case.2 魔帝八皇
「よし……。これで洗脳完了だ。もう大丈夫だ、ルシファルナ」
「へっ……? 殺すんじゃなかったのか?」
「いや、何もそこまでするとは言っていないだろうが」
「あ、焦ったァァァァ!」
そう、ルシファルナにはルインと同じ類の『支配』を施しておいたのだ。
さすがに、これから仲間となるであろう悪魔を殺すわけにはいかない。
「それで、俺が魔王だって信じてくれたか?」
「あ、ああ。その力はまさしく魔王様の物だ。どうか私の非礼をお許しください」
「構わん。それより、少し話がしたい。どこか場所を用意してくれないか?」
「それでしたら、こちらにどうぞ。転移門」
そう言ってルシファルナは魔法を使った。
「ゲート……?」
「はい、こちらをくぐっていただければ、我々の本拠地、“魔王城”へ辿り着けます」
「行きましょう主様!」
そして俺はルインに引っ張れられるまま謎の空間を通った。
すると、さっきまでいた外とは違い、きらびやかな建物の中に居た。
「こちらへおかけください」
俺は、いわれるがまま、指定された椅子へとかける。
そしてルインは隣に、ルシファルナは正面に座った。
「よし、準備は整ったな」
「はい、いつでも」
「それでは始めるぞ」
俺が今聞きたいのは、この魔界を治めている“魔帝八皇”についてだ。
もし、俺に従ってくれなかった場合、今回のルシファルナとの一件のように戦うことになるだろうからな。
「まあそういうわけで、魔帝八皇について教えてほしい」
「了解です。まず魔帝八皇の根本的な概念から解説させていただきます。魔帝八皇とは、それぞれ【傲慢】【憤怒】【嫉妬】【怠惰】【強欲】【暴食】【色欲】の7つの力を司る悪魔に、魔王様が選んだ“暗殺者”の悪魔1体を加えた、8人のエリート悪魔の事を指します」
(それって、あれだよな。“七つの大罪”……)
「私はこの中の【傲慢】を司る、魔帝八皇が一人。言霊師のルシファルナです。そして他のメンバーは……」
そう言ってルシファルナは、他の魔帝八皇のメンバーを並べていった。
・【憤怒】を司る、戦士のサタール。
・【嫉妬】を司る、弓使いのレヴィーナ。
・【怠惰】を司る、呪術師のルヴェルフェ。
・【強欲】を司る、魔法使いのマノン。
・【暴食】を司る、騎士のベルゼリオ。
・【色欲】を司る、僧侶のアスモフィ。
これに、ルシファルナと、魔王が選んだ“暗殺者”の職業を持つ悪魔を加えると、“魔帝八皇”の完成と言うわけだ。
「ってことは魔王が欠けてる今、魔帝八皇も一人欠けている状態なのか」
「はい。その通りです。ですが魔王様は復活なさいました。ですのであとは魔王様が暗殺者を選ぶのみです」
「なるほど。だが、一つ確認したい事がある」
「なんでしょう?」
「残りの魔帝八皇が、今回のお前みたいに、俺を攻撃してくる可能性はあるか?」
「どうでしょうか……。現在魔帝八皇は、魔王が死去されてから、各自バラバラになってしまいましたので……。一応、各人に連絡は入れておきましたが、それを好ましく思わない者も居るようでした」
まあそりゃそうだよな。
あくまでも前の魔王に仕えているのであって、俺に仕えている訳ではないからな。
「ああでも、こういう状況のとき、必ずや駆けつけてくるヤツが……」
そこまでルシファルナが言ったところで、建物内に騒音が響いた。
―――ドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!
「来ましたね……」
「何だ? 何が来るんだ?」
ルシファルナは遠い目をしている。
本当になんなんだ?
そしてその答えはすぐわかった。
「ウォォオイ! 新しい魔王だってぇぇ!? そんなのこのマノン様がブッ殺してやるぜぇぇ!」
「マノン……」
マノン? 確か、【強欲】を司る魔法使い……だったか?
まさか女だとは思わなかったが。
短く揃えた髪に、小さな体躯。
そしてそれに釣り合わないほどの巨乳。
まさにアンバランス。
世間一般ではこれを「ロリ巨乳」と呼ぶのだろう。
「おお! ルシファルナ! それで! 魔王ってどいつだ! こいつか!?」
俺のことを指差しながら叫ぶマノン。
「あ、ああ。確かにその方は魔王様だが、」
「魔王か! 魔王なんだな! だったら一発受けてみろやぁぁぁ! “爆☆発”!!」
「は?」
チュドーン!
と、マノンの魔法が炸裂し、建物内で爆発が起こる。
「いたた……」
「お、おいマノン! いい加減に落ち着きたまえ!」
「うるせぇなルシファルナ! 俺は面白いことがしてぇんだよ!」
コイツただの戦闘狂じゃねぇか……。
まあバカっぽいし、もしかしたら簡単に引き入れられるかもな。
「なあマノン」
「んあ?! 何だ!」
「お前、魔帝八皇なんだろ? 偉大なる力の持ち主の」
「おう! そうだぜ!」
「なら、俺と楽しいことしないか?」
「楽しいこと?」
「ああ、そうだ。俺たちでこの世界を“支配”しよう。魔族が頂点に君臨する世界を作るんだ」
「アァン……?」
クッ、無理だったか……?
さすがにそんな簡単に仲間になるほど、バカでもなかった……か?
「おおおぉぉ! 面白そうじゃねぇか! 前の魔王は『平和に暮らそう』とか『争いは好まん』とかグチグチ煩えじじいだったからなぁ! お前みたいなのは好きだぜ! 乗った! 俺を仲間に入れやがれ!」
お、おお。
やっぱりバカだった。
「もちろんだ。これからよろしく頼むぞ!」
拳を合わせる俺とマノン。
そして俺はそのままルシファルナに問う。
「お前も、来てくれるか?」
「もちろん。どこまでもお供いたします」
よし、これでピースは4つ揃った。
魔王、そして魔帝八皇が2人。
それに……
「ルイン、聞いてくれ」
「は、はい?」
「俺の選ぶ暗殺者はお前がいい。なれるか?」
そう、俺が選ぶ最後の魔帝八皇の一人、それをルインにしようと思うのだ。
「わ、私ですか……?」
「ああ」
「わ……私で良ければ! なります! 暗殺者に!」
これで……4つだ。
残りは5つ。残る魔帝八皇を集めて、この世界を支配してやる……。
「これから、よろしくな。お前たち」
「はい!」
「了解しました」
「おう!」
―――これが、ここに新たな魔王軍が築かれた瞬間だった。
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「それで、気になってたんだが」
「はい?」
俺はルシファルナに気になっていた事を聞きてみた。
「あのさ、お前から聞いた魔帝八皇の名前で気づいたんだが、お前たちって、もしかして神話に出てくるような悪魔の子孫だったりするのか?」
「やはりお気づきになりましたか……。はい、実はそうなのですよ」
「やはりか」
「ええ、私はルシファー様の。そして……」
「俺はマモンって悪魔のだ!」
とマノンが。
そしてルシファルナは、また先程のように、他のメンバーについて語ってくれた。
・サタールはサタンの。
・レヴィーナはレヴィアタンの。
・ルヴェルフェはベルフェゴールの。
・ベルゼリオはベルゼブブの。
・アスモフィはアスモデウスの。
それぞれが神話に登場する悪魔の子孫であるというのだ。
まあ、名前が近かったから、何となくは予想してたけどな。
「七つの大罪に神話級の悪魔か……」
「それで主様、これからどうするんですか?」
ルインにそう聞かれて、少し考える。
ルシファルナの話だと、今の魔界は不安こそ広がっているものの、別に何か脅威があるわけでもないらしい。
だったら今の俺たちがすることは……
「まずは残りの魔帝八皇を集める。ルシファルナ、一番近くにいる魔帝八皇は誰だ?」
「一番近くですと……、あっ、彼女ですね」
「誰だ?」
「【色欲】を司る僧侶、アスモフィ。彼女が、外界の近国、“聖皇国ラーゼ”に居るようです」
「それじゃあまずはそこに行くとするか。メンバーはどうする?」
さすがに4人でゾロゾロ行くわけにはいかない。
魔界の事もあるしな。
「それでは、私が魔界に残りましょう。さすがにマノンに任せるのは……」
「了解だ。マノン、行くか?」
「おうよ! 行く行く!」
よし、これで確定だな。
俺、ルイン、マノンの3人で聖皇国ラーゼへと出発だ!
「すまないルシファルナ。なるべくすぐ戻る」
「いえ、お気になさらず。それよりも気をつけて下さいね」
「何をだ?」
「いえ、彼女……アスモフィは、結構頭のおかしいヤツですので」
「そ、そうか。ご忠告どうも。それじゃあ行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
そうして俺たちは魔界をあとにした。
目指すは聖皇国ラーゼ。
そこに居る【色欲】の僧侶、アスモフィにあって仲間に引き入れること。
どうか戦う羽目になりませんように……。
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【ルシファルナ】
性別:男
種族:悪魔
職業:言霊師
レベル:42
スキル:―――不明
攻撃力:320
防御力:860
魔力:18300
備考……割と新参者の魔帝八皇である。イケメン。
【マノン】
性別:女
種族:悪魔
職業:魔法使い
レベル:68
スキル:―――不明
攻撃力:28000
防御力:2600
魔力:68700
備考……昔から君臨する魔帝八皇の一人。いわゆる古参勢。ロリ巨乳。一人称は俺で、割とボーイッシュな口調と見た目。
明日はブランノワール!




