case.3 消えた里の行方
コミケ一日目ですね!
まあ僕は行きませんけど
「ホントにただの森だな……」
こんな所に何かあるとは到底思えないが……
『―――何者だ。なぜ我の後をつける』
刹那、首元に突きつけられる金属の香りが、僕の鼻を襲った。
「誰だ……?」
尋常じゃない殺意と、全く感じることの出来なかった気配。
僕たちは、もう随分と森の奥まで進んでいた。
『如何様か。それだけ答えるが良い』
「ぼ……くたちは」
淡々と並べられた言葉の一音一音に、ハッキリとした殺意が乗せられている。
本気で、僕たちを殺そうとしている。
正直に答えないと、僕は確実に殺されるだろう。
だが、かくいう僕にも、嘘をつく理由は無い。
シンプルに今の目的を言えば―――
そう考えた直後だった。
「―――師匠!!!」
「し……え?」
ベルゼリオが、僕の背後で構えている人物に向かって、そう言ったのだ。
「ぬ……御主、まさかベルゼリオか……?」
「はっ。我はベルゼリオに御座います」
「ほほう……こりゃまた懐かしい顔だなぁ……」
依然として僕の首元には剣が突きつけられているが、ベルゼリオと“師匠”と呼ばれた人物の会話は続いていく。
「あ、あの……流石にそろそろコレをどかして貰えると……」
「ならん」
「……え?」
「ならんと言ったのだ」
何故だ…………何故……!?
「理由を……聞いてもいいですか」
「貴様からは邪気を感じる。貴様のような輩が、一体どうしてこんな森の深奥まで来ようか」
「あー……そういう」
ってことは、理由をちゃんと説明した方が良さそうだな……。
「フン、厄介なジジイが師範様と来たわけだ」
「そうね。ちゃっちゃと説明なさい、ルヴェルフェ」
なんて他人事のようにディラとリアが言ってくるもんだから、少しムカついたが、そこは何とか冷静になった。
そして僕は、じいさんに事の顛末を話し始めたのだ。
■
「ほほ、そうかそうか。我を探しに来たとな。それは済まないことをしたな。この通り、キチンと詫びさせて貰おう」
「ああいや、別にいいですよ。それよりも、やっぱり貴方が……」
「ああそうだ。我こそが、《龍の隠れ里》に君臨した“龍神”、名をヤマトと申す者だ。宜しく頼むぞ」
ヤマト……そう名乗ったじいさんは、自己紹介を丁寧にしたあと、
「ひとまず、落ち着いて話が出来る場所へと向かうとしよう。こっちじゃ、着いて参れ」
そう言って、僕たちを森の、さらに奥の方へと導いていった。
気づけば森を抜け出て、一つの大きな草原へと辿り着いた。
そして丘の上には、一軒のログハウスが立っているのが見える。
「あそこじゃ」
ヤマトはそのログハウスを指差しながら、再び歩を進めた。
僕たちはそれに従って後を着いていく。
その間特に何事も起きず、気づけばあっという間にログハウスへと到着していた。
「ささ、入れ入れ」
「お、お邪魔します」
言われるがままログハウスの中へと入っていくと、本当に一人暮らしなんだろう、と実感出来るほどの空気が漂っていた。
家具も全体的に古くさいモノで統一されていて、逆にそれが哀愁を感じさせていた。
「何も出せなくて済まないが、早速話をしようじゃないか」
「ああ、お構いなく」
用意された木の椅子に、僕とベルゼリオは腰掛けた。
そしてディラとリアだが……
「フム、この地はなかなかの魔力量だな」
「ええ、自然治癒力が向上してくれるから、助かるわね」
「怪我人の治療ですかな?」
「ああ。もしよければ、治療器具や薬品があれば助かるのだが」
「それでしたら……」
と、ヤマトは戸棚から一つの木箱を取り出して、それをディラに渡した。
「そこに、里秘伝の霊薬や、傷薬が入っております故」
「済まない、ありがたく頂戴しよう」
「いえ。そちらの方々……特に男性の方には話をするべきだと、我の直感が告げている故、気にせず使ってくだされ」
「感謝する。それでは我らは二人の集中治療に入る。お前たち、邪魔をするなよ」
と言い残して、バタンと出ていってしまった。
部屋には僕とベルゼリオ、そしてヤマトが対峙する形で取り残された。
閉じていた口を最初に開いたのは、ヤマトだった。
「して……如何様で我を探していたのだろうか」
「師匠。それは私から話させてください」
「ああ。聞かせてくれ」
「私は……私たちは強くなりたいのです。強くなりたい……そう思った時、真っ先に師匠の事が頭に浮かびました。そう思ったからこそ、私たちは《龍の隠れ里》へと向かって来たのですが……」
「着いた先は、意味不明なロボットがうじゃうじゃいる超大国……という訳だ。これは一体どうなっている?」
僕は、ヤマトにそう聞いた。
するとヤマトは、拳を強く、硬く握り締めた後、重々しく語り始めた。
「―――あれは、つい最近の事じゃった」
そう言ったのを皮切りに、ヤマトは今まで里に起こった出来事を、淡々と並べていった。
「昔は、長閑な里じゃった。それこそ、ベルゼリオが居た頃は特にな。だが、ある日突然、“ハーデス”を名乗る死神が現れてな」
「ハーデス……だって!?」
「ヤツが、里を滅ぼし、代わりにあの様な国を築き上げた。国の名は、《電子大国ドライガル》。そして住民は、全て人の手によって生み出された無機質な機械人形共……。里は変わってしまったのだ」
続けてヤマトは言う。
「里の生き残りは我、ただ一人じゃった。どうにかして復讐をしようと誓った我は、魔力が多いからとハーデスによって取り残されていたこの森の奥にある、秘境の中の秘境……《神秘の草原》にこのログハウスを建て、そこで一人、復讐の機会を虎視眈々と狙っていたんじゃ」
「一人で……ずっと……」
「そんな訳で、里の行方と、我がどうしてここに拠点を構えているかの説明をした。そして今の話を聞いてもらって分かったと思うが、我の目的と御主らの目的は、噛み合っている。故に我は提案しよう―――」
ヤマトは勢いよく立ち上がり、そして手を伸ばして言った。
「我と、共に戦ってはくれないか? もちろん、御主らに稽古はつけよう。我に出来る事なら何でもする。だから……あのハーデスとかいうイカレた死神を殺すのに、協力してほしい!」
「あー……」
なるほど、そう来たか。
確かに、僕たちの目的は“修行”だ。
だが、ハーデスを倒すのに協力するとなると……。
「―――分かりました、師匠ッ! なあルヴェルフェ、良いだろう!?」
「……」
クソ……この考え無しが……。
だがまあ……いくら考えたところで、結局答えは一緒だったろうがな。
答えはもちろん……
「イエスだ。僕たちも喜んで協力させてもらおう」
「……有り難う。有り難う……ッ! この御恩、いつか必ず返させて貰おう……!」
「いやいや、そういうのは戦いが終わってから言うもんだろうに……」
そんなこんなで、僕たちの今後の方針が確定したのだった。
《十二神将》……その中でもかなりの力を誇る最強の神、ハーデスを倒す……。
なかなかに骨が折れそうなミッションだが……
それでも、僕たちは戦わないといけない。
「さぁて……一体どうなることやら―――」
―――何だか少しだけ楽しくなってきたぞ。
ブクマ…………!!!(懇願




