case.27 吹き飛ばされた先で(2)
―――震撼☆
《ミカエラ視点》
あー……やっばいこれ。
マジで頭がズキズキするわ……。
「もう……一体何なのよ―――」
どんな状況でも文句を垂れる口は減らないようで、私はそんな呟きを漏らしながら立ち上がった。
えっと、確か空から変な声が響いてきて、かと思えばその後すぐにあのでっかい竜巻に飲み込まれたのよね……?
記憶違いが無ければ、多分そのはずだけど…………
と、私は周囲をキョロキョロと見回しながら思考を巡らせていた。
というか、周りには誰も居ないのだろうか?
気配はするのだが、姿が見当たらない。
「何か変な感じ」
私はそう言いながら、体慣らしの意味合いも込めて少しずつ歩き始める事にした。
幸い、周囲に敵影は無く、比較的安全そうな場所に飛ばされてきたみたいらしい。
「ま、敵がいても全部薙ぎ払うだけなんだけどね」
光の剣を生み出したり消したりしながら、私はそう呟いた。
そして歩き始めてからしばらくした時、再び空から声が響いてきた。
「―――ハハ」
「……ッ!」
空から声……いや、笑い声だろうか……そんな感じの漏れ声が聞こえてきた瞬間、私は即座に戦闘態勢に入り、周囲の警戒をした。
「―――クハハハ!!」
しかし、そんな準備も杞憂に終わり、空から聞こえてきた声は、どこかで聞いたことのあるような声だった。
「―――とうっ!!」
ドシーン!!と空から落ちてきたそれは、地面に着地した時の衝撃で地面を破壊し、周囲に砂埃を撒き散らした。
「けほっ、けほっ……」
私はそれに咳き込みながらも、一旦その場から距離を取った。
やがて砂埃が晴れ、中からは予想通りの人物が現れたのだ。
そう、その人物とは―――
「ディラ。やっぱりアンタだったのね」
「ああ! さっきぶりだな! クハハハ!」
両手に腰を当てて、豪快に笑ってみせたディラは特に様子がおかしい訳でも無く、いつも通りの感じだった。
(私がさっき感じた気配は、コイツのだったのかしらね)
「―――フハハ、我の前でそのまま隠れることが出来るとでも思ったのか?」
突然、ディラがそんな事を言ってきた。
「は? 急に何を言っているのよ」
当然、私はそれに疑問を浮かべる。
しかしディラは、その疑問に首を振った。
「クハハ、貴様では無い。そこの、後ろの奴……だッ!」
そう言いながらディラは、闘気を練り上げて生みだしたオーラの塊を波動弾のようにして私の後ろへと撃ち放った。
「きゃっ……! ちょ、何をして―――」
「―――“極炎壁”ッ!」
刹那、ゴウッ!という音と共に私の背後で炎が立ち上がった。
「え? ちょ、何よこれ」
「―――貴様は敵か? それとも…………」
ディラがそう問いかけると、炎は消え去り、その中から一体の悪魔(鬼のような風貌をしているから、悪魔なのか鬼なのか分からないが多分魔力の気配的に悪魔だと思う)が現れ出てきた。
「―――悪ィな、こっちに敵意は無い。というか今はもう善意しか無ェよ」
「ほう。なら良かった。それで、貴様の名前は? 見たところ、我の見知ったオーラを感じるが」
「察しがいいなァ。流石は神様ってところか。こっちだってオーラでダダ分かりだったぜ」
え……なになにこれは。行ったどういう状況なの?
「と、とりあえず二人とも名乗りなさいよ」
「おっ、そうだな。そんじゃあ俺から。―――俺の名前はサタン。伝説の《七つの大罪》のリーダーにして、【憤怒】の罪を冠する鬼悪魔だ!」
…………?
「え……っ? あ……あ〜っと………? ―――は???」
何とかして絞り出した言葉が、「は?」だったのは申し訳無いが、本当に理解が出来なかった。
「―――我は! 《十二神将》が一角、【武闘】のインドラであるッ! 現在は訳あって“ディラ”と名乗っているからよろしく頼むぞッ!」
と、私の理解が追いつかない間に、ディラも自己紹介を終えていた。
「―――《十二神将》……ねェ? それで、そっちの天使の嬢ちゃんは何者なんだァ?」
「え、あ、私? 私はミカエラ。《天帝八聖》のリーダーで、【謙譲】の美徳を冠する大天使ミカエル様の子孫……のような物よ」
「ほう? ミカエルの……なるほどなるほど。こりゃァ奇っ怪な組み合わせになった訳だ」
うんうんと頷きながら、サタンと名乗った悪魔は「フフ」と含み笑いをした。
「それで? これから俺たちはどうするよ」
「ちょ、ちょっと待って! 流石に整理しきれてないから頭がパンクしそうなんだけど!?」
「クハハハ! なら少し話しながら情報整理でもしようか」
「え、ええ。そうしてもらえると助かるわ―――」
それから私たちは、そんなディラの提案に乗って、色々な事を話すことになった。
話を聞くと、どうやらサタンはマジの本物の《七つの大罪》のリーダーらしい。
サタンは言う。
「―――なるほどねェ? こんな辺鄙な場所に魔王の関係者が集まりまくった訳か。こりゃァ面白いことになりそうだなァ……?」
「ああ、全くだな。全く、面白すぎて今までの事が全て霞むくらいだ」
そんな、戦闘狂いな二人の声が刹那に吹き抜けていった一陣の風に溶けていった。
■□■
《アスモフィ視点》
「―――“竜砲”ッ!」
―――ガシャァァンッ!
「―――“矢雨”!!」
―――ドドドドドド…………
意識が戻ってきた私の耳に入ってきたのはそんな騒音だった。
誰かがすぐ側で戦っている……それはすぐに分かった。
何が起きたかは明白だ。
あの巨大な竜巻に飲み込まれてみんな散り散りに吹き飛ばされた。
「“治癒”」
私は自分自身に回復魔法をかけながら、思考を巡らせる。
多分、吹き飛ばされた後は意識を失ったから分からないけど、あの機械兵達が襲いかかってきているんだろう。
それを、たまたま近くに吹き飛ばされてきた誰かが対処してくれているんだろう。
「―――我流剣術・“爪牙”」
「―――“矢弾”!」
そろそろ起きないとマズいわね。
お姉ちゃんの威厳と尊厳を守るためにも、そろそろ活躍してみせないと!
「ん〜〜! ぷっはぁ!」
「あぁ、起きましたかアスモフィ様!」
「この寝ぼすけめ! 早く手伝って!」
「はいは〜い、お姉ちゃんにお任せあれ〜!★」
私は早速杖を取り出して、戦闘態勢に入った。
「それで? 今は一体どういう状況なの?」
「はぁ? そんなの見たら分かるでしょ?! いいから早く逃げるわよ!」
「はい。急がないとジリ貧で負けてしまう可能性があります! アスモフィ様、レヴィーナ様、退路は私が作りますから、お二人は私に続いてきてください!」
そう言いながらクサナギはバッサバッサと機械兵を斬り捨てながら進んでいった。
「むぅ……後でちゃんと状況整理しましょうね?」
「ほら、そんなの分かってるから! いくわよ!」
「ちょ、ちょっと引っ張らないでよ〜!」
―――今の状況……というより私は魔王様の事が気になるだけなのだが、せっかちなクサナギとレヴィーナが無理矢理逃げるから、話す隙も無いようね。
「はぁ、何だか訳が分からなくなってきたわ……魔王様は大丈夫かしらね…………」
■□■
《魔王ルミナス視点》
「―――ッ」
まさか、まさか…………。
「―――主、様……!」
こんな事になるなんて……ッ!
「どうして、目を逸らすのですか? 私の目を、ちゃんと見てください」
合わせる顔が……無いのに。
目なんて、合わせられるかよ……!
「主様」
「―――ぁ……う……俺、は―――」
「主様っ!」
何て、返せばいいんだろうか。
なぁ……俺は、どうすればいいんだろうか。
こうして実際会うまで、全然思い付きもしなかった。
どうしてこんなにも、気まずいのだろうか。
……いや、理由はもう分かりきっているんだ。
勝手に逃げて一人で強くなろうとした俺に、劣等感があるからだ。
そんな俺に、お前はまだ……笑って付き従ってくれるというのか……?
なあ、答えてくれよ―――
「―――ルイン……ッ!」
こんな終わり方ですが、次回で多分200話目です☆
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