case.24 騒乱の幕開け
やっとこさ今回の章のメインボスが動き出しました
「……サタンさん、何か雰囲気が変わっ―――」
何か様子のおかしいサタンさんに、そこまで言いかけた時だった。
「―――おい! ようやく……ようやく地上が見えてきたぜェ……」
「やっと、ね……」
と、サタンさんとレヴィーナさんが会話していた。
それに釣られて、言いかけた言葉をしまい込み、意識を眼前に集中させた。
「ホントだ……地面が見えてる」
「この距離なら、あと5分もかからないですね」
まだ疲れている様子のないルインさんが、冷静にそう分析している。
「国……? か町かは分からないけど、居住区に入ったらまずはどうするの?? お姉ちゃん、少しだけ休みたい気もするのだけど」
「はい。そうですね……皆さん若干の疲労が確認出来ますから、少し休もうかなと思います」
「助かるわ! やっぱり持つべきものはルインちゃんね!」
「や、止めてくださいよ。褒めても何も出てこないですよ……?」
そんな会話が、先頭から二番目の二人から繰り広げられていた。
さて……俺も結構疲れたし、着いたらお言葉に甘える形で休もうかな……?
準備は万全の状態で……ってな。
残り少しの階段……頑張って下ろうか。
うし、気合入れ直すぞ!
■
《魔王視点》
「―――なるほど。じゃあ持久戦に持ち込まれたら俺たちに勝ち目は無くなるんだな?」
「ウム。ほぼ……というか、確実に勝ち目は無くなるだろうな」
「なるほどな……」
ハーデスの能力が、神クラスの化け物ですら複製召喚し、かつ使役し続けることの出来る能力だと言うのだから、確かに持久戦に持ち込まれては不利も不利……もはや絶望だろう。
だから、ハーデスと戦う時の作戦としてはきっと―――
「―――奇襲が効果的、か」
「そういう事になるな」
ヤマトが俺の言葉に頷いた。
まあ、そうなるよな……。
奇襲して、相手の意表を突く事で速攻で相手の本丸を叩くことが出来るわけだから。
「となると、行動するのも早めの方がいいのか……?」
「ちょ、落ち着きなよ魔王様。流石に時期尚早だよ」
俺の呟きに、ルヴェルフェが反論してきた。
それを受けて、流石の俺も焦りすぎたと反省をする。
「―――安心せい。今、我の使い魔兼愛鳥である《暗夜》を飛ばして情報を集めているところじゃ。もうある程度の情報は集まっているが、あと少しで完璧に情報が整うはずだからな」
「……それは本当か?」
「ああ。ここで嘘を言ってどうするのだ」
「う……それもそうだな」
ヤマトのそんな発言で、俺はホッと一安心した。
戦いにおいて、情報が多いに越した事は無いからな。
情報を集める手段があるのは、本当に助かる。
「ひとまず我々は、“暗夜”が帰還するまで待とうか。一応、帰還命令は出しておいたから、直に帰ってくるはずだ」
「それまで暇になるのか……」
まあ、暇つぶしなんてどうとでもなるか。
それに、休める時間が多いならそれはそれで助かるってもんだしな。
来たるハーデス戦に備えて蓄えは充分にしておこうか。
■
《勇者視点》
「さ、とうちゃ〜くっ!★ お姉ちゃんが一番乗りよ!」
「おい、アスモフィ。テメェはガキか何かかァ?」
「うるさいわね! ガキで悪い!?」
「ふふ、喧嘩も程々に。まずは休憩場所の確保からしますよ」
アスモフィさんとサタールさんの喧嘩を、ルインさんが仲裁する形で、今の目的をパッと言ってくれる。
「休憩場所の確保……ねぇ……?」
「……? レヴィーナさん、どうかしたんですか?」
「いやね、何か不穏な気配がすると言うか……」
不穏な気配……?
いや、全くそういうのは感じない……が……って―――
「……ッ」
―――あれ……? 何だろう、ロボット達の視線が俺たちに集まっているような気が……?
「やっぱり……変よね……?」
「はい……確かに変な気がします」
不自然に全てのロボット達が俺たちの事を見ているから、不穏……というか不気味な程だ。
「ちょっと皆、一旦止まっ―――」
―――立ち去れ。
「……ッ!!?」
誰だ……!?
空から……声が聞こえる……ッ!?
「何事だァ……? どうやら歓迎ムードって感じはしねェが……」
「皆さん、警戒態勢を。気づくのが遅かったみたいです……!」
―――この神聖な地から、即刻立ち去れ。今ならまだ重症を負わせる程度で許してやろう。
神聖な地……だって?
てか、瀕死にさせようとしてるじゃんか―――
「……今さら、ここまで来て引き返せるかっての!」
「おっ、おい! マノン! あんまり先走るなッ!」
「うるせぇサタールッ! こちとらクソ長い階段下らされたんだ! それ相応の見返りが無いと体力使った意味が無ェだろうがッ!」
そう文句を言いながら、ドシドシと構わず先へ歩いていってしまうマノンさん。
それを止めるべく、サタールさんも動き出した。
「ったく……どうなっても知らねぇからな?」
「ちょ、師匠! 全く……貴方って人は―――」
どこかで見た光景だが、マノンさんを止めるために動き出したサタールさんを止めるべく、弟子であるクサナギさんも歩き出してしまった。
―――立ち去らぬか。ならば、こちらもそれ相応の歓迎をしようではないかッ!!
「ちょ、皆さん! いい加減落ち着いて―――」
―――全軍突撃だ。我らが聖域に踏み込む害虫共に、天罰を下せェイッ!
あ、れ……? これ……結構マズイやつなのでは……?
何か……全てのロボットの目が赤く光っているような…………?
「ちょ……これは……ッ!」
「皆さん戦闘態勢をッ! ……すぐにッ!!」
―――遅いわァッ! 行けッ! 我が死神達よッ!!
『殺してみせよう―――』
『排除だ……排除だ―――』
『害虫を滅ぼせ―――』
ヤバいヤバいヤバいだろこれ……!
敵ロボットの数は……数え切れないくらい居るしッ!
てか何で俺たちはこんないきなり襲われてるんだよッ!
そんな事を考えている間にも、ロボット達はガシャッ、ガシャッと一歩ずつ近づいてくる。
どうやら……考え事をしている時間は無さそうだな……!
「チッ……まあ、戦えるならそれ以上の見返りは無いしなァ……!? いいぜ、やってやろうじゃねェかッ!」
杖を構えながら、そう不敵に笑って言ってみせたマノンさんの背中を見ながら、俺は俺の中にいるヘルに問いかける。
……おいヘル、ヘル。起きてるか?
―――あー、起きてるわよ。
……良かった。早速で悪いが、戦闘準備だ!
―――オーケー。久々の出陣ね!
……時が来たらお前を召喚するから、よろしく頼むな!
―――いつまでも待ってるわ。戦いは私の数少ない楽しみの一つだからね……!
よし……これで一応準備は整ったか……。
こっちは9人だが、個々の能力は絶対的な信頼感を得ることが出来るくらい厚い物だ。
敵ロボットの強さにもよるが、多分負けることは無いだろうな。
―――さーて……どうやらまた事件に巻き込まれたみたいだが、今回はどうなることやら……。
■
《魔王視点》
「―――ムッ。“暗夜”か。して……どうだった?」
一羽の黒鳥がヤマトの肩に止まり、一切れの紙をヤマトへと渡した。
「どれ…………」
それをヤマトは、じっくりと眺める。
そして時間にして数十秒。
突然ヤマトは声を荒げた。
「なっ……! これはマズイぞッ!!!」
「ど、どうしたんだヤマト! 何があった!」
「―――奇襲じゃ」
「奇襲…………?」
それってつまり……まさか?
「やられた…………ハーデスの奇襲、先制攻撃が始まったようじゃ……!」
「おいおい……嘘だろ……ッ!?」
マジかよ……!
向こうから、奇襲を仕掛けてくるなんて……!
「急ぎ出陣といこう。もう準備している時間は無いぞ……ッ!」
「ああ……!」
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