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case.10 決闘

※前回の続きではないです。

落下後、天使編となります!


《ミカエラ視点》



「―――いったた……何なの……? いきなり……」



 私の名前はミカエラ。


 たった今、とある迷宮の地面が崩落してお尻からダイナミックに着地したところよ。


 こんなでも、一応《天帝八聖》のリーダーで、【謙譲】の徳を持つ大天使ミカエル様の子孫でもあるのよ。



「―――って……私何一人で言ってんだろ」



 なんだかちょっとだけ虚しくなってきた。



 とりあえず、今は何が起きたか……状況整理から始めよう。



 あれ……?

 というか、他の人たちは誰も居ないの……?



 周囲を見回しても、誰一人として気配すら感じることが無かった。


 同じ場所から落下したのに、今ここに居るのは私だけ。



 何かがおかしい。



 しかし、その正体はまだ分からない。


 だからこそ、現場調査……ではないが、状況整理を始めなければならないな。



「とりあえず…………『索敵』」



 スキル『索敵』。

 文字通りの効果を持つこのスキルで、私は周囲……結構遠い範囲まで探索できるので、意外と便利なのである。



 と、『索敵』には何も引っかからなかった。



 ということはだ。


 私が“敵”と認識できる存在は、少なくとも近くには全く存在しないという事になる。



「天涯孤独の存在……か」



 次はどうしようか。


 とりあえずここは“森”だという情報と、周囲に敵が居ないという情報の二つが出揃っている。



「って……あれ……??」



 頭の中で整理をしながら、私は一つ疑問に思った。



 ―――迷宮の地下に、“森”……?




 言ってなかったかもしれないが、ここ……私の落ちてきた場所は紛うこと無き森林だったのだ。


 木々が生い茂り、暖かな木漏れ日が木の隙間から差し込む、まるで春の陽気を感じさせる、心落ち着く神秘の森林。



 そんな場所に私は今は居るのだ。



 しかし、冷静に考えてみればこれはおかしい。



 何故、迷宮という人造の建造物から……しかも、帝国内にあるそれから、地面が崩れて落ちて……どうしてこんな森林に居るのだろうか。



「もしかして……私、閉じ込められた……?」



 微かに感じることの出来る魔力が、木々や空気からまでも感じることが出来る。


 これは自然の魔力だと思っていたが、深読みすれば誰かによって意図的に、魔力で出来た檻に閉じ込められた……と考察する事も出来る。


 もしそうなら、私の周囲に人や敵が存在しないのにも納得がいくが。



「―――とりあえず、色々試してみましょうか」



 こんな所で立ち止まっていては、抜け出せるものも抜け出せない。


 ひとまずはこの状況を割り切って、とにかく現状を打開する事だけを考えることにしよう。



「せめて、誰か一人でも居てくれたら……心強かったんだけどなぁ……」



 例えばあの魔王とか―――




「―――って! なんで私がアイツの事を真っ先に考えてるのよッ!!!」




 ……一人でツッコんでしまった。


 別に……アイツだから良いって話でもないし……



 勘違いするなよ……!




 なんて……一人で悶々としていると、右斜め前方から、草むらのガサガサという搔き分けるような音が聞こえてきた。



「―――敵……? いや、そんなはずは無い……」



 即座に『光操作』のスキルを使って、音のした草むらの方へ光を集中させ、右手に光のレイピア、左手に光の軽盾を生み出して、戦闘態勢を一瞬で完成させた。



 さあ……来るなら来なさい。





「―――そこに……誰か居るのですか?」





 そう言いながら現れたのは、二人の天使だった。


 私には、その二人にとても見覚えがある。



 それは、私と同じく《天帝八聖》のメンバーであり、最も下の位に位置する天使……【忍耐】と【勤勉】の徳を冠する者。



 その二人の名は―――




「ラグマリア……ラージエリッ!!」





「姉さん……」


「お姉さま……」



 二人は、溜め息混じりの言葉を絞り出していた。


 二人は私のことを“姉”と呼んでいるが、実際に姉である訳では無い。



 確かにラグマリアとラージエリの二人には確かな血縁関係があるが、私と二人には全く血のつながりは無い。



 だが、同じ《天帝八聖》のメンバーであり、一位の私は、メンバー全員の長女的存在であった為、気づけばみんなが私のことを“姉さま”と呼んでいるのだ。



「二人とも……どうしてここにッ!?」



 そういえば、あの迷宮の中心部に辿り着いた時……一瞬で魔王アイツが“煙幕”を焚いたから、全然誰が居たかは見えなかったけど、まさかこの二人も居たなんて……!



「姉さまこそ……どうしてここに……」


「それに姉さま……どうして武装を……?」



 武装―――あっ……確かに……これは警戒されても仕方ないわね。


 ひとまず武装を解除して―――




「―――やっぱり、姉さまは……」


「……え?」 




 と、思ったのだが、突然ラグマリアが私のことを睨みつけながら、言葉を続けた。




「―――ねぇ、お姉ちゃん」


「……分かりました」



 二人は私と同じような光の剣と盾を生み出しながら、それを構えた。



「何……よ。二人とも何をしているの……?!」


「何……って。笑わせないで」


「私たちは、ずっと耐えてきたんですよ?」  



 耐えてきた……?


 一体何の話を―――



「姉さまがずっと“一位”に君臨してるから、私たちは“下位”の《天帝八聖》には、全く神からの恩恵が与えられないッ!!!」


「姉さまが一人で居るとは、絶好のチャンスです。貴方を“決闘”で打ち負かして、私たちはランクを上げます……ッ!!!」




 ―――ああ、そういう事か。




 それなら……譲るわけにはいかない。


 私は、強くならないといけないの。



 その為に、努力をして努力をして努力をして努力をして努力をして努力をして努力をして努力をして努力をして努力をして努力をして努力を―――――――




 やっとの思いで、ラフィーナやウリエナ達に勝って……それで今の“一位”……つまり、《天帝八聖》のリーダーの座を手に入れたというのに。



 そしてその努力が報われて、“神の恩恵”を授かっているというのに。



 なんでそれを奪われなきゃいけないの……ッ!!



「いいわ、かかってきなさい。私は、強くあるために……二対一だろうと受けて立つわよ」





 ―――天使なかまを。天帝八聖ともを守る為に。





「―――強くなる為に……何だってやってやるわ」




 私は、右手に握ったままの光剣を強く握り締め直した後、やけに好戦的な二人の表情を見ながら、これから繰り広げられる死闘の覚悟をした。

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