case.39 心読
勇者のターン
「死神の中でも最強クラスの《六死神》が相手で、しかも仕掛けた罠はすぐに見破られて破壊されてる。さらには心まで読んでくるなんて―――まさに言葉通り最強じゃないか」
「あらぁ、そぉ? 褒めてくれるなんて嬉しいわあ」
「チッ、褒めたわけじゃないんだけど……」とルヴェルフェさんは小さく呟き返した。
しかし、確かにルヴェルフェさんの言う通りだ。
この死神王アリアとかいう奴、尋常じゃなく厄介な相手だぞ。
これは、どうにか対策を練らないと―――
「―――そんな暇は与えないわよぉ!? “黒涙”ッ!」
しかし、死神王アリアが放った魔力弾の雨によって、俺の思考は止まってしまう。
「そこもねぇ……ッ!」
「クッ……!」
「何、罠をもう一度仕掛けて……なんて考えているのかしらねぇ……!」
一発の魔力弾が直撃し、行動が止められてしまったスレイドさん。
どうやらもう一度罠を仕掛け直そうとしていたようだが―――
「私の前では全て無力化されるのみよぉ?」
「どうやら……作戦なんかは意味を成さないようだね」
「ですね……」
この状況、どうにかして打開しないと相手のペースに飲み込まれて負けるぞ……ッ。
「あら、なら負けちゃえばいいのに」
……会話が成立してるのがもうおかしいが、今更そんな事ツッコんでも仕方ないか。
「白夜、済まないが君に前線は任せてもいい?」
「え……別に構いませんけど。何をするつもりで……?」
「―――企みがあるならそれを阻止しないとねぇ! “黒涙”ッ!」
と、再び死神王アリアは仕掛けてくる。
「“呪盾”ッ!」
それを傘のように、魔力の盾で防ぐルヴェルフェさん。
範囲には俺やスレイドさんも含まれていて、全員を魔力弾の雨から守ってくれている。
そしてその状態のまま、ルヴェルフェさんは言った。
「考えなんて無いけど、君は“勇者”なんでしょ? なら僕たちがどうにかする策を思いつくまで、どうにか前線で持ちこたえてくれると助かるんだけど……!」
「なるほど、そういう事なら……ッ!」
俺が死神王アリアと戦っている間に、ルヴェルフェさんたちが作戦を練るということなら、やらない理由は無い!
つまりは二人をこの死神から全力で守ればいいだけの話な訳だ。
それくらい……俺たちならなんて事ない!
(そうだよな? ―――ヘル!)
「―――さあ、古の吸血鬼神よ……今ここに現界せよッ!」
―――ようやく出番って訳ね!任せなさい!
俺はレーヴァテイン・改を取り出してから、そのまま真上に放り投げた。
「そんな投擲じゃ到底私には届かないけど……ヘルってなぁに?」
「すぐに分かるさ」
「ふーん……?」
死神王アリアの疑問に答えるように、空に投げたレーヴァテイン・改が青く輝き出した。
徐々に冷気を帯びていくその剣は、やがて現れた人の手によって握られる。
「え……?」
死神王アリアの視線は、剣の方に集中していた。
空に浮かんだ剣を見上げ、ぼーっと。
圧倒的チャンス。
そう思った俺は、魔剣グラムを取り出して駆け出した。
「速攻だッ! ―――“神速剣”ッ!!」
しかし。
死神王アリアには俺の刃が届かなかった。
「―――残念だったわねぇ。私には全部聴こえてるんだから」
右手から放たれた一発の魔力弾に、俺の進撃は止まってしまう。
しかし時間稼ぎは十分。
レーヴァテイン・改に俺の中に居るヘルが乗り移って現界するまでの時間は、十分に稼げたはずだ。
「ああ、そうかよ。だがな、こっからは相手が増えるぜ?」
「あら、どういう事かしらぁ?」
「―――こういう事、よ?」
空から声が響き、死神王アリアの上空には一つの氷塊が現れた。
「―――“氷塊”」
「ッ……! “黒血撃”!」
死神王アリア目掛けて、その氷塊は落下するが、アリアはそれを渾身の一撃で破壊した。
「一体何なの……?」
死神王アリアは何事かと再び空を見上げた。
するとそこには、さっきまではただ剣が浮いているだけだったと言うのに、何故かそれを持つ一人の女が居たのだ。
「誰……なのぉ?」
「私? 私は……そうね―――神よ」
「神……ですってぇ?」
「クールビューティーな神は、余り多くを語らないわ。さあ白夜、すぐに仕留めましょう」
俺の中から現界した吸血鬼神ヘルは、そのまま地面へと降り立ち、俺の隣へと並んだ。
彼女の周囲には幾つもの小さな青い炎が浮いていて、まるでオーラを纏った幽霊のようだ。
「ヘル、あの死神は俺たちの心を読めるらしい」
「ええ。聞いていたから分かるわよ」
「だから、作戦なんて考えない方がいい」
「うん。無心で攻撃し続ければいいのよね?」
攻撃する手を止めなければ、何処かで死神王アリアにも綻びが生まれるはずだ。
「―――生まれるといいわねぇ?」
「あぁ、そうだった……全部聞かれてるんだったな」
「ふふっ、そうよぉ」
「それじゃあ、もう止まるのはやめだ。―――行くぞヘルッ!」
言いながら俺は駆け出した。
「かかってきなさいよッ! 全て捻り潰して、グチャグチャに殺してやるわぁッ!」
今だに武器を取り出す様子のない死神王アリアは、両手を広げて俺たちを迎え撃つ形になった。
「―――ルヴェルフェさんが策を練るまでの時間……しっかり稼がせてもらうぞ!」
「出来るものならしてみなさぁいッ!?」
「“炎撃剣”ッ!」
魔剣グラムによってさらに濃密に練り上げられた炎を刃に纏わせ、力任せに剣を振るった。
「そんなんじゃ届かないってさっきも―――」
「―――“氷塊連弾”!」
俺の攻撃をバックステップで華麗に避けた死神王アリアだったが、その跳んだ先にはヘルが待ち構えていた。
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
ヘルはさっき放った“氷塊”を小さくして、大量に打ち放つ技を使い死神王アリアの背中を攻撃した。
「ふふん。私を忘れないでくれるかしら?」
「クッ……流石に、二対一は分が悪かったかしらね……」
「ええ。神を相手にしているのだから、当然勝敗なんかは決まっているも同然よ」
「神を―――アハハハ……。そうよ、そうよねぇ……?」
ぽそりとそう呟いた死神王アリアは、ヨロヨロと揺らめいた後、そのまま空へと浮かび上がった。
逃げるといった様子ではない。
だが、様子がおかしい。
「もう手加減するのはやめるわ。ここからは全力で戦ってあげる。
―――貴方たちに、本当の“バッドエンド”ってのを見せてあげるわッ!!!」
ブルーライトカットメガネを買ったんですけど、慣れないとこそばゆいですね
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