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case.11 溜め込んでいたモノ

気合入れ直す



「姉さまだからと言って、容赦はしないわ」


「きっと我らの主神も見てくださっている……だから、何としても貴女に勝ちますッ!」



 ……それだけの覚悟があるということなのね。



 私としては、妹同然の二人と真剣勝負をする事に、少しだけ抵抗があるけど……それでも、守らなくちゃいけない物は守らなくちゃ。



 この地位を、奪われる訳にはいかないの。



 それが、二人を、仲間達を守り続けるために必要な事だから。





 ―――あんな事は、この二人には知ってほしくないから。





「―――いいわ、かかってきなさい。但しこちらも容赦はしないわ。主神あるじが見ているなら尚更ね」


「それでこそ姉さまです」


「いい?!」



 私は大声で二人に向けて言い放った。


 ビクッと、突然の大声に戸惑って硬直してしまう二人に、私は続ける。



「―――私は“自分を殺すわ”」


「え……?」


「だから……何としても貴女達に勝つ」



 救いを求めるようなその一声が、勝負のきっかけとなった。



 私はそう言い残したあと、高速で翼を羽ばたかせ、二人の下へと飛行した。



「“光輪こうりん”ッ!!!」



 私の手に、光の刃……それで出来た輪が生み出され、それを勢いよく投げつける。


 もちろんたったの一発程度じゃない。




「―――“光輪連撃シャイニーストライク”ッ!!!」




 無限の光輪は、鋭利な刃を伴って二人に襲いかかる。


 さらにそれを目くらましに、私自身もレイピアで突進していき、追撃をかける。



「二対一で―――」


「―――私たちが負けるわけないでしょうッ!?」



「「“双翼の羽撃きデュアルフェザーブレイク”ッ!!!!」」



 しかし二人は、私の攻撃をもろともせず、手を繋ぎ、まさに絆の力とも言える技で反撃をしてきた。


 天使の翼を羽ばたかせて、光の衝撃波を巻き起こし、私の放った光輪を撃ち落とし、私自身も後ろへ押し込んだ。



「……クッ……!」


「お姉ちゃんっ!」


「ええ、行きましょう!」



 そして後退せざるを得なくなった私に向かって、二人は速攻をかけてきた。


 やはり、二対一というのは流石に分が悪いか……。



「いや……諦める訳にはいかない……ッ!!」


「受けてみなさい……姉さまッ!!」



 前方にはラグマリアのみ。


 ……と、いうことはだ。


 私が一瞬だけ瞬きをしたその瞬間に、恐らくラージエリが後方に回っているのだろう。



 向こうの作戦は、きっと挟み撃ち。



「それなら……ッ!」



「「―――“双翼の挟撃デュアルサイドブレイク”ッ!!!」」



 来た……ッ!


 やっぱりラージエリは私の後ろから……!


 

 それは想定済みよ……ッ!!




「―――“天神光柱アマテラス”ッ!!!」




 刹那、私を“核”とした光の柱が立ち上がった。



 自身を完全に守る“光柱バリア”となるこの技は、主神の一柱である『太陽神天照大御神』様の加護わざである。



 アマテラス様の技は、まだある。

 ただ、名前が全て“アマテラス”だから一つ一つがなかなか覚えづらいが、私は全て完璧に記憶している。



「―――クッ!!!」



 私の力によって、ラグマリアもラージエリも吹き飛ばされて行く。



 手加減は一切しない。



 主神の方々から頂いた加護の力を、存分に使ってあげるわ……!




「―――“天叢雲剣ムラクモ”ッ!!!」




 再び刹那、二人を追撃するべく、紫の光が辺りを包み、その光中に一本の巨大な剣が生み出された。



 ―――“天叢雲剣あまのむらくものつるぎ”。これは、『熱田大神』様から頂いた加護わざだ。



 同様の技で、“草薙剣クサナギ”という技もある。



「キャァァァァァァァァァアッ!」



 二人とも私の攻撃をまともに喰らい、相当なダメージが通っているようだった。



「―――クッ……ズルい……わよッ!」


「……何がよ」



 私はその言葉にイラッとして、ついムスッと言い返してしまった。



「姉さまは……《異世界神話》の主神達かたがたから頂いた加護ちからが、何十……いや、何百とあるのでしょう?」


「そうよ? 私の主神あるじは、《異世界》から来たという、不思議な方々なの」



 《異世界神話》……それは、不思議な話だった。


 何と読めば良いのか分からない神々の名が連ねられたそれは、私にとって未知数であり、まさかそんな話に登場する神々が、私の“主神あるじ”になるとは思わなかった。




 代々、《天帝八聖》となる者には、一位から四位までの“上位クラス”と、五位から八位の“下位クラス”に分けられ、それは両者が納得した“決闘”でのみ変動するものだ。


 “下位クラス”には、“主神”となる神が付かず、その神々から“恩恵”として“加護”を授かることは無い。


 しかし、“上位クラス”のメンバーには、それぞれ“主神”となる神、もしくは神々が付き、その“加護”を授かることが出来る。



 現在一位は私、ミカエラ。

 二位はラフィーナ、三位はメタリア、四位はウリエナと続いている。



 そんな私の“主神あるじ”となったのは、さっきも言ったが、《異世界神話》と呼ばれる話に登場する、《ニホン》という国の神々だったのだ。


 八百万といる神々が私に“加護ちから”を与え、その代償としてとある行為をしている。



 それが、今敵対している二人の仲間に知られたくない……いや、知ってほしくない事なのだ。




 ―――汚れ仕事。




 世間一般ではそう言われている物。


 私の身体は、“天使”の身で在りながら、既に純潔を失い、落ちるところまで落ち、穢れきってしまったのだ。



 目に見えない神霊に痛めつけられる、その悪夢を―――




「―――二人には知られたくないから」




 小さく、私はそう呟いた。



 ちなみに、残りの“上位クラス”のメンバーは、そんな事は一切されていない。


 なぜなら、ずっと私が“一位”に君臨し続けることで、それをやめてもらっているからだ。



 私以外の天使が、あんな目に合うのは嫌だ。



 だから、私は“一位”であり続けないといけない。


 その為の努力も惜しまない。




「―――さあ、かかってきなさいよ。ここからが、本番よ」


「クッ……姉さま……ッ! 姉さまなんて……大っ嫌いですっ!!!」


「姉さまが居なければ良かったのに……ッ!!」



 圧倒的な力の差を見せつけられ、それでもなお二人は立ち上がってこちらを睨みつけている。



 そう。それでいい。



 私が全てのヘイトを買えばいい。


 そうすれば、私以外誰も傷つかなくて済むから。



―――ドクン。




「―――アグッ…………ァ……」



「―――姉さま……ッ!?」




 誰も傷つかない世界が、一番良い世界だから。




―――ドクンドクン。




「まさか……あれは……ッ!?」




 苦しい。


 何これ。


 何で私……手が黒く……?



 ああ、変な事思い返したから……。



「あれは……私の時と同じ……」


「―――“堕天化”ッ!?」



 きっとそうだ。


 私の心の闇が、全部出てきたから……。



 何でだろう、今まで耐えれてたのになぁ……。




―――ドクンドクンドクンドクンドクン。




「どうしよう……私、こんなつもりじゃ……!」


「ラグマリア! 早く止めないと……姉さまがっ!」



 きっと……近頃変化が起きすぎたんだ。



 それに、あの魔王が―――




 って……何でここでアイツの顔思い出すかなぁ……。




 誰からも、嫌われ者だった私に……彼は付いてきてくれた。


 信じてくれた。


 味方をするって言って、信じてもらえないと思ってたのに、信じてくれた。



 たったそれだけの事なのに。


 どうしてこうも心が踊るんだろう。



―――ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン。




「―――ああ……ァァ…………」




 多分私は、彼の事が―――



 ううん。そんなはずは無い。



 だって、会ったのはつい先日。そんな一瞬で、彼の事を……なんて、有り得ない。



「―――アァ……ァァァァ………!」



 もう、消えてしまいたい。


 何で……私がこんな感情にならなきゃいけないの……。



 どうしてワタシは





テンテイハチセイニナンテ、ナッテシマッタノ






―――ドクンドクンドクンドクン……ドン。





「ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」



 自業自得。


 自分で、自分自身の事を振り返って、目の前の妹たちの存在と、魔王達アイツらとの楽しい時間が、私を弱らせ、堕としたんだ。



 でも、それも私が自分の事を振り返ってしまったから。

 だからこそ、自業自得。


 嫌なことをたくさん思い出して、でもそれとは対称的な、初めて・・・の楽しい時間がぶつかって……。



 ああ、誰か私のことを―――




「―――タスケテ……っ」




 直後、私の意識は無くなってしまった。

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