case.4 呪占迷宮と誘われし者たち
誘われし者たち
「ここが……《中央商帝国アルマス》?」
「そう! ここがアルマスよ!」
俺たちは、サタンさんから別れ、《アルマス》の国に向かって飛行していた。
そして、しばらく飛行した後、小一時間で俺たちは《アルマス》に着いた。
時間はまだ昼頃と言ったところか。
買い物をするにはちょうど良い時間だな。
「初めて……この世界の国に来たな……」
俺は、感慨深くそう呟いた。
まあ、厳密に言えば、《森ノ大国》には行ったことがあるのだが、まああれはノーカウントだろう。
と、いう訳でこの世界に来て、初めての他国という訳だ。
「ところで、この国には入国審査みたいなモノは無いのか?」
「そうね……基本的にはないけど、犯罪者や指名手配されてる人なんかは、“機械族”である彼らの天敵になるわね」
「まぎあす……?」
「そ、“機械人族”の事よ。この国は、そんな種族が治めている国だからね」
機械人……AIロボットみたいなヤツか。
そんな人たちが治めている国……ねぇ……。
「まあ、だから私たちなら問題無く入国出来ると思うわ」
「そうか、それなら早速行こうぜ」
「うん!」
俺たちは自然と手を繋いで、門の入り口へと向かって並んで歩き始めた。
そして、門で警備をしている兵士に一礼されながら、俺たちはスッと国内へと入ることが出来た。
「うわぁぁあ!」
すっげぇ!すっげぇ!
なんか、遊園地みたいだ……ッ!
「やっぱり、初めては驚くわよね! この国、スゴイよね!」
「ああ、普通に外から見たらただの国かと思ったのに、中に入って見てみると、観覧車とかあるし、めっちゃ遊園地じゃんか!!」
ジェットコースターとか普通にあるしな。
ということは文字通りこの国全体が《商》の範囲なのだろうな。
「よっしゃ! なんかやる気出てきたぞ!! ラグマリア、今日は目一杯楽しもうぜ!!」
「うん! まずは乗り物からいきましょう!」
「ああ!」
こうして、俺たちのデートは幕を開けたのだった。
■
「次は何乗る!? 白夜!」
「す、すまん……ちょっと休まないか……?」
たった今ジェットコースターに乗ったのだが、それが思ったより激しい動きをするタイプの奴で、めっちゃ酔ってしまった……。
ちょっと吐きそう……。
「そ、それもそうね! なら、そろそろ買い物でも―――」
「―――もし、そこのお二方。こちらのアトラクションは如何ですかな?」
俺が吐きそうになっているところをラグマリアが介抱してくれていると、そこへ全身フードの、かすれた声の人物が、自らの後ろの建物を指差しながら、そう言ってきた。
「それは……一体何なんですか?」
「これは、呪占迷宮という建物でしてね。大掛かりで、数多のトラップが探索者を襲う巨大迷宮に、超難関の謎解きと、ホラーハウスの要素を詰め込んだ、イカれたアトラクションに御座います」
え、何それ。
超面白そう。
「いいじゃない! ね、次はそれにいきましょう!?」
「あ、ああ! そうだな、よし、行こう!」
「―――ヒヒヒッ……二名様、ご来店……」
そうして俺たちは、気味の悪いローブマンに連れて行かれて、正面の巨大な建物、“呪占迷宮”へと入っていくのだった。
■
【第一問】『女の子と手を繋ぐ方法は?』
「は……?」
「何これ」
迷宮に入るなり、早速意味不明な質問が目の前に現れた。
「手を繋ぐ方法は? って……」
「そんな事聞かれてもねぇ……?」
別に簡単に繋げばいいじゃん、とは死んでも言えないけどな。
「ひとまず、この道を進んでいくか……」
迷宮内は意外にも明るくて、入り口から少し歩いたところに大広間があり、そこから前方、そして左右にそれぞれ一本の道があった。
大広間の中央に、その質問が書かれた石碑が置いてあり、前方の道には鍵付きの扉が、左には落とし穴があった。
つまり、右側の道だけが今進めるルートという訳だが……。
俺たちはその右の道を見ながら、そう呟いた。
「でもさっき、あのローブの人……」
「現在二組の探索者がいらっしゃいます、なんて言ってたな」
「ってことは、その二組ともこの道を行ったのかな」
「さあ……どうだろう」
「まあいいよね、私たちだって先に進みたいもの」
「はは、それもそうだな。そんじゃまあ、行きますか」
「おっけー!」
という訳で、意味不明な問題は通り越して、右側の道へ俺たちは歩を進めるのだった。
■
《魔王ルミナス視点》
―――勇者・白夜とラグマリアが“呪占迷宮”に入る30分前の事―――
「―――で、どうして俺たちはこんな所に来てるんだ?」
「あら、さっき説明したのにもう忘れたの?」
「いや、それは……!」
現在、俺たち修行パーティー一行は、ベルゼリオの提案で、《護王国シュデン》の秘境にある《龍の隠れ里》という所に向かっていた筈だ。
しかし、今いる場所は《中央商帝国アルマス》。
理由は単純明快。
ミカエラの提案によって、急遽《天帝八聖》の捜索に目的が変わったからだ。
しかし、メインの目的は“修行”で変わっていない。
たまたま《シュデン》に向かう途中に、この国があったのだ。
だから、観光ついでに立ち寄った訳なのだが……。
「まさか、遊ぶつもりか?」
「まあ、そりゃあね?」
「お前な……」
「まあいいじゃない、僕たちも遊んでみたいし」
「私は、主様の許可があれば何でもするが」
「ほら皆もこう言ってる事だし!」
「……だぁぁもう、分かったよ!」
ついには折れてしまった。
まあ、俺もこの国は初見だしな。
せっかくだ、目一杯楽しんでやろうじゃないか。
「―――そこ行く旅の方々よ。少し話を聞いてくださらんか?」
すると早速、遊園地特有の勧誘がやって来た。
その人物は、全身ローブの、なんか既視感のある人物だった。
「いいですよ。どんなアトラクションなんですか」
「ほほ、もう分かっているのですか。それならば話は早い。後ろに見える超巨大迷宮、“呪占迷宮”は如何かな? 謎解き、ホラーといった様々な要素を詰め込んだ、大掛かりな迷宮じゃ」
……なにそれ、面白そう。
「面白そうじゃない」
「いいね、ホラー……か。へへへ……」
「フン、所詮は作り物だろうに。主様、こんな所、行く価値もありませんよ」
「だが、せっかく俺たちを誘ってくれた訳だしな」
「あ、そうでございますか。それなら、行きましょう!」
よし、元々乗り気だったミカエラとルヴェルフェに、さらにベルゼリオまで落とせたな。
これで全員合意の上参加できる訳だ。
ちょっと楽しみだぞ……久々の迷路、それにお化け屋敷……!
「ヒヒヒッ、四名様ご案内……」
そうして、俺たちは気味の悪いローブマンに連れて行かれて、迷宮内へと足を踏み入れるのだった。
■
【第一問】『女の子と手を繋ぐ方法は?』
「いや知らねぇよ」
「適当に繋げばいいじゃない」
「それが出来ないんだよ、この人は。憐れだねぇ……」
「女性と手を繋ぐのは、誰だろうと緊張するだろう!?」
と、突然現れた意味不明な質問に対してのリアクションが、ベルゼリオ以外辛辣だった。
しかし早速そう来たか……。
周囲を見ると、三本の道があって、左だけ穴があって進めないから、多分この正面の扉か、右の普通の道に行くんだろうけど……
「あ、そうよ……。この問い簡単じゃない」
「ん……分かったのか?!」
「ええ、答えは“そんな方法色々ある”、よ」
「はぁ? 適当言うなよ、こんなんで正解な訳が―――」
―――ガチャッ!ドドドドドド……
「は?」
正面の扉が、開いた。
「ね? 簡単でしょ?」
鼻歌を歌いながら、ミカエラはその扉へと入っていく。
「あははー、アイツなかなかやるね」
「道が拓けました。行きましょう、我が主よ」
「お……おう」
若干戸惑いながらも、俺たちはミカエラに続いて歩き始めた。
いや……流石にさっきの答えは無いだろ……
「まあ、そのくらいのレベルで良いって事なのかな……」
そんな、呆れと諦めが混じった呟きが、暗闇の中に溶けていった。
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