case.26 吹き飛ばされた先で
前編
―――奇しくも時同じく。
ハーデスによって発生した一つの巨大な竜巻を挟んで、魔王軍の面々がその場に集結していた。
数にして総勢17名。
それだけの人数があの場には揃っていたのに、互いの存在には全く気がつくことが無かったのだ。
しかし彼らは竜巻に飲み込まれ、それぞれ吹き飛ばされてしまう。
そしてそれが、ハーデスの作り上げた悪夢のようなゲームの始まりなのだった。
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《白夜視点》
「痛ぇ…………頭がズキズキするな……」
一体、何がどうなった……?
あのデカい竜巻に巻き込まれて……それで吹き飛ばされて…………
俺はどうやら無事みたいだが……他の奴らはどうなんだ……?
「クソ……とりあえず探すか―――」
そう呟いて寝ていた身体を起こそうとした、その時だった。
何やら身体が重い。
そんな感覚がしていた事にようやく気がついた俺は、空を見上げていた顔を少し上げ、俺のお腹の辺りを見るような態勢になった。
するとそこには……
「ッァ………痛ぇなぁ……!」
「ちょ……誰だお前!」
「んぁ…………っと…………?」
一人の男が、俺のお腹の上に乗っかっていた。
割と小柄な身体をしたその男は、俺の知らない人物だった。
「……うんと……だいぶ理解してきたぞ。ごめんね、すぐ退くからね」
「あ、助かります……?」
さっきはびっくりして声を荒げてしまったが、改めて冷静になると今度は敬語になってしまった。
が、そんな事にも気づかず、今度はもう一つの事に気がついた。
バツが悪く、視界を後ろの方に反らそうとした時の事だ。
「―――ん? あれは……?」
そこにはもう一人、気絶した様子の人物が倒れていたのだ。
あれは、そう……
「―――スレイドさん!」
おれそう叫ぶと、ちょうど俺から退いてくれた小柄な男に構わず、すぐにスレイドさんの元へと駆け寄った。
「……スレイド?」
小柄な男はその名前に少し反応しているようだった。
が、俺はそれにも構わずスレイドさんを抱き起こした。
「大丈夫ですか……? スレイドさん!」
「………………くぅ……」
「―――どうやらソイツは完全に気を失っているようだね」
そう言いながら小柄な男はこちらへと歩み寄ってくる。
ちょっと流石にそろそろ気になってきたので、俺はその男に問うことにした。
「あの……それで、貴方は一体誰なんですか?」
「……それはこの男が一番よく知っているはずだよ。コイツから聞くといいさ」
そう言いながら男は、スレイドさんに何かの魔法をかけていた。
多分、回復魔法か何かだろうな。
「ほら、早く起きろよ。いつまで寝てるんだ。―――この“クソ弟子”が」
「く……ァ??」
ん……今の言葉。
“クソ弟子”って言ったか……?
てか、あれ……?
よく見たらこの人……前に迷宮地下で会ったような……?
まさか、まさかこの人が……あの―――
「る……ゔぇるふぇ……さま?」
「ああ。そうだよ―――ボクはルヴェルフェだよ」
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《サタール視点》
「それで? 俺っち達は竜巻に吹き飛ばされて、こうして集まった……と?」
「ウム。そのようだな」
「あァ、まさかこの3人が集まるなんてなァ?」
目が覚めると、そこには俺を含めて3人の人物がそこに居た。
まだ少し頭が痛いが、そこは気合で立っている。
そんな事よりも、だ。
今この場に集っている3人……。
これがまた、何かの因縁なのかという程のメンツなのである。
その、俺以外の二人というのが―――
「そうだなァ? マノン、そんで―――ベルゼリオ」
《魔帝八皇》屈指の戦闘狂であるマノンと、俺がライバル視している存在、ベルゼリオだったのだ。
「色々言いたいことはあるだろうが、話は纏めて聞こう。だから全て後回しにしてくれ」
突然、ベルゼリオがそう言った。
「あァ、そうだな。今はお話し合いなァんてしている場合じゃねェってことだな」
「それくらい俺でも分かるぜ!」
俺はそんなベルゼリオの言葉に頷き返しながら、笑った。
マノンも満面の笑みでグッと親指を立てている。
「それよりも、だ。これからどうするよ」
「フム。―――我が目的としたいのはただ一つだ」
「一つ? 何だァそりゃ。言ってみろ」
俺がそう聞くと、ベルゼリオは何の迷いも淀みも無く、きっぱりとこう言い切った。
「我が目的とするのはただ一つ。―――我が主の側に居ること、それのみだ」
「主……魔王サマか」
「ああ。我が騎士としてこの世にある限り、我は己の使命を全うするべく、そして騎士としての誇りを保つためにも、主である魔王ルミナス様にはお仕えしていなければならないと考えている」
「……ヘェ? 何だか変わったな、お前」
「―――失ってから気づくモノもあるという事だ」
失ってから気づくモノ……ね。
何だよ、カッコイイこと言っちゃって。
ま、これならベルゼリオが弱くなるどころか、ますます強さに磨きがかかりそうでむしろ俺的には嬉しい感じがするなァ。
「なぁなぁ、ってことはだぞ? 今から敵をブッ倒しながら魔王を探すってことでいいんだよな?」
マノンが確認の意味も込めてそう聞いてくる。
それに俺は答えた。
「ああ。それで間違ってないぜ」
「……今更だが、進む目的がそれでいいのか?」
「ああ。元々俺たちがこうして出張ってきてる目的はあの魔王サマの捜索だからな。会えるなら、万事解決ってね」
「なるほど……。それなら良かった」
よくよく考えてみれば、ようやく目的が達成されるって事なんだもんな。
それなら願ったり叶ったりじゃねェの。
「おし! それじゃあ行こうぜ二人とも! 早速出発だ!」
「心得た」
「あァ!」
そんなこんなで、マノンの元気な掛け声と共に俺たちは早速出発する事になったのだった。
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《アマクサ視点》
「―――い……か! …………い! おい、無事かッ! アマクサ!」
誰かが俺を呼んでいる……?
「―――フム、大した傷も無しに……どうやら気絶しているようだな」
「気絶とは……情けないなアマクサ」
クソ、何だか分からないが意識がこうして戻っている以上、このまま悪口を言われたくは無い。
仕方ない、起きるとするか―――
「おいアマクサ! 大丈夫か! 早く起きろッ!」
「―――だぁぁあもう! うるさいなイクサはッ! 起きてるよッ!」
ガバッと勢いよく俺は起き上がった。
そしてそのまま周囲を確認し、その場に誰がいるかも確認できた。
まあ、声でなんとなく分かったからこそ、俺はその名前を出せたのだが……。
「イクサとヤマト……か」
「どうしてそう残念がってるんだお前は」
明らかに呆れた様子でそう言ったイクサは、続けてこう言った。
「それよりも。これから俺たちはどうするか、だな」
「幸い周囲に敵影は無いようだからの、あまり焦る必要もないじゃろ」
「それは良かった。それなら、少しだけ休憩させてくれないか?」
俺はそう提案しながら、その場に座り込んだ。
何だか少し頭が痛いから……そんなしょうもない理由だが、準備は万端の状態じゃないとな。
「……まあいいだろう。一応連戦続きだったしな。多少の休息も必要だろうよ」
「ああ。我も同意じゃ。異論は無いぞ」
「……ありがとう。それじゃあ今後の作戦を考えつつ、少し休むとするか―――」
そうして俺たちは、こうなった経緯や現在の状況を整理しながら、しばしの休息を取ることになったのだった。
狂ったように睡眠を貪りたい。
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