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case.6 動揺と安心、そして本心

みかんとこたつは最強卍



「なんか……色々とごめんなさいね」


「い、いや……気にするな」



 俺とミカエラの間に流れる空気が、凄い微妙な緊張感を漂わせる物となってしまった。


 多分、さっきの“アレ”が、そうさせたのだろう。



 一体どういう訳であんな事をして来たのか分からないが、先程見せたあの涙が、少しずつ答えを照らしていた。



 と、そんな状況の中。



「―――おし! 我は水を浴びて綺麗になったぞッ! ……と、フハハ、邪魔だったか」



 インドラが戻ってきた。


 のだが……



「え……? って……ミカエラ!」


「ふぇ……?」



 気づけば、ミカエラもいつの間にか俺の胸の中へと戻ってきていた。



「ひゃぁっ! ごっ、ご、ご、ご、ごめんなさい!」 


「いや、だからあんまり気にするな……よ?」



 返答に困って、ちょっと適当に答えてしまったが、それはつまり、それだけ俺が戸惑ってしまっているということの証明でもあった。



「クハハ! お前たちはよほど仲が良いんだな!」


「―――それは無いわッ!!!」


「えっ……?」



 そんなに力強く、しかも即答で否定されると、それはそれで悲しい気が……。



「それは……有り得ない筈なのよ……!」



 しかし、そう言うミカエラの表情が、俯いているせいで見えなくて。


 まさか、顔を真っ赤にしながら言ってるなんて、今の俺には想像もつかなかったのだが。



「そ……そうなのか? まあよい……」



 そう言って腕を組み、俺たちの前に立ったインドラは、改めて名乗りを上げた。



「あー、改めてだ。我は《十二神将》が一人、神帝インドラと言う者である。現在は身を隠す為、“ディラ”と名乗ってる。今後我の名を呼ぶ時は是非そう呼んでくれ」


「えっと……宜しく?」


「ああ、宜しくだ!」



 ガシッと勢いよく握手を交わす俺たち。



「ところで……何だか」



 と、そこで俺はついにずっと気になっていた事をディラに聞こうと口を開いた。



「うむ、どうした?」


「単刀直入に聞く。―――ここに来るまでに、何が起きた? それだけが、ずっと気になっていて……」


「ああ、そういう事か。それなら、今から詳しく説明しよう。一応、我は今回の事件の首謀者でもある訳だからな」


「宜しく……頼む」



 それから俺は、ディラによって“呪占迷宮”で起きた事件や、それから俺と白夜の元に現れた謎の生き物の事、森で暴れていた魔帝八皇の皆やインドラ・ガネーシャの事、堕天使化したミカエラがラグマリアとラージエリという二人の天帝八聖を殺しかけ、俺との戦いで共倒れした事など…………



 あの迷宮、そして森で起こった事件の全てをディラから聞いた俺は、頭を抱えた。



 やっぱり、あの場所で起きていたことは只事じゃなかったんだ。



 俺以外の奴らも、中々大変な事になってて……特に一番、今現在マズイのが―――




「私が……二人を殺した…………?」




 ミカエラだった。


 話を聞いてから、ミカエラの様子はさっきからこの調子だ。



 どうやら今ここには俺、ミカエラ、ルヴェルフェ、ベルゼリオ、そしてディラとリア、それにヤマトという人物しか居ないようなので、ミカエラが気にしている“ラグマリア”と“ラージエリ”という《天帝八聖》の仲間たちは、白夜やレヴィーナ辺りに連れて行かれたのだろうと思う。



 しかし、それが逆効果となって、逆に二人が居ないことでミカエラの不安感は加速し、自らを疑心暗鬼状態に陥れていた。



 先程からディラのヤツが「死んではいない」と説明しているのだが、どうにも信じきれないようで、ずっと虚ろな目をしていた。



「殺すつもりなんて……」


「ミカエラ」


「な……んで……よ。私はただ、二人を守りたくて―――」


「ミカエラッ!!!」



 いつまで経っても話を聞かないミカエラに対して、ついに俺は声を荒げてしまう。


 だが、お陰でミカエラは身体を硬直させながらも、こちらを恐る恐る見てきた。



「大丈夫だ、ミカエラ。二人は、生きている」


「どうして……、どうしてそんな事が分かるの!」


「だって、そんなの―――」



 俺はそこまで言って、白夜や月夜、さらに回復と言ったら僧侶……つまりはアスモフィのことなどを思い浮かべていた。


 そしてそれが、俺の確信をより強固な物へと変えていく。



 だから、自信満々に言い切った。



「だって―――向こうには、俺の認めた“勇者”や、《七つの美徳》の天使様……他にも俺の大切な仲間たちが沢山居るんだ。ディラがまだ死んでいなかったと言っている以上、あとはそっちを信じるしか無いだろ?」


「―――ッ……」


「それにさ、まだ死んでなかったってことは……。―――俺がお前と戦いながらも、ずっと二人を庇いながら治療してたのが幸を成したのかもな!」



 俺が、そう言った瞬間だった。



 ぶわぁっと、一気に風が吹き抜けていき、俺たちの髪を揺らした。


 気づけば、ミカエラは涙をこぼしていた。




「―――また、貴方が……」




 ミカエラが、そう呟いたかと思うと今度は、



「そうよね。うん……貴方がそう言うんだもん。何だか自信がついてきたわ……!」


「ああ、その調子だ」


「よし……それじゃあ、しばらく眠ってたみたいだし、身体を動かすわよ!」


「え……? あ、ちょ―――」



 そう言うと、ミカエラは俺のことを引っ張って、だだっ広い草原を駆け出した。



「フハハ、かけっこか! なら我が鬼となろう!! 逃げてみるがいい!!」


「わー!!! ほら、魔王! 早く逃げるわよ!」


「……ったく、分かったよ!」



 楽しそうにはしゃぐミカエラに誘われるがまま、俺たちは駆けた。



 さっきまでのミカエラとはまるで大違いだが、やっぱり悲しむ顔より、笑っている顔の方が綺麗だ……そう、不意にも思ってしまったのだった。






―――バクンバクンバクンバクンバクン・・・




 どうしてだろう。


 さっきから心臓の鳴る音が止まらない。



 別に、具合が悪いとか、そんなんじゃない。



 ただ、とても苦しい。


 切ない。



 この気持ちは、やっぱり―――




 さっきの彼の言葉。


 ディラから聞いた話。



 私に関わる話の全てに、彼が居る。


 そしてそのどれを聞いても、彼が私を助けてくれたのは分かる。



 私だけじゃない。


 私の姉妹まで助けてくれた。



 自分が傷つこうとも気にせず、私たちを救うために、死力を尽くしてくれた。



 何故だろう。


 あの日、たまたま出会っただけなのに。



 その日から、私の全ては狂っている。



 最初から彼と出会わなければ、何も変わらなくて済んだのに―――




 でも、そう思うと、胸の奥がチクリと痛む。



 彼と出会わなければ……、そう思いたくない自分が心に住んでいる。



 前に彼から聞いたことがある。


 彼には、愛する人がいるらしい。


 それは、彼がこの世界に来てからすぐに出会った少女で、ずっと一緒にいたらしい。



 それを聞いても、思い出しても、胸がズキリと痛む。


 どうやら、嫉妬しているらしい。



 そんな訳、ある筈が無いと思っていたのに。



 どうやら私は、もう―――




(……彼のことが好き。好き。好き。独り占めした。私のそばにだけ居てほしい。好き、好き、好き、好き好き好き好き好き好き好き好き―――)




 ―――壊れてしまったみたいだ。




 気づいてしまった。


 一番気づいてはいけない事実に。



 もう、この想いは止められそうにないや。



 だから私は、何としてもその少女が居ないうちに、彼を仕留める。



 ワタシだけのモノにしてみせる。




(大好きだから。私は貴方の為なら、何でもするよ。貴方が私の事を助けてくれたように……ね)



人生山あり谷あり

ブクマも高評価もほしいヨクバリスと化した

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