case.12 重なる偶然、もしくは必然
ねむい
《ルヴェルフェ視点》
「ハァ……ッ……ハァ……ッ! どうして僕がこんな目に……ッ! 何なんだよ……一体……ッ!」
僕は今、とある敵に襲われている。
ソイツから全速力で逃げ、気づけば幾つかの滝が流れる洞窟へと辿り着いていた。
そもそも、どうしてこんな逃げているかと言うと……
―――話は遡ること数十分前。魔王が洞窟でキメラと、そして天使達同士が森で、それぞれ邂逅を果たした頃まで遡る。
■
「―――いったた……」
思いっきり尻もちをついて着地してしまった僕は、その痛みに耐えながら、ゆっくりと立ち上がった。
「何が起きたんだ……? それに……ここは……?」
先程、軽い戦闘があった後、謎の声が響き、かと思えばその直後、僕たちのいた地面が崩落して……それで今ここにいる訳か。
それにしても、ここはどこだ……?
周囲を見渡せば、左右に小さな川が流れ、光る鉱石が辺りを神秘的に照らす、やけにジメッとした洞窟だった。
冷静に考えれば、“呪占迷宮”の中心部から落ちたんだから、ここは“呪占迷宮”……すなわち《中央商帝国アルマス》の地下という事になるか。
「クソ……考えてても仕方ない、か。それなら、他の奴らを探して移動するとしよう」
周囲に人の気配は感じられない。
となれば、移動する他ない。
だが無闇に動き回るのも得策とは言えない。
一応、誰かがここに来たときの為に、僕の分身を置いていこう。
「―――“分身作成”」
サクッと自身の“分身”を呪術で生み出し、今いる空間の中央に置いておいた。
これで、目印にもなるし、他の人への知らせにもなるだろう。
「さて、ぼちぼち進んでみますか……」
そう、独り言を呟きながら僕は、薄暗い洞窟を道なりに進んでいった。
■
「―――と、言うわけだ!」
「お……おう」
しばらく洞窟を歩いていると、一人の男と出会った。
ベルゼリオだ。
普通に道を歩いていたら、曲がり角でバッタリと出くわしたのだ。
ベルゼリオは、最初こそ驚いていたが、普通に話しかけてきて、あの後どうなったかを教えてくれて、今はこうして肩を並べて歩いている。
ベルゼリオも、あの広間から落ち、気づけば周りに誰も居なく、仕方なく進むことにしたらしい。
「して、我が主が何処にいるか、お前は分かるか?」
「いや、すまないな。僕もさっき歩き始めたばっかりで」
「む……そうか。まあ、致し方無い……な」
さて……僕はいつまでこんなジメジメした洞窟を歩き続けてれば良いんだろうか。
そろそろ、飽きたというか、疲れたというか……。
「そもそも、出口なんてあるのかよ……」
「まあ、信じるしかなかろう? それに、あの時あの場に居た奴らは、全員この迷宮の地下に居るはずだ。全員が集まるか、もしくは我が主を見つけるまではどちみち抜け出せないだろうに」
「それもそうだよなぁ……」
多分、あの魔王の事なら、僕たち二人を連れて、本来の目的である《龍の隠れ里》に向かうと言うだろう。
あのクソ天使はどうするのかは知らないが。
それでも、ベルゼリオの言う通り、どちらかを達成するまでは戻らなさそうだよなぁ……。
「ま、別に僕はそれでもいいんだけどね」
「ウム。それでは先に進むとしようか」
とは言っても……目指す場所なんて無いんだけどなぁ……。
ま、いっか。
■
「「あ」」
最悪だ。
僕たちは、ソイツと出会ってしまった。
ベルゼリオは微妙な顔をしていたが、僕は少し気まずかった。
「ルヴェルフェ……なのね」
「まあね」
ソイツ……の名は―――
「レヴィーナ……どうしてキミまでここに……」
「それはこっちのセリフよ」
僕たちと同じく《魔帝八皇》の一人である、レヴィーナだった。
彼女とも、偶然バッタリと道角で出くわし、そして今に至る。
「ああもう……どうしてこう……」
「何よ、その反応。なんかムカつくわね」
「あーはいはい、でたでた。キミのそういう所が僕は嫌いなんだよね」
「なんですって……!?」
「―――止めろ、二人とも。こんなところで争っても仕方が無いだろう!」
う……確かに。
正論中の正論をベルゼリオに言われてしまって、僕もレヴィーナも反論出来ないでいた。
しかし、揃いも揃ってなんたる偶然か。
恐らく、これであの時あの場にいた《魔帝八皇》のメンバーは、奇しくも全員揃ってしまった。
「う……ん。聞きたいことも、言いたいことも色々とあるけれど……とりあえず取り急ぎこれだけ聞いてちょうだい」
「……何だよ」
「いいだろう。急用であれば、急ぎ給え」
「ん、分かったわ」
一体、どうしたと言うのだ。
昔から僕と同じく、適当で有名なレヴィーナが、こんなに真面目っぽくなるなんて。
「この天才のアタシが、この天才の眼で見た情報を、ハッキリと、嘘偽りなく話させてもらうわ」
「ああ」
「それじゃあ、言うわよ。覚悟して聞いてね」
何だ?
本当に一体何だと言うのだ?
別に、コイツが言うことなんて、どうせ大したことじゃ―――
「―――神帝インドラとかいう奴が、この洞窟に居るっぽいわよ」
は?
「む?」
今、この女は何と言ったのだ。
「すまん、もう一度聞かせてくれ」
「何度だって言ってやるわ。神帝インドラが―――」
「―――もういい。分かった、分かった」
……やはり聞き間違いなどでは無かったか。
神帝インドラが、この洞窟……いや、迷宮地下にいるだと……?
あのクソ神、こんなところまで追っかけて来たのかよ……。
僕がいらんちょっかいかけたばっかりに……。
「めんどくせぇ……」
「何がよ」
「はぁ? お前知らないのかよ」
「だから何をよ」
「神帝インドラって、《十二神将》の一人なんだぞ。それが面倒くさくない訳無いだろうが」
「《十二神将》……か。なるほどね、それは確かに面倒くさいわね」
それに、僕はこのメンツで奴に勝てるとは到底思えない。
「それにしても……よく見つからなかったな」
「いや、見つかったわよ」
おっと。
この女はまた何を言っているのだろうか。
「お前、見つかったって……」
「ええ、だから逃げてきたの」
「は……? 逃げて来たってことは……」
「おい……お前たち……! 多分……この気力……この気配は……ッ!!!」
おい、嘘だろ?
ふざけるのも大概にしろよ……?
「―――来る……」
「マジ? じゃあ私は先に逃げるわよ」
「は? おい待てッ!!!」
レヴィーナはそう言い残して、颯爽とその場を去ろうとしていた。
「おいルヴェルフェ! 我らも早く行くぞッ!!」
「は? いや、おい待て……って、ああもう!」
僕はベルゼリオに引っ張られ、やむなくその場を走り去る事になった。
しかしその直後、“ソレ”は現れた。
『クハハハハハハハハハハッ!!! 遂に……遂に見つけたぞッ!!!』
―――ドガーンッ!!という轟音と共に背後に現れ出たのは、そう、他でもない、神帝インドラだ。
あの巨体に筋肉、上裸のイケメンといえばもうコイツしか居ないだろう。
『この地で纏めて貴様らを葬ってくれるわッ!!! フハハハハハッ!』
そう叫びながら、インドラは洞窟の壁岩を破壊しながら高速でダッシュしてくる。
「おい、ベルゼリオッ!」
「無論、分かっているッ!」
流石にこのままでは追いつかれてしまう。
だからこそ、本気を出さざるを得ないのだ。
「チッ……こんなところで初出しとはな」
「我はいつでも構わんぞ!」
前方で先に疾走しているレヴィーナと、後方から高速でダッシュしてくるインドラを確認しながら、僕たちは迷わずにそれを実行した。
「いくぞ、ベルゼリオッ!」
「心得たッ!」
「―――『邪神化』ッ!!!」
「―――『龍神化』ッ!!!」
それは、僕たち《魔帝八皇》に与えられた、最強の強化スキル。
擬似的に神となる事のできる、最強スキル。
さあ、ここからが本当の逃走劇の始まりだ―――
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