case.8 師弟
きょうはねぼうしなかったよ
「―――お前は……ッ!」
俺が、死を一瞬だけ覚悟したその時。
目の前に、俺の救世主が現れた。
「白夜……か」
勇者、皇白夜。
この世界で、俺が知っている中では、二人目の“転生者”……“いや、転移者”か。
まあ、とにかく俺はたった今、この白夜に命を助けられた訳だ。
「兄貴……ッ! 随分と……探したんですよッ!?」
「……すまないな、白夜。お前には……いや、お前たちにはすごい苦労を掛けていると思う」
「―――ってるなら……」
「え……?」
「―――分かってるなら! どうして誰にも言わずに出ていっちゃったんですかッ!! 皆さんが……ルインさんがどれだけ心配したと思っているんですか……ッ!!!」
―――ッ。
言葉が、出なかった。
これは、怒られるのも、仕方のない事だ。
もちろん、そんな事は理解はしている。
だが、こうして実際に言われると……
それも年下からというのは……なかなかに心に来る物があるな。
しかし、俺がこんな一回怒られた程度で、折れる訳にはいかない。
折れてしまえば、何の為に一人で飛び出したのか分からなくなってしまうから。
「―――白夜。たった今、俺の事を助けてくれた事に関しては先に感謝を述べておく。ありがとう」
「……え?」
「だがな、俺には俺の目的があるんだ。それを達成するまでは、絶対に帰らないぞ」
「目的……?」
「ああ。あまり多くは語るつもりは無い。ただ、これだけは言わせてくれ。―――俺は、お前たち魔王軍の事を、心から大切な存在だと思っている。誰一人欠けてはならない存在だと。だから、俺はお前たちを、主として守りたいんだ」
「アニ……キ」
「俺はまた、ここを抜け出せたら旅に出る。だが、お前たちはついてくるな」
俺一人が、強くなればいい。
そうすれば、誰も傷つかずに済む。
《天帝八聖》だろうが《十二神将》だろうが、《双神》だろうが、かかってくるなら来ればいい。
俺一人で相手してやるよ。
俺の大切な仲間たちには、傷一つ付けさせるモノか。指一本すら触れさせない。
「なんで―――」
『Gauuuuaaaaaaaaaaaaaa!!!!!』
「もう、話は終わりみたいだな」
キメラのヤツが咆哮し、俺たちに突進しようとして来ている。
少しだけ、名残惜しいが……俺が強くなって帰るまでは……
「共闘だ。俺も本気を出して戦うとしよう」
「―――分かりました。今は、ヤツを倒さないとまともに話も出来ませんからね」
そう言いながら、白夜は二本の禍々しく光る剣を構える。
赤と青にそれぞれ光るそれは、炎と氷の魔力を、皮膚が痺れるくらい周囲に撒き散らしている。
▶『神威』を使うのだな?
ああ。
俺の本気といえば、それくらいしか無いだろう?
▶フッ、大罪の奴らが居ない現状では、確かに『神威』が全力の限界かもな。
そういう事だ。
「行くぞ白夜―――」
「了解です」
「「―――『神威』ッ!!」」
刹那、二本の光の柱が立ち上がった。
▶―――な……んだと……ッ!?
「白夜……お前……それ―――」
俺も違和感を感じた。
違和感が確信に変わって、すぐに横を見たが、白夜は俺の驚きに反応せず……駆けた。
「―――“絶凍連撃”ッ!!!」
左手に持つ氷の魔力を放つ剣から、小さな氷塊を高速で射出しながら白夜は突っ込んで行く。
それを見ながら、俺は“双滅鎌トワイライト”に『天魔』の効果で光と闇の魔力を込めていく。
そしてすぐに白夜に合わせるべく駆け出した。
「白夜ッ! ソイツは一度喰らった属性を吸収して透かすことの出来る“属性吸収”を使えるみたいだッ!」
「属性吸収……? 兄貴ッ! それは同時に複数の属性を透かせるんですか!?」
「いや、まだ分からないッ!」
俺と白夜はキメラを翻弄しながら会話していた。
「それなら試してみましょうッ! “氷塊”ッ!!!」
直後、白夜は文字通りの氷塊をキメラに向けて撃ち放った。
しかし、攻撃が当たる直前で、キメラの身体は透明になり、氷塊が地面に当たって打ち砕けた。
そして再び姿を現したキメラの身体の色が、青色に染まっていた。
あれは、氷属性に変化したという事なんだよな……?
「兄貴! 何か攻撃をッ!」
「……分かった!」
それなら、光と闇の同時攻撃でも喰らってみやがれ……ッ!
「―――“光闇魂喰”ッ!!」
鎌を勢いよく振りかざし、キメラを切り裂く。
狙ったのは首だが、少しキメラが動いて、直撃こそしたものの、当たったのは腹部になってしまった。
しかし―――
『Gugyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!』
光と闇の攻撃は通ったようだ。
まあ、今のは若干の判断ミスかもしれないが。
光と闇の攻撃は、まだ一度もしていなかったから、もし効いたとして、それは当たり前の話だろう。
だから、俺は再び雷を放つことにした。
と、思ったのだが。
「―――色が、塗り替えられていく……?」
再びキメラの色が変わっていく。
白に変わったかと思えば、今度は黒に染まった。
光……そして闇と変化した訳か。
▶―――一つだけ、面白いことを思いついたぞ?
「―――もしかすると、勝てるかもしれませんよ」
おっ……?
二人とも同時に何かを思いついたのか……?
「勝てるかもしれない……?」
「はい。多分……俺の読みが当たってれば……」
▶フム、一度聞いてみるとするか。恐らく、同タイミングということは、考えつくことも似ているだろうからな。
「あのモンスターは、属性を一つしか吸収出来ません。それは、今の色の変化を見れば分かります。そして、色が変化するということは透かせる属性攻撃も一種類。複数の属性による攻撃をすれば、攻撃した順に対応する属性が変化する……つまり―――」
つまり……?
「奴が対応しきることのできない数の属性で攻撃を続ければ、相手の対応が遅れるか、もしくは永続的にダメージを与え続けることが出来ます……よね?」
……どうなんだ、ハヌマーン。
▶ああ、ほぼ我の考えと一致している。まあつまりは、違う属性の攻撃を交互に、永続的に続ければダメージは通るということだ。
なるほど……
それなら簡単じゃないか?
「ん……多分いけると思うぞ。一度それで試してみよう」
「了解ですッ!」
違う属性を連続で……か。
つまりは少なくとも二種類の属性は使えないと話にならない訳だ。
まあ、俺と白夜二人の使える属性を合わせれば、余裕でいけると思うけどな。
「―――それじゃあ、反撃開始といこうか」
「うっす!!!」
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