case.11 夜明けの煙柱
これで180話目だと思います
「よし……決めたぞ」
「え?」
師匠による二日間の修行を終え、俺たちは再びログハウスへと集まっていた。
そこで師匠……いや、“ヤマト”は言った。
「―――例の件についてだが……」
「例の件?」
状況を全く分かっていない俺以外のメンバーが疑問を浮かべ、その気持ちを代弁するようにミカエラが言った。
それにヤマトは答える。
「ああ。例の件と言うのはな―――」
■
「へぇ、そういう事ね」
「まさかヤマトさん、アンタそれに僕たちも介入するとか言うんじゃ無いよね?」
「馬鹿かルヴェルフェ、師匠は我らに、対ハーデス用の訓練をしてきたのだぞ? そんな事をした直後で、他のことにシフトチェンジするなど―――」
「―――有り得るとしたら?」
意味有りげにヤマトは問う。
「え……?」
当然、ベルゼリオは戸惑った。
そこで俺は一つだけ質問をした。
「そう言えばお前、シュデンを支配出来たんじゃなかったのか?」
「―――あぁ。それでしたら、事はうまく進んでいた筈なのですが……まさか反乱軍が動き出していたとは……」
「……知らなかった、か。まあしばらく離れていたからな、しょうがないか」
「申し訳無いです……」
ベルゼリオが申し訳無さそうに頭を下げるが、そこに今度はヤマトが言った。
「さて、話を戻すぞ?」
「あ……はい、師匠」
「それでは早速言おう。単刀直入に言わせてもらうが―――」
ヤマトはそう言って、森の外を指差してから、少し溜めてこう言ったのだ。
「―――シュデンの反乱に介入するぞ。修行の成果の見せどころだ」
「うわ……やっぱりじゃん」
ヤマトの当然のようなその言葉に、分かってたようにルヴェルフェが落胆した。
しかしそんな様子もすぐに変わって……
「―――ま、確かに修行の成果を見せる場としては充分か……!」
「ああ、そうだな。我も再びあの国に戻れるいい機会だしな」
「私も……うん、まあ楽しみね」
「ああ、我が鍛え上げたその神の力を見せてみろ!」
「ふふ、貴方も頑張ってたのね……! それならルヴェルフェ、私たちの特訓の成果も見せるわよ」
と、全員意気込み新たに、シュデンへ向かうことに合意したのだ。
かく言う俺も、もちろん同意だ。
「ほほ、それじゃあ早速向かうぞ?」
「ああ、そうだな。早く行かないと何が起こるか分からないしな」
「ああ、そういう事だ。では行こうか―――護王国シュデンへと!」
「「「了解ッ!!!」」」
一行がシュデンに向かって森を出た時、日はもうすでに、天高くにまで上ろうとしていた。
■
《護王国シュデンにて》
「―――間もなく、夜明けだ」
「ああ、ようやくこの時が来たな」
アマクサの呟きに、イクサが反応した。
今、この地下の会議室にいるのはアマクサとイクサの計2名。
他の反乱軍の面々は、それぞれ持ち場……シュデンの城周辺の侵入経路前にポジションを取っている。
その数およそ1000。
対する騎士軍の数は約5万。
有り得ない程の数の差だが、こちらには“スキル持ち”が多数いる。
それに、レベルもほとんどが70を超えている。
騎士軍の一人一人のレベルは大体50程度。
これならまだ勝機があるように見えてくるが、まだ油断は禁物だ。
「俺たちも外へ出るぞ」
「ッ……ああ」
アマクサたちは地下から外へ出て、城へと続く一直線の道へと立った。
回復薬の準備も出来ている。
まさに準備万端、いつでも仕掛けることが出来るのだ。
アマクサのレベルは80前後。
そしてイクサのレベルは100超え。
2人を筆頭として、“徹底抗戦軍”は攻撃を開始する。
その開始の合図は簡単だ。
たった一発の発煙筒。
それが、開戦の合図。
まだ時刻は深夜3時。
当然城の警備は薄くなっていて、簡単に現国王の下へと辿り着けるだろう。
勝負は敵軍勢が整うまでの約一時間から二時間。
その僅かな時間で敵を全滅させる。
それが彼ら反乱軍の目標だ。
「―――アマクサ、準備はいいか?」
「もう……行くのか?」
「……あぁ。開戦と行こうじゃないか」
「……分かった。俺はいつでも行ける」
「オーケー。それじゃあ早速行こうか」
そう言いながらイクサは一本の筒を取り出した。
発煙筒だ。
「3……2……1…………」
イクサがカウントダウンをした直後、0を言い切る前に音が鳴った。
―――ブシュッッ!!!
「0……ッ! 行くぞアマクサ……“徹底抗戦軍”の反撃開始だッ!!」
「……応ッ!!」
一本の白き煙柱が立ち上り、それと同時にイクサが駆け出した。
少しだけ考えたあと、アマクサも共に駆け出した。
さあ、いよいよ始まる。
―――王国奪還作戦の開始である。
■
《魔王達一行視点》
「さあ、外へ出るぞ」
「ああ」
ヤマトに着いていき、森の外……ドライガルへの入口のあの魔法陣の所へ辿り着いた。
そしてヤマトは、何の躊躇もなく魔法陣の中へと足を踏み入れる。
それに続いて他のメンバーも、魔法陣の中へとぞろぞろ入って行った。
最後まで残った俺も、別に何も考えずに魔法陣の中へと入る。
一瞬だけ視界がくらみ、しかしすぐにそれは回復した。
そして入ってきた時と同様の、細い路地を抜け出て、町中へと進む。
そこで俺たちが見たのは、悲惨な光景だった。
「―――は……? 嘘だろ……?」
「いや……どうやらこれは―――」
「クソ……間に合わなかったのか……ッ!」
「これはまた、結構酷い状況だね……」
「匂いもキツイし……どうなってるのよ」
俺たちがそれぞれの反応を見せる中、悪臭立ち込めるシュデンの町中で、ディラとリアの二人がとある物を見てこう言った。
「ふむ……これは硝煙の匂い……か?」
「そうね……それもまだ新しい……という事は―――」
硝煙の匂い……? 新しい……?
って……まさか……ッ!
「―――まだ戦いは続いている……?」
「だが一見すると……」
ヤマトは辺りを一瞥しながら、言った。
確かに辺りの状況は酷かった。
何が酷いかと言うと、もう悪臭という時点で予想がつくかもしれないが、そこらかしこに人の“死体”が転がっていたのだ。
首がはねられていたり、剣が串刺しになっている騎士の死体が大半だったが、一部、軽装の竜人族も居た。
反乱軍……というくらいだから、おそらく騎士側が攻撃対象……つまり軽装の方が反乱軍なのだろう。
そして今のディラたちの言葉で、銃がある事も分かった。
“硝煙”の匂いって言ってたもんな。
「我が主よ……アレをご覧ください……ッ!」
「アレ……?」
ベルゼリオが突然、遠くにある城を指差しながら言った。
よーく目を凝らして見ると、そこにはもちろん窓があったのだが、その窓から人が何人も落ちてきているのだ。
「人が落ちている……? いや、落とされている?」
「ちょっとそろそろ考えるのもやめた方がいいんじゃない……? 魔王様」
「ッ……そう、だな」
「とは言っても、まずはどうするの?」
「フム……それなら二手に分かれて左右に回りながら城へと向かうのが良いだろうな」
「二手に……?」
「ああ。国内の様子を見ながら、件の城へと向かうのが恐らく一番良いかと思われるが」
窓から人が落とされているこの状況で、ヤマトは悠長にもそんな事を言い始めた。
「だが……それだと―――」
「―――なら、三手に分かれれば良いんじゃない?」
「三手……?」
「ええ。私と貴方で城へ直接向かって、他の人たちは二手に分かれて左右に回りながら城へと来ればいいわ。冷静に考えても、城が最優先でしょ? だから少数戦力で突っ切るチームも必要なはずよ」
「ミカエラ……! ―――ああ、そうだよ。そうだよな。よし、俺たちは俺たちで城へと突っ切ろう!」
良かった。
時間が無いのをミカエラは分かってくれたみたいだ。
「ほほ……そうか。では我はベルゼリオと共に右手側から回ろうか」
「あ、私とですか……? 分かりました、行きましょう、師匠!」
ヤマトはそう言うと、ベルゼリオを伴ってその場から右手側の道に去っていった。
そして、
「それじゃあ私たちも行きましょう? ルヴェルフェ」
「え、あ……僕? まあ、いいか。分かったよ
それじゃあ行こうか」
リアがルヴェルフェを連れて左手側の道へと去っていった。
するとこの場に残ったのは必然的に俺とミカエラ……そして―――
「あー……済まないな。我も連れて行ってくれるか? どうやら我、ハブられてしまったようでな……」
「―――あーあ、折角の二人っきりだと思ったのに。ま、やっぱり私にはそういう運命があるのかもね……」
残念そうにそう呟いたミカエラは、振り返って俺たちに向かって微笑むと、
「いいわよ、三人で城へ突撃しましょ?」
「フッ……本当に済まないな。恩に着るぞ」
「それじゃあ俺たちも行きますか……!」
「「了解!」」
かくして三チームに分かれて城へと向かうことになった俺たち。
この国で一体何が起きたのか……その謎を早く解き明かそうじゃないか。
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