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case.9 負けず嫌い

テストから解放された

リミッター解除……ッ!



「まずは俺からいこうッ!!」



 俺は再びキメラに向かって走りながら、空に魔法陣を展開した。


 久々にこの魔法を使おうか。



 ―――設定する属性は炎・水・風・雷・土の五つだッ!



 キメラの上空に展開させた魔法陣に、俺は魔弾を撃ち込んだ。


 魔法陣の中で俺の魔弾は増殖し、一つの魔法へと昇華させる。




「―――“五色魔天ごしきまてん”ッ!!!」




 刹那、魔法陣から“あめ”が降り注ぐ。


 五色の輝きを放つそれは、一点集中、キメラに次々と直撃していく。




『Gauuuu??!!?!GYAAAAAAAAAAAAAAA!!!?!!?!?』




 キメラは驚愕しているのか、驚きの叫びを上げながら暴れている。


 もちろん、俺の攻撃はほぼ全て通っていた。



▶我らの読みは正しかったという事だな。




「兄貴ッ! まだそれを維持することは可能ッスか!?」


「―――任せろ。余裕だッ!」


「ありがとうございますッ! あとは俺たち・・・に任せてくださいッ!!」




 そう言って、白夜は左手に持つ青い剣を宙へと投げ出した。


 さらに、それと同時に右手の赤い剣も真上に投げた。



「白夜……何をして―――」



 ただ、俺の疑問の混じった呟きはすぐに白夜の声によって掻き消される。


 それは、俺を驚かせるには充分過ぎる出来事だった。




「―――ヘル。お前の出番だッ!!!」




 まずは白夜がそう叫びながら、右手で“氷”の魔力を青い剣へと向けて撃ち放った。


 さらに続けて、



「こっちはこっちで暴れるぞッ! ―――プロメテウスッ!」



 と、全身に火炎を纏って飛び上がった。




▶ヘルに……プロメテウス、か。―――まさかな。




「―――『覚醒』ッ!!! first……“鬼神”!」



 ゴウッ!!と一気に白夜が燃え上がり、かと思えばそれはすぐに消え、真上に投げた赤い剣を手にとって着地していた。


 さらに、上空で滞空していた青い剣の周りに集まっていた氷の魔力……冷気が人型を形成していき……やがて気体は実体になり、人となって地面へと降り立った。




▶―――まさか……な。



 さっきからどうしたんだ……ハヌマーン。



▶ウ……ム。後で詳しく話そう。今は魔力の安定に集中していろ。



 ん? まあ、お前がそう言うなら。




「―――ふぅ……今回もちゃんと成功したわね」


「ああ、こっちも成功だぜッ!!」


「確か、白夜からのオーダーは……」


「“交互に殴れ”、だったよな?」


「そのはずね。簡単で助かるわ」




 あれは……白夜なのか……?


 そう思うくらいには、今の一瞬で様々な変化が見られた。



 まずは容姿。


 “鬼神”という単語が聞こえてきたからか、今の白夜はまるでサタールのような……鬼人となっていた。


 さらに魔力だ。


 これは、有り得ないくらいの炎の魔力と、かなりの神気を感じる。


 まさか、ハヌマーンが言っていたのは多分……この事だったんだろう。



 そして最後に、隣の美女だ。


 艶やかな肢体を見せつけているあの巨乳美人が、尋常じゃない氷の魔力を放ちながら歩いている。


 あれは……誰だ……?



 白夜も……なんだか口調が白夜じゃないような気が―――




『Ga…………AAUAaooooAoooAAAuuUu??!?!!』




 しかし、そんな考察をしながらでも、俺は“魔天”を撃ち続け、キメラへのダメージを稼ぎ続けた。


 だがまだキメラは倒れない。


 だからこそ、後は白夜……たちに任せようと思うのだが。



 どう、決めるのか……見物だな。




「さあて……まずは私から行かせてもらおうかしら……?」


「フン、好きにしろッ! 俺はお前に合わせることにするからな!」


「それじゃあ遠慮なく……ッ!」



 合図無しに氷の美女は駆け出した。


 空から降り注ぐ“あめ”を華麗に避けながら、キメラへと近づいた女性は、手に持つ青い剣を空へと投げた。



 そして、自分も飛び上がり、剣を飛び越した辺りで数回転し、叩き落とすように、その艶めかしい脚で勢いよく蹴り落とした。




「―――“氷神の魔槍ゲイボルグ”ッ!!!」




 そして、その剣はキメラへと突き刺さり、傷口からその身体を凍らせていった。




『Giiiiiiigiiiiiinn??!?!!aouuaaaaaaaaaggagag!??!!』




 痛みに耐えられないのか、キメラはジタバタと暴れ始めた。


 さらに、白夜(?)は高速で駆け出し、それと同時に自身の周囲に炎の球を幾つも出している。



「いくぜッ! “炎神連撃プロメテウスストライク”ッ!!!!」



 赤い剣に炎を纏わせながら、白夜はキメラを切り裂いた。


 さらに、周囲の火の玉もキメラの身体へとくっついて、その身体を燃やしていく。



『aguaguuuugaa―――――aaaaaaaa!!?!???!!!!?!』



「次は私ッ! “氷塊アイスメテオ”ッ!」


「次は俺だッ! “炎塊フレイムメテオ”ッ!」



 と、女性ヘルが“氷塊”を撃ち放てば、負けじと白夜プロメテウスが“炎塊”を撃ち放つ。

 


「なら……もう一回ッ! “氷神の魔槍ゲイボルグ”ッ!!!」


「クハハッ! それなら俺は……“炎神の魔槍ゲイボルグ”ッ!!!」



 怒った女性ヘルが、悔しいからと“魔槍レーヴァテイン”を撃ち放てば、またまた負けじと白夜プロメテウスが“魔槍グラム”を撃ち放つ。



「真似しないでよッ! なら―――“鬼神氷渦きしんひょうか”ッ!」


「無駄だッ! “鬼神炎渦きしんえんか”ッ!!!」



 ついにはブチギレた女性ヘルが、有り得ない濃度の“氷”を放てば、それもまた負けじと白夜プロメテウスが有り得ない濃度の“炎”を放った。



 二人の戦いはデッドヒートし、もはや本来の目的が達成させていることに、二人は気づいていなかった。



 そう。


 もうヤツは……キメラは倒れて動かなかったのだ。




 それに気づいたのはしばらくしてからだった。



「―――ハァ……ハァ……」


「ハン! その程度で息を上げるとは、まだまだ訓練が足りんなッ!」


「うる……さいわね……! 私は女なのよ? お・ん・な!!!!」



 ……コイツらは、一体何者だ……?




▶―――吸血鬼神ヘル、そして……炎神プロメテウスだな。




 吸血鬼神と炎神……?


 どうして、そんな奴らが白夜の奴と……?




▶それは我にも分からぬ。だが……確かに奴らは勇者と契約しているようだぞ?




 一体……俺が一日外に出てた間に何が起きたと言うんだ……?


 クソ……とりあえずアイツらに話しかけてみる―――




「―――か……って……何だよ……アレ!!」



 俺は、“ソレ”を見て大声を上げてしまった。


 その声に白夜と女性は反応し、こちらを向いた。



「お前たちッ! 急いでそこを離れろッ!」


「離れろ……って!」


「マジかよッ……!」



 俺の指示に即座に反応してくれた二人は、すぐに“ソレ”から距離を取ってくれた。




 ―――直後、それは爆発した。




 それ……は、倒れていたキメラの事だ。



 倒れていたキメラに、変な紋様の描かれた魔法陣が現れた。


 そして、それは赤く光り始めた。



 俺はそれを見て、一瞬で危険だと感じ、二人に指示を出した訳だ。



「危なかった……」


「助かったな……」



 二人は安堵した様子で俺の方へと向かってくる。


 二人が無事で良かった―――そう思ったのだが、悲劇はまだ続いた。





『フッ……フハハハハッ! クアハハハハハハハハハッ!』





▶この笑い声は、まさか―――ッ!マズいぞ……“ヤツ”の気配が……―――来るッ!!!



 ヤツ……?


 さっきから次々と……一体何が来るっていうんだ―――




▶すまんッ! 一瞬だけ身体を借りるぞッ!




 え……?あ、ああ。分かった!



 直後、俺の体は俺の意思で動かなくなった。


 と思えば、すぐに俺の体は前方へ勢いよく飛行した。




「―――“猿神之閃雷ハヌマーンフラッシュボルト”ッ!!!」




 ハヌマーンは前方へ向けて、一直線に紫電を撃ち放つ。


 何も居ないかと思われた場所で紫電が止まり、“隠れていたソレ”を浮かび上がらせた。




「お前は―――」


「何……?」


「何事だ……ッ!」




 ハヌマーン女性ヘル白夜プロメテウスの声が連なる。


 そしてその反応を楽しむように聞き流し、表れ出たソレは、こう言ったのだ。





『―――私は群神ガネーシャッ!! 神帝インドラと共に、貴様らを討ちに来た《十二神将》であるッ!!!』

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