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case.21 発見

もう少しで―――




「―――見えた! あそこにクサナギさんが見えますッ!」



 先頭を走っていた俺は、後ろからついてきている他のメンバーにそう伝えた。



 見ると、路地に入る外の道にクサナギさんが立っていて、路地の奥を心配そうに見つめていた。


 俺はさらにスピードを上げて走り、クサナギさんの隣で足を止めた。



「ハァ……ハァ……」


「あ、ああ。白夜さん、それに他の皆さんも……」



 俺たちに気づいたクサナギさんは、若干溜め息混じりにそう呟いた。


 そんなクサナギさんに俺は問う。



「あの……他の二人は何処に……?」


「あ……師匠達ならそこに」



 そう言いながらクサナギさんは、路地の奥を指差した。



 俺はその指の先を追って見てみると、そこには必死の形相で壁をペタペタと触るアスモフィさんと、それに渋々付き合っているといった様子のサタールさんが居た。



「あれは何を……?」



 俺はクサナギさんに聞いた。



「見てわかる通り、この路地に何か無いものかと探しているんですよ」


「え……? 何も無いんですか?」



 クサナギさんのそんな言葉に、後ろからやってきたルインさんがそう聞いた。


 クサナギさんはそれに頷いてから答える。



「はい……。どうやら、魔力の痕跡は見つかるのですが、特に何かがある訳では無いようなのですよ」


「魔力の痕跡は見つかる……?」


「ええ。少し見てみてれば分かりますけど……何故か今アスモフィさんが触っている所の壁に一番強い魔力の痕跡が残っていますけど……」



 そう言われて、ルインさんはその魔力とやらを確認し始めた。


 さらにそこへ、スレイドさんがやって来た。



「すいません。私も見てみても大丈夫ですかね?」


「ええ、別に構いませんが……」



 そう言ってスレイドさんまで目を凝らし始めていた。


 そんな中、俺はマノンさんに聞いてみる。



「マノンさん、少しいいですか?」


「んあ? どうした?」


「魔力の痕跡……ってなんですか?」


「ああ、魔力の痕跡か。いいぜ、俺が教えてやる!」



 ポンポンと胸を叩き、自慢げに語り始めたマノンさん。



「えっとな、説明すると短いんだが……魔力の痕跡ってのはつまり言い換えると、“魔力の落とし物”だ」


「落とし物?」


「ああ。痕跡っていうくらいだからな。文字通り、そこで誰かが魔力を使ったっていう残り香見てェなモンな訳だ」


「なるほど……。それで、今皆さんが探している魔力の痕跡は、どんな感じなんですか?」


「そうだなァ。……今、アスモフィが触っている壁にモワァッと魔力が集中している感じで、そこに向かって一筋の魔力の線が、さっきまで俺たちが走っていた方向へ伸びているって感じだな」



 一点に集中している……ってことか。


 うーん……考えてはみても、所詮は探偵の真似事……だからなぁ。


 俺如きでは何かが解けるような読解力も推理力も無いし……。



「あら……? 何かしらね、これ」


「……?」



 突然、レヴィーナさんが不思議そうな声を上げた。


 アスモフィさんを除いた他のメンバーの視線が、一旦レヴィーナさんの元へ集まった。



「何かあったんですか?」


「え? あ、いや……別に大したものじゃ無いんだけど、何か変な紫色のインクがあるなーって思ってね」



 紫色のインク……?


 別に、確かに大した事では無いが……違和感はあるな。



「確かこのインク、前に“呪占迷宮”の地下で《十二神将》と戦っていた時も見た気がするのよねぇ……」


「すいません! それ、見せてもらっても大丈夫ですか?」



 そう言いながらこちらへ戻ってきたのは、ルヴェルフェさんの弟子であるスレイドさんだ。


 スレイドさんは額に汗を浮かべながら、レヴィーナさんに問い詰めた。



「えっ? いや、別に私のモノじゃないから見るくらいいいわよ」


「ありがとうございます。…………………」



 感謝を述べるとすぐにスレイドさんは、床に染み付いた紫色のインクを見入り始めた。


 さらに同じタイミングで、アスモフィさんが声を上げる。



「来たぁっ!! ついに見つけたわよッ!!」



 ッ!?


 びっくりした……けど、一体何を見つけたって言うんだ……?



「おいおい、急に叫ぶなよなァ?? そんで、何が見つかったってんだァ?」


「ふふん、サタール。私ってば天才だからね……少しだけ謎が解けたわよ」


「謎……? 何だ、もったいぶらずに早く言えよ」


「まあまあ、そう焦らないで。心配しなくても、ここに魔力を流せば―――」



 そう言って、アスモフィさんは壁に手を当てて魔力を流し込んでいた。


 すると、紫色に光る魔法陣が、そこには浮かび上がっていた。



「ッは……おいおい、マジかよ」


「マジよマジ」


「なァ、ちなみに何でこれがあるって分かったんだ?」


「決して……勘では無いんだけどね? まあ……魔力の痕跡通りに辿ってみたら、これがあったってだけよ」



 まさかアスモフィさん、勘……なのか??


 少しだけ怪しい気もするが……まあいいか。



「なるほど……これは」


「どうしたんですか、スレイドさん」


「ああ、一つだけ分かった事がありましてねぇ」



 紫色のインクを見ただけで、何か分かったと言うのか……?


 とりあえず、聞いてみるか。



「それで……一体何が分かったんですか?」


「別に、大した事じゃないんすけど、これは確実にルヴェルフェ様の残した痕跡ですね……っていう」


「なるほど」



 確かに……申し訳ないが大した事では無いな。


 だが、これであの魔法陣の先に、確実にルヴェルフェさんや兄貴達が居るという事が確定したような物だ。

 それなら行幸だろう。



「みんな、いい?」



 と、そこへ声高にアスモフィさんがやって来た。


 明らかに未来さきが見えてきてテンションが上がっていると言った様子だ。



「この魔法陣は転送用魔法陣になっているから……多分この魔法陣の向こうに、きっと居るわ」



 ……遂にここまで来たのか。


 やっと……兄貴たちに会えるな。



 ここまで追い詰めたんだ。


 きっと……ここで最後にしてみせる。



「準備はもうよさそうね……それじゃあ、行きましょうか! みんな、お姉ちゃんについてきなさい!!」


「了解!!」



 そう言って、次々と魔法陣の中へと足を踏み込むメンバーの皆さん。


 その様子を、俺は最後まで眺めていた。



 そして……少しだけ深呼吸をして、それから俺も魔法陣の前へと立つ。




 ―――さあ、兄貴。そろそろとっ捕まえて事情を全部聞き出してやるからな……!首を洗って待っててくれよ……ッ!




 そんな、期待と覚悟の入り混じった感情を胸に、俺は力強く魔法陣の中へと入っていった。



 この先に待ち受ける、真の恐怖もまだ知らずに。

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