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case.30 分かつ死

節分でも魔王はあっさりと死にゆく―――



「あぁ、虫唾が走るねぇ。お前たちみたいなのを見てると、殺したくて引き裂きたくて仕方がねぇよッ!!!」


「ああそうかよッ……! なら殺してみやがれッ!」



 透明になって消えていた死神王ダナーは、飛びかかって俺に攻撃を仕掛けてきた。



 ダナーの使う武器は鎌、というよりは剣に近いが、剣かと言われれば若干鎌とも言えるような、曖昧な武器だった。


 ……まあ、仮に剣鎌けんがまとしておくが。



 そんな武器の振りおろしを、俺は右手に持った“呪狂剣・双月”で受け止め、そのまま力任せに振り払った。



「はぁ、つまんねーな。―――“霊体化ゴーストモード”」



 死神王ダナーは再び透明になってしまう。



「来たか……」


「主様。もう少し相手の情報が必要です、一旦防御に徹しましょう」


「ああ、了解だ」



 今は少し考え事をしたかったから、むしろそういう作戦なら助かる。



 考え事、というのはさっき俺が抱いた違和感についてだ。



 先程、死神王ダナーはこういった。

 「今回のゲームに参加している種族」と。


 しかし冥王神ハーデスの言葉を思い出すと、今回のゲームにおけるハーデスの能力制限……その内容が、

 「冥界で最もランクの低い死神」を召喚対象とする。


 そう、言ってたはずなのだ。



 つまり、この情報を纏めると―――



「……ッ! 主様、足元です!」


「足元……? って―――クソッ! “炎弾ファイアバレット”ッ!」



「チッ、不意打ち失敗……か。まあいいッ! パワーでゴリ押すだけだッ!!」



 考える暇も与えない、ってか……!



「ルインッ!」


「はい! ―――“分身”っ!」



 俺はルインに攻撃を促して、一度死神王ダナーと距離を取った。


 そしてその直後、ルインの分身が辺りに何人も現れた。



「ほう? 分身か。キヒヒッ、面白いな……お前」


「お褒めに預かり、光栄です……ッ! ―――“影飛剣えいひけん”ッ!」



 姿を現した死神王ダナーに、一斉にルインの分身が襲いかかった。


 しかも、ただ襲いかかるだけじゃない。

 全ての分身が、“影陰えいいん”……つまり、ルインの使う“影と成る”魔法を使ったのだ。



「一斉攻撃、そんでもって気配隠蔽。なるほど、そんだけ出来れば上々だな。だが、そんなんじゃ俺には届かないぜ?」



 何だ、アイツ。

 妙に余裕な態度だな。


 何か、この状況を打開できる作戦でもあるのか……?



「キヒヒッ。この女はもう、お終いだ―――」



 ……悪寒がする。


 何だ、この感じは。



 まさか本当に、何かが―――




「やぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「キヒヒッ……キヒヒッッ!」




 ルインの分身が一斉に死神王ダナーへと斬りかかった。


 それは、“呪狂剣・双月”の剣先が、ダナーの身体に触れる―――そんな瞬間の事だった。






「―――“四屍鬼面ししきめん”」






 刹那、鮮血が舞った。



 何が起きたかは分からない。


 だが、一つ分かる事がある。




 それは―――





 俺たちが その瞬間に 死んだこと。




「ああ、やっぱクソ程つまらんかったな」







 ここは…………。



 暗い。


 寒い。


 狭い。




 この感じは……まさか。



「―――主、さま?」



 その声は………!



「ルイン……?」


「はい……っ! ルインです!」



 暗闇からその姿を現したのは、紛れもなくルインだった。



 しかし、そうなってくると俺の考えは違うのかもしれないな。


 てっきり俺は、久々に死んで、スキル『転生リスタート』の効果が発動して、またあの《大罪の間》にでも来たのかと思ったけど。



 今まではルインがいなかったから、多分今回は違うんだと思うけど…………。



「主様……一体ここは?」


「……すまない。俺にも分からない、が―――心当たりはある」



 嘘は言っていない。


 ただ、そういう可能性があるっていう話だ。



「だが、実際問題マジでここは何処なんだろうな……」


「少し、歩いてみますか」


「そうだな」



 と、言うわけで早速俺たちはその場を動くことにした。


 とは言っても、暗闇の中をただ散歩するだけなのだが。



「あはは、何にも見えないですね」


「ああ、そうだな」


「あの、もしよかったら……」



 こ、この流れは……!


 俺から、行ったほうがいいよな?



 く……う、男を見せろ、俺!




「―――手をつなぐか?」


「……! はいっ!」



 俺は手を差し出し、それをルインがしっかりと掴んだ。



「え、えへへ……主様成分補給〜」



 ぅあ…………なんだこの天使。


 可愛すぎるだろうが……!



 クソ、俺は何でこんな天使様の事を恐れていたんだよ……!


 もっと、もっと大事にしないと……だな!



「今の私なら、何でもできるような気がします!」


「そ、そうか? まあ、言っても俺たちは死んじゃってるんだけどな」


「……やっぱり、死んだんですかね」


「俺の記憶が正しければな?」


「ぅ……私のせいです。すいませんでしたっ!」



 繋いでいた手を振り解いたルインは、すぐにそのまま頭を下げてきた。



「ああいや、いいんだ。それよりも―――」


「いえ……私なんかのせいで、主様が死んでしまうなんてこと……私では耐えられなくて―――」


「いいや、違うぞ。それに、私なんかのせいなんて言うな。お前にはたくさんの借りがあるからな。それを考えればこんなの可愛いくらいさ」


「……本当、ですか? でも、もう死んでしまった以上……もとに戻る方法は―――」



 多分。


 上手くいくかは分からないけど、生き返る方法なら簡単だと思う。


 ただ、成功する保証は無いけど。


 試してみないと、分からない……よな?



「ルイン、それならある―――」



 俺がそれをルインに告げようとした時だった。





『騒が……しい……よ? きみ、たち』




「声……?」



 何処からか、声が聞こえてきた。



 だが、それもかすれていて、今にも消えてしまいそうなか細い声だったが。




『いい、よ……? 僕の……ところまで、きなよ』




 そんな言葉が聞こえてきたと思えば、その直後に目の前に青い灯火がいくつも現れて、やがてそれは一つの道を作り上げた。




『そのまま…………まっ、すぐに』



「……主様、どうしますか?」



 この感じ。


 俺の勘が当たれば、多分―――



「……行こう。どうせ、ここで立ち止まってても仕方ないしな」


「ですね、分かりました! 行きましょう!」



 そう言うとルインは俺の手を引いて歩き始めた。




 そんな中俺は、一人で考える。



(まさか……この場所は…………。いや、そんなまさかな……?)

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