case.40 【破滅】の死神王アリア
バッドエンドを貴方に見せてあげる
「―――ここからが本当の“狂宴”となるのよ」
そう呟いた死神王アリアは、目の前から姿を消した。
「……ッ!?」
見えなかった、だと?
一体、いつ消え―――
「白夜後ろッ!」
「後ろ―――」
「―――遅いッ!」
ヘルに言われて後ろを向こうとした時、左後ろから死神王アリアは現れて、そのまま俺に強烈な一撃を入れてきた。
「うぐっ……!」
「まだよッ! “黒涙”ッ!」
さらに、黒い魔力弾が俺へと集中するように放たれた。
さっきの蹴りで一度態勢を崩した俺は、すぐに立て直すことが出来ず、もろに魔力弾も受けてしまった。
「白夜から離れなさい! “氷刃”連射っ!」
「二度もやられる訳にはいかないわぁ……? ―――“黒棘”」
死神王アリアは、自分の後方にいるヘルの攻撃に対処するべく後ろを向いた。
その隙に俺は起き上がり、再び態勢を立て直す。
「ヘルッ! 同時に行くぞ!」
「了解!」
「かかってきなさいよ。全て“バッドエンド”に変えてあげるからねぇッ!」
(バッドエンドだか何だか知らないが、全力で行くぞ……ッ!)
俺は最大級の炎を練り上げる。
さらに、炎には黒き力が混ざっていく。
それを、そのまま魔剣グラムへと宿す。
ヘルの方を見ると、彼女は俺と正反対で、強烈な氷の魔力を練り上げた物を、手に持つ魔剣レーヴァテイン・改へと宿していた。
「―――行くぞッ!」
俺の合図で、俺たちは駆け出した。
そして、死神王アリアとの距離が詰まった瞬間、俺たちはそれぞれの魔剣に宿した力を解き放った。
「―――“鬼神炎渦”ッ!」
「―――“絶凍氷撃”ッ!」
俺の剣からは広範囲な黒炎の攻撃が、
ヘルの剣からは絶対零度の氷の一撃が、
それぞれ死神王アリアへと襲いかかる。
しかし。
死神王アリアはそれを笑って一蹴した。
そしてこう一言。
「―――“夢見しは最悪の結末”」
直後。
俺たちが放った技は、俺たちに当たった。
「ぐあぁぁぁぁぁぁあっ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
俺には氷が、ヘルには炎が突き刺さる。
かなりのダメージを負った俺たちは、その場に崩れ落ちてしまう。
「―――アハハハハハハッ! 私を倒すために放った大技が、それぞれに当たるなんてねぇ!? なんて滑稽なのかしら!」
(何が……起きた……!?)
凍てつくような寒さで頭が回らないが、何とか考えようとする。
がしかし、吸血鬼神であるヘルの強烈な一撃は俺の身体に刺さり、手の指先から凍り始めるくらいだった。
だから思考なんてしている場合じゃなかった。
ヘルの方を見ると、ヘルもヘルで顔を真っ赤にさせて膝を地面についていた。
俺だってかなりの魔力を練ったから、いくらヘルとは言え相当なダメージだったはずだ。
「二人とも話せないみたいだから、私が解説してあげるわぁ……冥土の土産に、ね」
チッ……余計な、お世話だな……!
「あっそ。まあ構わず話すから」
一気に形勢が逆転したからって、急に態度まで豹変させやがって……。
まあいい……この隙に回復でもしとこう……。
「―――まあいいわ。さっき私がやったのはねぇ、“未来改変”ね。簡単に言うと」
未来改変……だと?
「そう。夢見しは最悪の結末は、私の未来に降りかかる災厄を、私が望む結末に操作する技なのよぉ」
「チート技も……大概に……しろよな……ッ!」
「ええ、本当に……ね!」
とそこで、俺たちは剣を支えにして何とか立ち上がった。
「あはは! 貴方たちってとっても仲良しなのねぇ……?」
「そうね……とっても仲良しだから―――攻撃するタイミングも一緒なのよっ!」
「―――“炎塊”ッ!」
「―――“氷塊”ッ!」
ヘルに合わせて、俺も魔法を撃ち放った。
二つの隕石が、同時に死神王アリアに襲いかかる。
そして俺たちは、魔法を撃ち放ったのと同時に、反撃の構えも取った。
きっと死神王アリアはまた、あの技を使ってくるからだ。
「―――アハハハッ。“夢見しは最悪の結末”!」
すると、予想通り死神王アリアはあの技を使ってきた。
二つの隕石は交差して、それぞれ俺とヘルの元へ向かってくる。
(今度は、目で追える……ッ!)
向かってくる隕石を、俺は剣で斬り捨てた。
向こう側ではヘルも同じようにしていた。
するとさらにそこへ、新たな声が飛んできた。
「―――白夜! 僕たちの準備が整ったよ!」
この声は―――
「ルヴェルフェさん!」
「うん。待たせてごめんね」
そう言いながらルヴェルフェさんと、その後ろのスレイドさんが俺の方へと駆け寄ってきた。
「いえ、別にそこまで待った訳じゃないので、そんな謝らないでください」
「ホント? ありがとうね」
「いえ、それで準備が整ったって……」
「ああ。一応あの死神王の戦い方を観察しながら策を練っていたんだけど、さっきのあの技……えっと―――」
「―――“バッドエンド”、ですね」
「そうそう、それそれ」
確かにあの技が未来改変をする技なら、マジで太刀打ち出来ないけど……そこはどうするんだろうか。
「それを使われる可能性も考慮した上で練った策だから、安心してね」
「マジですか」
…………マジですか。
未来改変が出来るあの技に対抗できる策って……もうそれ神の領域だろ。
なんて考えながら俺は、ヘルの方を見た。
するとヘルは、死神王アリアと戦っていた。
「それじゃあ準備はもう終わってるから、あの謎の彼女と一緒に、さっきみたいな大技を放ってくれる? 死神王アリアが“バッドエンド”をつかうのを誘発してもらう感じで」
「なるほど……分かりました!」
「うん、じゃあお願いね」
「任せてください!」
胸に握りこぶしをポンポンと当てながらそう答えた後、すぐに俺は再び走り出した。
善は急げ、だ。
そしてそのままヘルを捉えた俺は、叫ぶ。
「ヘルッ!」
「白夜!?」
「もう一回、ドデカイの一発……行けるか?!」
「もう一回―――愚問ね、任せなさい!」
よし来た……!
それじゃあ―――
「どれだけやろうと無駄な事よッ! 私に“夢見しは最悪の結末”を使わせようとしてる事もお見通しなんだからッ!」
(チッ……もうバレてるのかよ……)
でも……それでもやるしかないだろう。
使わないなら使わないで、攻撃がちゃんと当たる可能性もある。
それならこれは、撃ち得だ!
「白夜! タイミングは貴方に合わせるわッ!」
「了解ッ!」
死神王アリアとの距離が詰まってきた。
俺は走りながら、再び黒炎を魔剣グラムに纏わせる。
さぁ行くぜ……もう一度だッ!
「ブチかませッ!―――“鬼神炎渦”ッ!!!」
俺は再び“鬼神炎渦”で死神王アリアを攻撃した。
そしてそれを見たヘルは、
「凍てつきなさいッ! “絶凍氷撃”ッ!!」
こちらも同様に、再び先ほどと同じ技で死神王アリアを攻撃した。
二つの巨大な赤と青が、死神王アリアを挟み込むように襲う。
さっきは一見余裕そうだった死神王アリアだったが、今は―――
「……クソっ……使わざるを……得ないの……?」
さあどうなる……!
この技が決まれば俺たちの勝ちだ。
決まらなくても多分勝ちだ。
死神王アリアは、その場に立ち止まり、何かを考えているようだったが、やがて俺たちの放った大技に包まれてしまった。
流石に勝っただろうと思った、その瞬間。
「―――“夢見しは最悪の結末”」
炎の中から、そんな呟きが聞こえてきて。
俺とヘルが身構えた時、事は動いた。
「―――行くぞスレイドッ!」
「了解っス!」
「「―――“術式禁止空間”ッ!!」」
何だ?
二人は一体何をして―――
「僕たちの勝ちだッ! “魔力反射倍砲撃”ッ!」
そう、ルヴェルフェさんが叫んだ時。
俺とヘルの放った大技は、死神王アリアによってこちらへ向かってきていたはずなのに、突如現れた透明な魔力のバリアによって吸収されていき、そのまま再び死神王アリアに向けて放出されたのだ。
しかし何度やろうと、死神王アリアにとっては同じ事。
もう一度、“バッドエンド”を使えばいいだけ。
だが、今までと一つ違うのは、彼女の足元にとても大きな魔法陣がある事。
あれは一体……
「あははッ! 何をしようと私にはこの夢見しは最悪の結末が――――――あ……れ?」
……ん?
どう、したんだ……?
もう、跳ね返って放出された俺たちの大技が、直撃するのに……あの技を使わないのか……?
「使えない……ッ!? そ、そんな……まさかこの魔法陣―――」
ドォォォォォン……!
最後まで言い切れずに、死神王アリアは炎と氷に包まれてしまった。
やがて爆発によって生まれた煙が収まると、そこには、ただ死神王アリアの亡骸が遺されているのみだった。
「終わっ……たのか?」
「うん。僕たちの勝ち、だよ」
「お疲れ、白夜」
「お疲れ様っス!」
……くぁぁ……!
長かったような気がするな……!
それに、中々苦戦してしまった……。
けど、まだこれは戦いの序章に過ぎないのだろう。
あの冥王神ハーデスとかいう奴に勝つまでは、きっとこの戦いは終わらない。
だから進もう。
休憩なんて、している場合じゃない。
「さ、時間も無いですし、早く次に行きましょう!」
「ええ、もうかい?」
「私は全然構わないわよ」
「俺も大丈夫っス!」
「えぇ〜……まあ、いいか……ぁ」
そんなこんなで、死神王アリアに打ち勝った俺たちは、再び歩き出した。
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