case.13 作戦決行
シュインシュイン!キンキンキン!
『―――クハハハハッ! お早う諸君ッ! 気持ちの良い太陽だなッ!!!』
護王国シュデンの空に、拡声魔法すら使わずに、尋常じゃない声量の大声が響き渡る。
その声に、国中の民が惹かれ、何だ何だと皆揃って外へ出てきて、空を見上げた。
空には、一人の男がいた。
誰かのいたずらだろうと民が呟いたが、そんな考えはすぐさま吹き飛んだ。
一体どういうことか。
その男は突然身体を、大きくさせ、さらには金色のオーラ……つまり民たちが信じていた神の力……神力が目に見えたからだ。
『それでは僭越ながら、名乗りを上げさせてもらおうッ!!』
国中の民の視線が、男のもとに集まる。
『我が名は、インドラ。《十二神将》が一人、“神帝インドラ”であるッ!!!!』
そう、男とはもちろんインドラの事だった。
さあ、まずは第一段階。
インドラが名乗りを上げる所だ。
続けて第二段階に行こうか。
『さて、突然で申し訳ないのだがな。今この国では、反乱が起きているのはもう見て分かるだろう?』
インドラがそう言うと、民たちは当然分かっているように、何も反応を示さなかった。
インドラは続ける。
『そう……この反乱の原因は、ズバリ言うと、この国の在り方にある。この国の、悪しき政治の手から民草を救うべく、我ら天の者がこうしてやってきたのだからなッ!!』
そうインドラが言うと、少しだけ反応が遅れたものの、民たちからはとてつもない歓声が上がった。
「神が、我らを守ってくださるの……?」「やっと俺たちは解放されるんだな……!」「ああ、神よ……どうか孫をお救いください……」
と、民は三者三様……もっと多いだろうが、とりあえず色々な反応を見せていた。
さあ、第二段階のメインディッシュだ。
それを実行するべく、インドラは天に光を放った。
『―――出でよ、我が忠実なる下僕。天の聖なる騎士よッ!!!』
そう叫ぶと、今度は一人の天使が空から現れた。
これはもちろんミカエラの事だ。
俺たちはこの作戦を知っているから、当然分かっているが、この国の民たちは何が起きているか、まだ全然理解できていないはずだ。
しかしミカエラは、そんな民たちに考える暇すら与えず喋る。
『私は神帝様の忠実なる下僕。これより“裁き”を執り行います』
裁き……すなわち国の上層部をたおす事だ。
しかし当然、そんな事をこの国の民は知らない。
『さあ、行きなさい“徹底抗戦軍”の諸君。この国に、光を取り戻すのですッ!!』
手を下し、ミカエラが反乱軍に突撃の合図を出す。
今度は反乱軍たちの歓声が「うおぉぉぉぉぉっ!」と上がり、その声は城へと集中していく。
さらに俺は、このタイミングでインドラへと通信魔法を入れた。
一つだけ、とあるお願い事をする為に。
(―――ふむ、なるほど。我はこのまま空にいながら、“アイツら”にその連絡を入れればいいんだな?)
―――ああ、頼めるか?
(構わんぞ。我に任せておけ)
―――助かる。それじゃあまた後で。
そう言って俺は、通信を切った。
さっさと次の行動を起こさないとだからな。
さて、この後は作戦の第三段階……メインディッシュの実行だ。
次は俺と、アマクサ・イクサの出番がやってくる訳だ。
「さて、お前たち。準備は出来ているか?」
俺は後ろにいる二人に声を掛けた。
「―――俺はいつでも」
「―――俺も行けるぜ」
「よし、それじゃあ行こうか」
言葉を少なく、俺たちは歩き出した。
「ようやく……この長い戦いにも決着がつくんだな……」
「ああ。ようやく、俺達にも夜明けが訪れるぞ」
準備は完璧に整っている。
インドラには“アイツら”へと連絡を入れてもらってるし、後は俺達とミカエラが城へと乗り込むだけだ。
とは言ってももうミカエラは先に乗り込んでいるはずだがな。
まあともかくだ。
早速俺たちも城へと向かおうか。
楽しいパーティーの始まり……だな。
■
《シュデン城城内にて》
「おいッ! 一体何が起こっているんだッ!」
「分からぬッ! だが……絶対にこの状況はマズい……それだけは分かる」
「じゃあどうするのですか?! このままじゃ我々は―――」
国の上層部……政治の中心人物達は、城内の円卓の会議室にて、全員集まっていた。
小さく、身を寄せるように集まって小声で話し、今のこの状況を危険視している。
会議室の扉は重厚な作りになっていて、金属製よ重い扉なのだ。
しかも、大きな留め具も付いていて、簡単に開けることは出来ない代物である。
だからこそ、彼らは安心していた。
まさかこの部屋に、反乱軍の奴らが入ってくることなど、有り得ないだろう、と。
しかして、彼らの願いは届くこと無く―――
「―――“裁き”」
シュインシュイン!という高速の斬撃音が響いたと思えば、直後、重い扉が、非正攻法で開かれた。
細切れにされ、ガラガラと瓦礫が積み重なるように壊れていく。
「―――ヒイッ……!」
「あら、そんなに怖がらないでくれるかしら? 別に殺して食べる訳じゃないんだし」
煙の中から現れたのは一人の女性。
先程、天から裁きを降すと告げた、一人の天使だった。
「殺さないなら、何をしにきたというのだッ!!」
貴族の一人が、天使に向かって叫んだ。
それにミカエラは答えない。
が、代わりにこう言った。
「ま、それは私じゃなくて、彼に話してもらうことにしましょう?」
「彼……? まさか、さっきの神帝とかいうふざけた―――」
喋っていた男は、扉の残骸をふみつけて歩いてきた男を見つけた。
それを見て、話すのを止めてしまう。
「あら、思ったより早い到着だったのね―――」
ミカエラも、男の存在に気づいて後ろに振り返る。
「―――魔王様」
「こほん。あー……――――――フッ、待たせたな」
満を持して、完全魔王ロールプレイ状態の俺の登場である。
久々のロールプレイ……少しだけ楽しんでやろう。
折角の機会だしな。
「なっ……何者だ貴様はッ!!」
「俺か? 俺は―――魔王だ。魔王、ルミナス。それが、俺の名だ」
「魔王……だとッ!? い、いい加減な事を―――」
「煩い。俺の事はいいのだ。それよりも、お前たちに是非とも話がしたいという連中が居てな? さあ、入ってこい」
男の言葉を遮って、俺は後ろに待機させていたアイツらを呼んだ。
呼ばれて、後ろから二人の男が現れる。
その二人を見た男たちは、さらに驚愕した。
「なっ……何故お前たちが……ッ!」
「―――何故? 今、何故と言ったのか?」
「―――ふざけるなよッ!!! 貴様らがした事で、一体何人の民が苦しんでいたか……分かっているのかッ!!」
「ヒッ……!」
二人の男は、貴族の男に向かって怒声を放つ。
そしてさらにそこへ、また新たな人物が二人も現れた。
後方、扉のあった位置に二人とも構えているようだ。
その二人の男は、俺がさっきインドラに頼んで呼んでおいた二人だ。
早めに到着したようで、良かったぞ。
さあ、そろそろ終幕と洒落こもうか。
「―――お前たちも、早く来い」
俺は、そいつらも呼んだ。
すると、その二人は俺の横に並び立ち、そしてその二人を見た男たちは、さらに驚愕して腰を抜かしてしまった。
「あ……あ……あ……有り得ない……。どうして……何故お前たちが……ッ!!!」
「ベルゼリオ……ッ!」
貴族の男に名前を呼ばれたベルゼリオだが、ヤマトを伴ってこの場に現れた。
そして男たちに目もくれず、俺の元で跪くと、
「―――我が主よ。到着が遅れ、申し訳御座いませんでした」
「我らは、如何すればいいのかな?」
そう詫びを入れつつ、下からベルゼリオが、そして立ったままのヤマトがそう聞いてきた。
「フム、そうだな」
俺はそう言って考えながら、この戦いの発起人であるアマクサたちの方を見た。
「―――判断は全て、彼らに委ねるとしよう」
「畏まりました。全て仰せのままに」
さて……アマクサたちがどういう判断をするのか。
まあ、何を言われても、俺はそれに従うつもりではあるけどな。
後は、それをこの国の民たちに見せつけられればいいのだが……。
それはインドラがうまくやってくれるはずだ。
まだこの場に居ない、あの二人が居れば……多分シュデンの国民にこの戦いは伝わるだろう。
ククク……楽しくなってきたじゃないか。
この国の悪を裁く。断罪だ。
魔王として、コイツらには一度魔族の怖さを知ってもらわないとな。
コイツらには過去に一度借りがあるし……それも含めて、この戦いのゴールを目指すことにしようか。
魔王の力を、存分に思い知るといい……。
ブクマと高評価をぜひお願いしますね!




