
ちゃちゃっと殺して、お終いだッ!
「行くぜェ……?」
「ま、待て、待ってくれ! 流石にこの状態で動かれると、勝ち目が―――」
問答無用、だ。
「―――“鬼龍流奥義・昇り龍”ッ!」
まずはベルゼリオが、死神王ガイオンを打ち上げた。
「グァァァァッ!」
「アーハッハッハ! 爆ぜろ爆ぜろォッ! “爆撃獄魔”ッ!」
次に、空中でマノンが爆撃を。
「グオァァァァァァッ!」
「―――トドメだ」
そして最後に、俺は高く飛び上がった。
「―――“鬼龍流奥義・牙突”」
そして、刀を地面方向に垂直に構えて、落下していく死神王ガイオンに狙いをつける。
そのまま俺は高速で落下していき―――
「――――――ァ」
グサリ。
今度は、ちゃんとした刺す感覚があった。
「俺らの、勝ちだ」
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