case.29 真実
次回で8章完結!
「行くぞッ!」
「来な!」
さあ、戦いの火蓋は切って落とされた。
まずはルシファーの先制。
ルシファーは両手に黒い剣を持っていた。
今までの、魔力で生み出された剣ではなく、今度はしっかりと実体があるやつだ。
―――魔剣、だな。我には見覚えがあるぞ……あの剣。
魔剣……?
―――ああ、確か“魔剣バルムンク”と……
―――“魔剣ノートゥング”、ですね。
バルムンクと、ノートゥング……。
やっぱり、有名な武器しか出てこないのかな……。
どっちもゲームとかで聞いた事のある名前だが。
「“堕天魔泣”ッ!!」
「無駄だッ! 不可視の攻撃はもう見切っている!!」
ルシファーが不可視の魔力斬撃を放つも、プロメテウスはそれが全て見えているかのように躱し、そしてそのままルシファーへと距離を詰めた。
「ならッ! “堕天”ッ!!!」
プロメテウスと一定の距離を保ちながら、ルシファーは空から魔力弾を降らせた。
「“極炎障壁”ッ!」
しかし、それをプロメテウスはすぐに対処した。
頭上に炎を出し、それが障壁代わりとなって“堕天”を防いでいた。
そして……
「剣を持ってるなら……剣で戦おうじゃないかッ!!!」
「望むところだ……ッ!」
互いの距離が、互いの間合いに入った瞬間、二人は剣を振った。
―――ガキン!という金属の打ち合う音が響く。
「バルムンクよ……我の姿を闇に消せッ!」
しかし、ルシファーがそう言うと、ルシファーの右手に持っていた剣が紫に光り、そしてそのまま光は、ルシファーの姿を消していった。
「バルムンク……常闇の魔剣、か。面白いッ!」
常闇の魔剣……?
すっげぇかっけえ二つ名だな。
―――かっこいい……かどうかは分かりませんが。魔剣バルムンクは、『常闇の魔剣』と言われていて、グラムが“炎”を、今のレーヴァテインが“氷”を操るように、バルムンクは“闇”を操る魔剣なのです。
へぇ……なるほどね。
魔剣にはそれぞれの特性とも言えるような、得意属性があるって事なのか?
―――はい。その通りです。
―――さらに言えば、魔剣には必ず特殊能力……まあ、スキルみたいな物が一つはあるのだ。それが、今のルシファーが使っている『隠密』のような物だな。
特殊能力……。
ってことは、グラムとかレーヴァテイン・改にも?
―――もちろんありますよ。グラムは『倍加』が、レーヴァテインには『消失』が使えます。
―――効果は、まあ……見てからのお楽しみだな。
そんなもったいぶるなよ……。
まあ、言う通りにするしかないんだがな。
「フッ、所詮隠れたところで実体まで消せる訳じゃない。ただ、気配を隠して、相手から不可視の存在にしているだけだ」
それだと、ルインさんの“影陰”とか、兄貴の“潜影”みたいなのとは違うのか。
「ああ、ルシファーのアレは、ただ透明になってるだけだ。だからこそ―――」
そう呟きながら、プロメテウスはグラムに炎を宿していく。
そして……
「―――攻撃を当てることが出来るッ!!!」
グラムを横に凪いだ。
すると、グラムに宿っていた炎が一気に解き放たれ、それが爆発した。
しかし、その爆発でルシファーにダメージを与えることは出来なかったようだ。
当たってないじゃんか……。
「まあ、そう焦るな。この爆発で、ヤツは上に逃げたはずだ。そうやって、一手先二手先を読んで戦えば―――」
そこまで言って、プロメテウスはニヤリと笑った。
「―――“炎神極陽・天地崩落”ッ!!」
そして天に指を掲げ、そう一言。
「これで、ヤツは現れる」
すると、空から雲が晴れて、やがて一つの大きな赤い球体が姿を現した。
それは急速に落下していく。
―――何にも無い場所へ向かって。
本当にこれでルシファーが出てくるのか?
「フッ、まあ見ていろ」
戦いの一手先二手先を読んで戦う……か。
あの球体が向かっている先は何にも無い……いや、そんな無駄なことを神様がするはずがない。
つまりは、あそこには何かある……って、ああ、そうか……そういうことか。
最初の爆発でルシファーを上へ逃がし、そこへあの球体を落とす。
そうすればルシファーは避けざるを得なくなって、前後どちらかへ飛んで逃げるだろう。
だが、そこまでだ。
前後どちらへ逃げるかなんて、流石に分からない。
「いいや、分かるさ」
え……?
分かるって……あ。
奥の方でヘルが手を振っている……ということは、向こうに逃げ道は無い……。
つまり、前後とも逃げ道は塞がれている訳だ。
ということは……
「ああ、どちらへ逃げようと同じことだ。ククク……さあ、一気に叩くぞッ!!」
「クソ……ガァァァァァァァァァッ!」
すげぇ……本当に出てきたぞ、ルシファーのヤツ。
現れたのは正面。
プロメテウスの眼前だ。
「“炎弾”!」
それをプロメテウスは前方に魔力弾を撃ちだすことで牽制した。
しかしルシファーにはあまり効かなかったようで、そのまま突進してくる。
「“堕天連撃”ッ!!」
そして、二本の剣で次々と斬りかかってきた。
「遅い遅いッ! もっと滾るような剣技を見せてみろよッ!」
しかしプロメテウスは、余裕そうにグラム一本でルシファーの双剣を捌いていた。
プロメテウスの挑発に乗るように、ルシファーは剣戟のスピードを上げていくが、今度はそこへヘルがやってきた。
「後ろにご注意、よッ! “氷結剣”ッ!!」
レーヴァテイン・改で素早くルシファーの背を斬った。
さらに、
「まだよ……“氷天”ッ!!」
続けて攻撃。
空からは氷が降り注ぎ、ルシファーに次々ととダメージを与えていく。
「グッ……アアアアアッ! ―――“堕天衝波”ッ!」
痛みに耐えながらも、ルシファーは禍々しい瘴気を放つ衝撃波を放ち、周囲に牽制を掛けた。
さらに続けて、
「“堕天黒雷”ッ!」
両手の指先から、一閃の紫電が迸り、それがヘルとプロメテウスを襲う。
「“氷壁”ッ!!」
「“炎壁”ッ!!」
しかしこれは、二人とも防御してしまう。
すごい……ルシファーを圧倒している。
全く負ける気がしないぞ。
流石に神と言ったところか。
それともルシファーが弱くなったのか……。
いや、待てよ……?
―――伝説の《七つの大罪》の一人、最強の一角であるルシファーが、こんなに弱い……?
そこで俺はそういう疑問を持った。
確かに、考えてみればそうだ。
いくら相手が神二体とはいえ、バラキエルの力を融合し、ヌアザからも脅威と思われたルシファーが、ここまで弱いものか?
何かが、おかしい気がする。
―――フフフ……ようやく気がついたか。
タナトス……?
お前、何か知って……?
―――知っていた訳ではない。我も先程気づいたのだよ。だからこそ、我は先程言っただろう?
……ああ。
あのセリフか。
“真なる【傲慢】は別に居る”、だっけか?
―――そう。それが恐らく、あの機械族だ。
マギア……ってルシファルナさんの事か……!?
―――名は知らんが、恐らくその者が、【傲慢】の罪を継承した者だろう。
でも、どうしてそんな事が分かるんだ?
―――……すまない。語弊のある言い方をしたな。訂正して詫びよう。
……?
―――正確には、あのルシファーはまさしく【傲慢】の罪を背負いし《七つの大罪》が一人、堕天使ルシファーだろう。だが、それももう終わるということだ。
終わる……って何がだ?
―――それは……
「おい、静かにしな。どうやらヤツが話すみたいだぜ」
ルシファーが?
今このタイミングで何を話すつもりなのだろうか。
「―――我の罪は、もう終わる」
……ッ。
ちょうど今タナトスが話していたことか。
「一応聞いとくぜ。―――それは何故だ?」
「それは……我が不完全だったからだ」
「不完全?」
「そう。我は《七つの大罪》が一人、【傲慢】を司る堕天使、ルシファーだ。そんな我には、子孫が残せなかった。―――他の大罪たちとは違ってな」
子孫が……残せなかった?
じゃ、じゃあルシファルナさんは……?
「だからこそ、我は焦った。この完璧主義者である我が、他の者に遅れを取るなど、許せなかったからだ」
負けず嫌い……ってことか。
「だが一向に女は寄ってこず、気づけば数百、数千の年が経っていた。我は他の大罪を“大罪の間”に封じ込めたあと、再び女を探して世界を飛び回った。―――そんな時だ」
ルシファルナさんと出会ったのか……。
「我はルシファルナと出会った。その時のヤツには名前が無かった……だから、それも幸いして我は一つの策を思いついた。それが―――」
「ルシファルナを引き取ったんだな」
「その通りだ。我にとってヤツは、都合のいい道具だったのだ」
都合のいい、道具……。
少し、嫌な言葉だな……。
「ヤツを引き取ったあと、名前を与え、我の力を一欠片だけ継承させた。そうして、確かに【傲慢】の力を、罪をその身に宿させることで、我から……そして魔王軍に関わる運命に逃れられないように縛り付けたのだ」
そうか、《魔帝八皇》との関係も出来るのか……。
「ルシファルナを魔王軍の下へ向かわせるまで、礼儀作法や戦闘知識……とにかく色々なことを教えた。ヤツはとにかく吸収力がすごかった。我の教えたことをすぐに覚え、次の日にはさらに強化されている……勤勉なヤツだったのだ」
「聞いてる限りだと、罪が消える云々の話には到底繋がらなそうだが?」
「……そんなある日だ。我の力を、ルシファルナが上回った。さらには、かつての我を思い出させるような傲慢な態度……もう、それはまさしく我だった。日に日に昔の我のようになっていくルシファルナを見て、我は決意したのだ」
決意……。
もしかして、それが―――
「―――ルシファルナに、全てを継承する。そうするつもりだった。しかし、そんな事をしなくても、もうヤツは我の力の一欠片を成長させて、割れと並び立つ程の力を得ていた。そして今では、もう……」
「……ァ? どうしてそこで淀むんだ」
「……もう、我の罪は終わったのだ。我がルシファルナを探していた理由、それが“罪の継承”だ。我はもうそれを既に完了させている。だからこそ、我は最後にやらねばならない」
最後に……?
何を、するつもりだ……?
「それこそが、今回の戦いの真の目的だ。“魔王軍を壊滅させる”なんて、ただの建前でしかない」
「何をするつもりかは知らねェが、それをさせちゃマズイってのは分かるぜ……? だからこそ、俺もやらなきゃいけない事がある」
「フッ、させないさ。それよりも早く、我が全てを終わらせるからな」
そう言うと、ルシファーは下降していく。
下には確か、ルシファルナさんたちも居たはず……って、まさか!?
「ああ、急がないと罪の継承とやらがされちまうぞ……ッ!」
「早く追いましょう!?」
「ッ……あぁッ!」
ルシファーの目的に気づいた二人は、急いでルシファーの後を追った。
しかし、出遅れた二人ではルシファーに追いつくことができず、ルシファーはルシファルナさんの下へと到着してしまった。
「―――ルシファルナよ。お前に、我の……いや、我らの力全てを継承しよう。真なる大罪は、もう我ではない。これからは、お前が【傲慢】の罪、ルシファーとなるのだ」
「クッ……ハァ……ハァ……ルシファー、貴方は一体何を……!?」
ルシファルナさんと戦っていたルインさんが、疲れた様子でそう言うと、ルシファーは最後にこう一言、小さな声で言った。
「―――『融合』開始。これより、我とお前の“強制融合”を始める」
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