case.1 再始動
第九章開幕☆やばいですね!
あれから、約一週間が経った。
気づけば皆、泥のように眠っていた。
まあ、それもその筈なのだが。
何故なら、アスモフィさんの命令で、“催眠魔法”で全員が冬眠状態にさせられていたのだから。
理由は至ってシンプル。
“治療”だ。
早くに回復したベルゼブブさんを始め、《七つの大罪》の御三方が城と、城周辺の監視・防衛をしてくれているので、アスモフィさん自身を含め、魔王軍メンバー全員が治療目的の冬眠状態になったのだ。
そうして、一週間が経った頃。
俺たちは全員、ゾンビのように目覚めたのだ。
起きてからは、身の回りの支度を整え、ルインさんの指示の下、堕天軍メンバーの地下牢への幽閉や、壊れた設備・建物の修復作業、他にも武器や防具の手入れなど、戦後処理を思いつく限り行った。
全員、必要以上の会話は無く、ようやく皆の目が覚めてきた、そんな時間に俺たちは魔王城内の一室、いつもの“会議室”へと集合したのだった。
「…………」
全員、誰かの言葉を待っているようだった。
円上のテーブルの周りに、《魔帝八皇》の五名、《七つの大罪》の三名、《天帝八聖》の二名、そして《七つの美徳》のラグエルさんに、クサナギさん、スレイドさん、そして皇兄弟という、かなりの数のメンバーが揃っていた。
が、全員静かに黙って下を向いていた。
しばらくして、この会議室に皆を集めた張本人であるルインさんが口を開いた。
「さて、皆さん。多分現在、長き睡眠……及び先の戦闘によって、うまく思考が纏まらないかと思いますが、そこを何とか回転させていきましょう」
ルインさんの言葉に、俺たちは無言で頷いた。
「それでは第三回、『魔王会議』を執り行いたいと思います」
そうして、重々しい雰囲気のまま、『魔王会議』が幕を開けた。
「まず、今回の議題ですが。
一つ、皆さんが主様捜索ミッションにて得た情報について。
二つ、今回の戦闘における問題点や反省点、堕天軍メンバーの今後の処遇について。
三つ、未だ戻ってこないベルゼリオ様のチームの件について。
四つ、異常なまでの力を手に入れている勇者、白夜様について。
五つ、ルシファルナ様……もとい新ルシファーに対する今後の対応について。
そして最後に、これからの主様捜索ミッションの件について。
議題は様々ありますが……まずは一つ目から順番に参りましょうか」
こうして並べてみると、今回の会議はとても濃厚な物になりそうだな。
それに、俺に関しての議題もあったようだし。
「―――ではまず一つ目から。皆さんが主様捜索ミッションで魔王城を出発してから、対堕天軍戦にてここへ帰還してくるまでの間にあったこと、そして得た情報・手がかりについて、何かあれば報告をお願いします」
その言葉を受けて、まずは俺たちが手を上げた。
「それじゃあ俺たちから。俺たちは兄貴の手がかりと、新たな仲間を手に入れる事が出来た」
そうして、俺たちの報告を始め、各チームのリーダーが、全員へ報告をし終わった。
簡単に纏めるとこうだ。
・魔王ルミナスは《死国ディブリビアゼ》にて発見された。なおその際、同行者として黒いローブの小人族を確認。
・《天帝八聖》の【忍耐】ラグマリアと【勤勉】ラージエリが仲間になった。
・《魔帝八皇》の【怠惰】ルヴェルフェの弟子、スレイドが仲間になった。
・《戦帝国フラウ》を支配することに成功。
まあ、目ぼしい報告があったのは、俺たちの所とサタールさんの所だけで、他は大した情報を掴むことが出来なかったらしい。
「やはり、《死国ディブリビアゼ》が当たったということか」
「ええ。確かに私たちは魔王を、この目でしかと見ました。この言葉に嘘偽りは御座いません」
ベルゼブブさんのその言葉に、ラージエリさんが頷き、真剣な表情でそう言った。
「―――《天帝八聖》のお二方がそう言うのであれば、間違いはないでしょう」
「信じてくれて、ありがとう」
ルインさんは一度「うん」と頷いた後、次の議題に進むべく、言葉を放った。
「続けますね。二つ目の議題ですが、今回の戦いの問題点や反省点、そして堕天軍の処遇についてです。何かあればお願いします」
「んじゃあ俺から」
そう言うと、サタールさんが立ち上がった。
「今回も、戦いの問題点だとか、そういうのは無いと思うぜ。なんせ、急襲だったんだからな」
「う……確かにそれもそうですね……」
「そんじゃあ、この議題は堕天軍うんたらってヤツだけで良いと思うぜ」
「……分かりました。それじゃあサタールさんの意見を採用して、今回は堕天軍の処遇についてのみを考えましょう―――」
と、言う訳で尺の都合上カットさせてもらったが、皆で地下牢に幽閉した堕天軍メンバーの処遇について議論した。
最終的には、『魔王様が帰ってくるまで、眠らせて封印しておく』という結論に至ったので、早速アスモフィさんが“眠り魔法”を掛けに地下牢へと向かった。
もちろん護衛にマノンさんを付けて。
「それじゃあ、三つ目の議題に参りましょうか」
「あー……あのベルゼリオうんたらってやつか」
「はい。その通りです」
今度は未だ帰還しないベルゼリオ・レオンのチームについての話だ。
「……私は、彼の心配は無用だと思うけどね」
「ン、アァ。俺っちも杞憂に終わると思うぜ」
「え、えぇ……」
レヴィーナさんとサタールさんがそう言ったので、ルインさんは当然困惑していた。
「あの、ちなみになんだけど……」
ラグマリアが恐る恐る手を上げる。
「そのベルゼリオ、ってどんな人?」
「んっと……騎士だ、竜騎士。鎧を着てて……」
「―――待ってよ……? 確かその人も……ね、お姉ちゃん」
ラグマリアはサタールさんの言葉を聞いて、何かに気づいたようにラージエリさんの方を向いて目合わせをした。
すると、ラージエリさんも「ええ」と頷き、ラグマリアの代わりに言った。
「―――確か、そんな特徴の人物が、魔王と共に行動していたような気がします」
「え……? 本当ですか……?」
「ええ。私たちが見た魔王は、三人の仲間を引き連れてたので……その内の一人に、竜の翼を持った騎士が居たのを、確かに見ましたよ」
三人……?
一人はルヴェルフェさん、そしてもう一人はベルゼリオさんだとして、もう一人は……?
可能性としては、レオンである可能性が高い気がするが……。
「すいません……もう一人については、一瞬しか見えなかったので、具体的な姿までは……」
「な、なるほど。まあ、それでも有益な情報には変わりないでしょう。ありがとうございます、ラグマリアさん、ラージエリさん」
そう言ってルインさんは軽く礼をした。
それに対して二人も礼をして会話が終わる。
「ふむ……これで三つの議題が終わった訳ですね。続けて四つ目に参りましょう」
会議はサクサクと進んでいく。
次は四つ目……って俺の話だっけか……?
「―――俺の話、ですね?」
「はい。貴方の、その身体に起きた変化を、全て教えて下さい」
俺に起きた変化……その全て、か。
まあ、話しても大して問題ではないかな……。
と、いうか、俺の身体を色んな神様が使った時に、口調とか力とか、色々いつもの俺じゃない姿を晒してしまって居るわけだから、今更隠せるとも思わないしな。
「分かりました。全部話します―――」
俺が何度も死んで、その度に強くなって生き返った事。
炎神プロメテウス、水氷神ヌアザ、死神タナトスという三体の神が俺の中に憑依している事。
吸血鬼神ヘルと出会って、その力を受け継いだ事。
俺の両腰に差してある魔剣たちの事や、増えたスキル、変わった種族……もうとにかく洗いざらい全てを話した。
俺自身、自分の身に振りかかった事を振り返りながら話せたので、整理が出来て良かったのはいいのだが……俺が話している間、隣でラグマリアがポロポロと涙を零していたので、優しくポンポンと頭を撫でてやった。
「あー、えっと……ちなみに、今のレベルはいくつですか……?」
と、ルインさんの問いに、俺はステータスを確認して答えた。
「えっと……“259”、ですね」
「―――なるほど。もうこれ以上は聞かないでおきます。ラグマリアさんも悲しみそうですし」
「は、はあ……」
ルインさんは、未だポロポロと涙を流しているラグマリアを見ながら、何かを諦めたように話を終えた。
「なんでお前が泣いてるんだよ……」
「ひっ……ぐ……うぅ……だって……辛さとか……考えたらぁ……!」
どうやら俺の心配でここまで泣いてくれているようで、やっぱり俺の心は暖かくなった。
しかし、ほっこりしたのもつかの間、ルインさんは会議を進めた。
「もう、皆さん疲れてきたようなので、残り二つも一気に進めたいと思いますね」
「助かります」
俺はラグマリアを撫でながら、ルインさんに感謝を述べる。
ルインさんは一礼すると、纏めて最後の議題を話した。
「では、五つ目と六つ目ですが。ルシファルナ様、もとい新ルシファーの今後の対応と、そして今後の主様の捜索に関する作戦案の募集、という二つです」
「―――フム、それについては我々から話そう」
ルインさんが議題を言うなり、《七つの大罪》の皆さんが立ち上がって話し始めた。
ということは、恐らく“新ルシファー”に関する話だろう。
「まあ、今更こんな事を言わなくてもいいとは思うが……」
「アイツは、俺たち《七つの大罪》の仲間でもあり、お前たち《魔帝八皇》の仲間でもある訳だからよォ……」
「ま、結論から言うと殺さないで欲しい訳だね」
ベルゼブブさん、サタンさん、アスモデウスさんが順番にお願いするようにそう言ってきた。
そして、彼らがこう言ったのに対して、《魔帝八皇》の方々は、
「ン、まあ俺らも助けようと思ってたんで、」
「まあ言わなくても分かってる、って感じね」
「はい。例えどんな姿になろうと、彼はもう魔王軍のメンバーなのですから……」
と、当然かのように“助ける”選択をしたのだった。
「そんで、アイツを助ける為によ……」
「はい。必要な方が居ますね」
ルシファーを助ける為に必要な方……?
「って……まさか」
「はい。あの方ですよ。魔王ルミナス様。彼が必要なのですよ」
「―――『支配』の力、か」
「はい。その力が……そして主様自身の存在が、皆の心を強くします」
確かに、ルインさんの言う通り、兄貴が居ると、なんだか心強かったような……いつもの隣には兄貴が居たような感覚がしたな。
出会った時から優しかった、あの兄貴が……
「もう一度、会いたいなぁ……」
俺の口からは、自然と言葉が漏れていた。
そして、続けてこう言った。
「―――なんとしても、兄貴を……魔王を見つけてやりましょう……!」
「もちろんです。もう、私も主様分が足りなくてそろそろ倒れそうなので……」
「ハッ、ルインの嬢ちゃん。よく考えたらよく立ってられるよなァ」
「あら、そんなにあの魔王の事が好きだったの?」
「バッ、いや、あ、の、その……違くて! あ、でも違くないけど……」
「まァ、そうさな……最後に目撃された《死国ディブリビアゼ》を中心に、もう一回魔王捜索ミッション開始といこうじゃねぇの」
と、ルインさんをからかったサタールさんは、最後にあっさりと作戦を伝えてきた。
それを聞いたルインさんは、赤面しながらも頷いて、
「私も、それしかないと思ってました……ので、それでいきましょう。皆さんも、それで宜しいですか?」
確認するようにルインさんは言った。
もちろん、断わる理由は無い。
だから俺たちは、ノータイムで頷き返し、そして、
「よし、なんだか色々変わったこともあるけど!」
「ひとまずは俺っち達の勝利を祝い!」
「天才なアタシの指導の下、街を発展させつつ!」
「主様を絶対に見つけ出してみせましょう!」
俺、サタールさん、レヴィーナさん、ルインさんが言葉を連ね、そして最後に、
「フッ、それでは最後は我らがキメよう!」
「魔王捜索ミッション……」
「プラスその他もろもろ!」
「「「―――スタートだッ!!!」」」
そう、七つの大罪の方々が掛け声を放った。
だから俺たちは、その声に応えて、
「「「「おー!!!!」」」」
そう、改めて団結を確固たるものにしたのだった。
魔王捜索ミッション、再始動である。
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